25年間やってきたご褒美みたいなアルバム――ROLLY渾身のトリビュート・アルバムをリリース

Rolly (ex-すかんち)   2015/07/29掲載
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すかんちのメジャー・デビューから25周年を経たROLLYが、70年代の日本のロックをテーマにしたトリビュート・アルバム『ROLLY'S ROCK CIRCUS〜70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光〜』をリリースした。“音楽のフランケンシュタイン”を自認し、ロック、歌謡曲、オペラ、クラシックさらには演劇とあらゆる刺激を料理する極上のエンターテイナーが中学生の少年に還って作り上げた作品について話を訊いた。
――デビュー25周年、おめでとうございます。今作は70年代の日本のロックをテーマにしてROLLYさんの音楽の軸となるような楽曲をカヴァーされていますね。
「ありがとう。最近はいろんな人とアルバムを作っているんですけど、自分のアルバムとしては3年ぶりになります。今回はキング・レコードさんから“影響を受けた日本の70年代ロック・カヴァー集を作りませんか”とお話を頂いたので、25年間やってきたご褒美として中学生の少年になってやらせていただきました。とても良い作品になったので、1人でも多くの人に聴いてもらいたいね、すべての人類に。今まではアレンジの妙技を披露するのが得意だったんだけど、このアルバムはかなりストレートに演奏しています。曲のテンポを原曲と全く同じにしたんですよ、初めてですね。いつもだったら、外道の〈ビュン・ビュン〉なんてブギーのリズムに落とすんだけど、今回はそのまんまやりましたねえ」
――そのスタイルも聴いてみたいところではありますが、なぜアレンジをされなかったんでしょう?
「……そうねえ。好きにやっていいと言われていたのに、変えられなかったね。名曲揃いなので、曲の良さはお墨付きで。大好きなサイコーの曲ばっかりだから、原曲のイメージを壊さないようにしています。中学生の自分に戻って作ったということもあるけど、長年やってきたことにより、アレンジを加えなくても、同じギター・フレーズを弾いたとしても、自分が歌い演奏することでROLLYの音になるという自負があったのかな。真っ向から取り組んでも、奇をてらわなくても自分のものになる、味が出せるという自信が出来たのかも。あとはご本人へのリスペクト。骨格を変えたくなかったという気持ちがありますね。成毛 茂さんや石間秀機さん、鈴木 茂さんたち……ギタリストへのリスペクトも込めて大幅なフレーズ・アレンジはしていないんです」
――それだけ楽曲に思い入れがあった……愛情ですね。
「ものすごく愛情を込めましたね。何よりもレコーディングが楽しかったな。このアルバムのために自宅に“ムーピー・ルーム”と名付けたスタジオをとうとう作りました。選曲は20曲くらいまでしぼってね。頭脳警察の〈さようなら世界夫人よ〉や、キャロルの〈憎いあの子〉、あとチューリップの〈銀の指輪〉って曲がすごくスレイドっぽくて。やりたかったなあ。ちなみにドラムで参加してもらっている松本 淳さんはチューリップの三代目のドラマーの方なのね。ライヴではチューリップの曲はやるつもりだから、ぜひ来てください」
ROLLY'S ROCK CIRCUS〜70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光〜
――ほかに選曲からもれたというジャックス村八分のカヴァーも聴いてみたいです。今回の外道のカヴァーはギタリストROLLYとしての魅力が特に出ていますね。
「外道は〈香り〉がいちばん有名だけど〈ビュン・ビュン〉でしたね。最近の加納(秀人)さんより昔のプレイに近い感じで、実にシンプルに弾かせていただきました。外道のような痛快なロック・バンドってなかなかいないから、ソロ・アルバムの1曲目にロック・オペラを収録するようなへそ曲がりの僕でも今回のオープニングはやっぱり〈ビュン・ビュン〉でしたね」
――こういうストレートな曲をやるのがいちばん難しいのかなと思いましたが、いかがでしょうか。
「んふふふ。わかんないですねえ。僕にとって難しい曲は、好きじゃない曲。もし自分が好きじゃない曲であっても弾いているうちに好きになるね。いいところを見つけますね。僕はそんな難しいことやらないですよ。出来ないんですから(笑)。でもね、“かーっちょいー!”って思わせる何かがありたいと思ってるね。難しいフレーズではなくワン・ノートでしびれさせる、みたいなところが好きです」
――「タイムマシンにおねがい」でラストのカット・アウトはなぜカヴァーしなかったんでしょう?
「そこに大きな意味はなかったと思うんですけど、やっぱりへそ曲がりなんでしょうね。実をいうとあの曲はゴツゴツさせたかったので一番手を入れて遊んでますね。オリジナルはギターがそこまでグラム・テイストじゃなくて、すっごく生真面目で難しいんですね。なので……コピーしなかったです(笑)。僕がやると必死でコピーして、ひたすらフレットを見ながら弾いているような感じになっちゃうかなって」
――ラストには「恋のマジックポーション」のセルフカヴァーが収録されていますが、ファンとしては「恋するマリールー」や「恋の1,000,000$マン」を選ばれても良かったのかな、とも思いました。
「この曲はTV番組のテーマ・ソングにしていただいたこともあって、すかんちを知らなくてもこの曲を知っている人たちがいてくれて。〈メイクアップ〉や〈タイムマシンにおねがい〉のような日本のロック・スタンダードには入らないけど、僕の“後世に残していきたい一曲”となると、これなのかな」
――ヴォーカリストとして、当時との実力の違いに驚きました。色気が違いますね。やはりシャンソンに取り組まれたことが大きいのでしょうか?
「そうね……それはうれしいですね。シャンソンは大きいと思います。今のほうが力が抜けているね。今はもう力んでいない軽ーい感じで。昔のはほんとに聴く気にならないですね。今回は今までで、もっともうまく演奏できているなと思います」
――あらためてご自身の曲と向き合われて、いかがでしたか?
「(〈恋のマジックポーション〉を)客観的に聴いて、70年代の素材を組み合わせて作ったはずなのに、知らない間にやっぱり90年代の音になっていると感心しました。ドラムのキックの感じ、四つ打ち感とでもいえばいいのかな? 70年代のスピードじゃない、なんていうかメタル感があるね。……僕は“音楽のフランケンシュタイン”というか、子供の頃から聴いていたロック、歌謡曲にフォーク、民謡や童謡、ありとあらゆる音楽を吸収して、自分流に料理したものをこれまでやってきました。悪い言いかたをするとパクっている……んだけど、先日クリス・ペプラーさんが“音楽のバトンを渡す”とステキな表現をされていて(笑)、僕の手元にやってきたバトンがぜひ受け継がれていくといいなと願っています」
――受け継がれていく音楽のバトン、ステキですね。
「たとえば、すかんちの〈恋するマリールー〉だったら、イントロはクイーンの〈誘惑のロックンロール〉の途中まで、ここからエンジェルの曲。歌いだしは、はっぴいえんどの〈田舎道〉、このルーツをわかってもらえるように歌詞もそのまま引用していて。その後のメロディはラズベリーズの〈プレイ・オン〉という曲からなので、2番の歌いだしは“ラズベリーズ色の〜”にしていて。バトンを受け取ってくれた人にはラズベリーズも聴いてもらいたいからね」
――またこのようなスタイルでリリースはされる予定ですか?
「やりたいですねえ。ファンの方は“カヴァーじゃなくてオリジナル・アルバムは?”と仰ってくれるのですが、たくさんアルバムを作ってもコンサートで聴きたい曲は限られるでしょ。濃厚なものが3タイトルくらいあればいいじゃないかとも思ったり。あと、最近だとPUFFYももいろクローバーZMEGさんに楽曲を提供しているんですけど。ファンの人はね、提供した曲をカウントには入れてくれないのね(笑)」
取材・文 / 服部真由子(2015年7月)
ROLLY'S ROCK CIRCUS
〜70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光〜

