――1stアルバム『SUNRISE JOURNEY』、最高です。ルーツミュージックに根差したスタイルを持っていることはもちろんですが、ふたりのなかに強いメッセージ性があることが、このアルバムの魅力なんだと思います。
松尾レミ(以下松尾) 「ありがとうございます。そこが伝わっているのは嬉しいですね」
――まずはこのアルバムに対するふたりの手ごたえを教えてもらえますか?
松尾 「コンセプトを決めて曲を作ったわけではなくて、出来た曲を全部入れたんですよ。この11曲を並べたときに“始まり”を予感させるアルバムになったなって。意識してなかったけど、出来上がってみると“ここにテーマがあった!”という感じですね。高校生の頃に作った曲もいくつか入っているし、まさにGLIM SPANKYの始まりのアルバムだと思いますね」
亀本寛貴(以下亀本) 「自然に出来た曲が多いんですが、〈褒めろよ〉〈リアル鬼ごっこ〉はタイアップの話をもらってから作ったんですね。この2曲がなかったら、客観的に見てすごく地味なアルバムになったと思うんですよ。外的な要因で生み出された曲によって、自分たちの可能性、音楽的な幅が広がったんじゃないかなって」
――なるほど。アルバムのタイトルにもつながっている「サンライズジャーニー」も素晴らしいですね。“自分たちが目指す行き先のバスを見つけて乗り込み、これから新しい旅が始まる”という歌詞の内容は、アルバム全体のテーマにもつながっていて。
松尾 「そうなんですよね。この曲は『焦燥』をレコーディングした直後くらいに作り始めたんです。ちょうどメジャー・デビューした頃だったんですけど、それまではライヴハウスで活動していて。先にデビューした友達もいたし、声をかけてくれる事務所の方もいたんですけど、私たちは“これじゃないな”と思って、そのバスに乗り込もうとしなかったんです。でも、いまの事務所の方と出会って、ユニバーサル ミュージックからデビューすることになって。それが私たちにとって、いちばんカッコよくて、いちばんたくさんの人が乗れて、いちばん遠くまで行けそうなバスだったんですよね」
――自分たちにふさわしいバスかどうかの判断基準って?
松尾 「個人的な話になっちゃうんですけど、私、疑り深かったんですよ(笑)。先にデビューした子たちからも“曲のテーマを勝手に決められる”とか“好きじゃない歌をやらされる”みたいなことを聞いていて。でも、いまの事務所の人とは何度も話して“信頼できる”と思ったし、社長も“事務所とアーティストは対等だ”って言ってくれたんですよね。だったら、いい意味でケンカも出来るなって。レコード会社の担当の方もそうだし、ここにいるすべての人が素晴らしい人ばかりで。いっしょにバスに乗ってる仲間とは、本当にいい関係なんですよね」
――印象的なギターのリフ、メロディの大きさを含めて、GLIM SPANKYのアンセムになりそうですよね、この曲。
亀本 「フェスに出たとき、いちばん最初にやれるような曲にしたかったんですよ。ライブでもやってるんですけど、壮大な雰囲気がすごく良くて」
松尾 「この曲を聴いて、スーツを着た男の人が泣いてるところを何回か見たことがあって。曲を通して、聴いてくれる人と心が繋がってると思うと、こっちもグッと来ちゃいますね」
――「サンライズジャーニー」の歌詞が、聴いてる人の人生に重なったんでしょうね。どんな人でも、自分の人生における大事な決断があるわけだし。
亀本 「うん、重なってくれてると嬉しいですね」
松尾 「そうだね。何かを選択するときのテーマソングにしてほしい」
――先ほども話に出ましたが、「リアル鬼ごっこ」にも“理想を求めて走れ”というメッセージが含まれていますね。
松尾 「そうですね。タイトルも(映画と同じ)“リアル鬼ごっこ”だからビックリされるんですけど(笑)、監督の
園 子温さんが『リアル鬼ごっこ』の原作も読まず、前作の映画もまったく見ないで、今回の映画を作ったって聞いて“うわ、おもしろい!”って思ったんですよ。だったら私たちも“リアル鬼ごっこ”というワードをもとに自由に曲を作って、それをぶつけ合いたいなって。知名度とかは関係なく、クリエイターとして対等であるべきだと思ったし。歌詞の内容に関しては……私は死ぬまで何かを追いかけていたいし、それが青春だと思うんですよね。諦めたくないし、満足もしたくない。そうやって追いかけている人は、ずっと輝いていられるんじゃないかなって。一生歌っていける曲になりましたね」
――理想的なコラボレーションですよね、それは。
亀本 「ふたりで作ってるっていうメリットもあると思うんですよね。僕と松尾は真逆と言っていいほど考え方が違ってたりするんですけど、そのふたりが真剣に意見を交換して、“これでいこう”と決めたことが曲につながっているので」
――曲によって、いろいろなミュージシャンとセッションできることもこのユニットの強みですよね。
亀本 「そうですね。ただ、ドラムに関してはほぼ全曲BOBOさんに叩いてもらってるんですよ」
松尾 「素晴らしいよね」
亀本 「BOBOさんは
MIYAVIさんともずっといっしょにやられてますけど、MIYAVIさんの曲を聴くと、歌とギターが際立っているし、感情豊かなんですよね。そこはウチも共有したいと思っているんです。歌とギターが立っているべきだし、感情豊かでありたいので」