2015年7月8日(水)発売
KICS-3207 3,000円 + 税

ROLLY

[収録曲]
01. ビュン・ビュン(外道)
02. メイク・アップ(フラワー・トラヴェリン・バンド)
03. タイムマシンにおねがい(サディスティック・ミカ・バンド)
04. サムデイ(フライド・エッグ)
05. 花いちもんめ(はっぴいえんど)
06. 空と雲(四人囃子)
07. たどりついたらいつも雨ふり(ザ・モップス)
08. 怒りをこめて(あんぜんバンド)
09. 気になるお前(沢田研二 / 近田春夫&ハルヲフォン)
10. アラベスク(ムーンダンサー)
11. 恋のマジックポーション(すかんち)
※カッコ内はオリジナル・アーティスト

[レコーディング・メンバー]
ROLLY (vo, g)
すかんち / THE ROCKROLLY / THE 卍 / ROLLY&GlimRockers

永井 ルイ(g, b, cho, synth, org, p, programming & engneering)
FOLKROCKS / THE ROCKROLLY / AM☆PM / ROLLY&GlimRockers

松本 淳 (ds) 
UGUISS / チューリップ / THE ROCKROLLY

[Special Guest]
厚見 玲衣 (vo, p)
VOW WOW / CASINO DRIVE / MOON DANCER / TACHYON



“ROLLY'S ROCK CIRCUS”Release TOUR
〜70年代の日本ロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光〜
デビュー25周年記念R指定事業


2015年9月4日(金)
東京 下北沢 GARDEN

開場 19:00 / 開演 19:30
4,800円(税込 / スタンディング・入場整理番号付 / ドリンク 500円別)
チケット取扱: SMA☆TICKET / ローソン / ぴあ / e+


ROLLY and Band Member: 永井ルイ / 松本 淳 / 三国義貴(東京・大阪のみ)
Guest: 厚見玲衣


※お問い合わせ 下北沢GARDEN 03-3410-3431
gar-den.in/




2015年9月5日(土)
大阪 心斎橋 JANUS

開場 16:30 / 開演 17:00
4,800円(税込 / スタンディング・入場整理番号付 / ドリンク 600円別)
チケット取扱: SMA☆TICKET / ローソン / ぴあ / e+
ローソンチケット L 54067 / ぴあ P 267-219 / e+ eplus.jp / CNプレイガイド 0570-08-9999 / JANUS会場窓口


ROLLY and Band Member:永井ルイ、松本淳、三国義貴(東京・大阪のみ)
Guest: 加納秀人(外道)


※お問い合わせ キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00〜18:00)
www.kyodo-osaka.co.jp/index.php




2015年9月6日(日)
愛知 名古屋 TOKUZO

(MUSIC FIELD 10周年企画 外道 vs ROLLY =ロックンロール・マジックポーション=)
開場 17:00 / 開演 18:00
4,300円
チケット取扱: ローソン / ぴあ / e+


ROLLY and Band Member: 永井ルイ / 松本 淳
Guest: 外道(加納秀人 / そうる透 / 松本慎二)


※お問い合わせ MUSIC FIELD 052-752-2346

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