――「WONDER ALONE」「ロルカ」のサウンドプロデュースは高田 漣さん。アメリカのフォークロアが感じられるようなサウンドですね。
松尾 「レコーディングしているときも、東京じゃないみたいでした(笑)。〈ロルカ〉は高校生のときに作ったんですけど、バンドでアレンジできなくて、ずっと弾き語りでやってたんです。すごくフォーキーな曲で、バンドでやるんだったら、もうひとつ別の音(楽器)がほしいと思って、高田 漣さんにお願いして。漣さんのペダルスティール、めちゃくちゃ良かったです。より豊かな絵が浮かぶというか、魂を吹き込んでもらったなって」
亀本 「ペダルスティールを組み立てるところから、興味津々でずっと見てました(笑)」
松尾 「私は
高田 渡さんの音楽もずっと聴いてたから、余計に嬉しかったんですよね。せっかく高田 漣さんにやってもらえるならって、
細野晴臣さんのバンド・メンバーの伊賀 航さん(b)、
伊藤大地さん(dr)にも参加してもらえて。最高でしたね、ホントに」
――「さよなら僕の町」はふたりが卒業した高校で録音したとか。
亀本 「母校の美術室ですね。毎年、文化祭でライブをやってるから、そんなに久々って感じではなかったんですけど」
松尾 「美術部には私が描いたデッサンがまだ貼ってあたりするし。この曲はちょうど大学に合格したばかりの頃に作ったんです。これから家を出て、東京に行くというときの気持ちをそのまま歌にしようと思って。レコーディングすることになったときも(曲を作った)その場所で録るのがいちばん美しいだろうな、と。音がハズれていても、椅子の音がしてもいいから、何の加工もしないで、そのまま音にしたかったんですよね」
亀本 「……言って大丈夫?」
松尾 「いいこと言って」
亀本 「いまはかなり強気な感じなんですけど、バンドを始めたばかりの頃はちょっと違ってたんですよ」
松尾 「え、そう?」
亀本 「最初はおっとりしてた印象というか、“おとなしい感じの子だな”と思って。でも、バンドをやっていくうちに徐々に強気になっていって、目つきも鋭くなって」
松尾 「そうかな……」
亀本 「最近はにこやかなんですよ。いい意味でギラギラ感が取れたいうか、心を開いてきた感じもあって。ずっといっしょにいるとわからないけど、振り返ってみると、少しずつ変わってきてるんだなって思いますね」
松尾 「亀本も昔はカッコつけてたんですよ、髪をいじっちゃう系で、腰パンで」
亀本 「イキがってたから(笑)」
松尾 「“うわー、めんどくさそう”と思ったんだけど、バンドに対してはすごくマジメだったし、ギターに対しても真剣で。これなら大丈夫、信頼できると思って、いまに至ります(笑)」
――「大人になったら」も、このアルバムのポイントだと思います。GLIM SPANKYらしいブルージーなロックナンバーだし、歌詞にもリアルな思いが込められていて。
松尾 「感情大爆発ですね。いつも歌詞を書くときは、いろいろ考えて、言葉を選ぶことが多いんですよ。でも〈大人になったら〉は感情が溢れすぎて、ギターを弾きながらバーッと書いていったら、これが出来ていて。〈焦燥〉もそうですけど、いまの私の感じが詰まってるんじゃないかなって」
――“大人になる”ということもテーマにしながら、自分らしく生きることの大切さを歌っているというか……。
松尾 「この曲を書いたのは大学3年生のときなんですけど、“大人になるってどういうことだろう?”とか“本当の就職って何だろう?”って考えていたんですよね。私は音楽をやろうと決めていたんですけど、“バンドなんてやってもムダ。デビューなんかできるはずないから、やめたほうがいい”って言われたことがあって。その人も昔はロックが好きで、音楽をやっていたんですよ。でも、大人と言われる年齢になった頃に“できるはずがない”と諦め、心に鍵をかけてしまって。〈大人になったら〉を聴いて、少しでもその鍵が開くきっかけになってくれたらいいなって思うんです。もちろん、自分の夢に向かって進んでいる同世代の人たちにも響く曲であってほしいし」
――“憧れは決して消えない”というフレーズは、レミさん自身にもそのまま当てはまりそうですね。
松尾 「死ぬまで持ってるだろうし、ずっと消えないでしょうね。満足しないで死んでいきたいと思ってるので(笑)」
――GLIM SPANKYが憧れられる存在になれば、ロックの復権にもつながると思います。
松尾 「がんばります!この前タワレコに行ったら『リアル鬼ごっこ』のコーナーにPOPを書いてくれていて……」
亀本 「“次世代ロックスター日本代表”って書いてあったんですよ。そうなりたいですよね、ホントに」
取材・文 / 森 朋之(2015年7月)
撮影 /
松島 幹9月18日(金)宮城 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
9月21日(月)北海道 札幌 COLONY
9月23日(水)京都 磔磔
9月24日(木)香川 高松 TOONICE
9月26日(土)広島 CAVE-BE
9月27日(日)福岡 graf
10月4日(日)大阪 梅田 シャングリラ(ワンマン)
10月11日(日)愛知 名古屋 CLUB UPSET(ワンマン)
10月17日(土)東京 赤坂 BLITZ(ワンマン)