L to R 藤原大輔(MU-STARS / MU-STAR GROUP), ナオヒロック, BIKKE(TOKYO NO.1 SOUL SET)
――「Will Be 〜夢のつづき〜 feat. BIKKE」のリリースおめでとうございます。今回は、このシングル曲に関わったみなさんにお集まりいただきました。そもそもこれはどこから始まった話なんですか?
ナオヒロック 「僕は今、CIDER Inc.という会社に所属しているんですけど、その会社が2年に1回くらいやっているイベントに〈半日〉というのがあるんです。去年やったそのイベント(
〈半日'14 ハイサマー!〉2014年8月10日 東京・代官山 UNIT)で、その特典でナオヒロック名義のシングルをおまけでつけようという話になったんです。それで、そのときに
〈駒沢通りまぼろし〉という曲を作ったんです」
――今回、カップリングになってる曲ですね。
ナオヒロック 「はい。そしたら、それを
タワーレコード新宿店の店長さんが気に入ってくれたらしくて、“うちでも何かやりませんか?”というお話をいただいたんです。そこから今回のシングル制作は始まったんです」
――それで、サウンド・プロデューサーとして藤原くんに声をかけたんですね。
藤原大輔(以下 藤原) 「MU-STAR GROUPでスチャダラパーの
BOSEさんとやった〈さいごのうた〉を聴いてくれて、声をかけていただいたと聞いたんですけど」
ナオヒロック 「いや、それは別に(笑)」
藤原 「え(笑)?」
ナオヒロック 「いや、あれがなくても、そう決めてましたって話で。もう20年くらい知ってるんで、やりやすいかなって思ったんで“じゃ、大ちゃんで”って言いました(笑)。しかし、知り合ったときは、大ちゃんはまだ高校生でしたからね。まさか一緒に曲作るようになるとは思わなかったし」
――まさに高校生のときの自分に教えてあげたい感じ。
藤原 「そうですね」
BIKKE 「その“高校生のときの自分に教えてあげたい”発言ってよくあるけど、今は藤原くんはそんなに思ってないでしょ(笑)?」
ナオヒロック&藤原 「(爆笑)」
BIKKE 「まあ、あの頃ほどテンションはそんなに上がってないっす、みたいな感じだよね」
藤原 「いや、そんなことないですよ!当時の俺だったらびっくりすると思いますよ、ありえないから(笑)」
――当時は、緊張して話せないくらいの感じ?
藤原 「そうですね。ナオヒロさんもBIKKEさんもそうだし、最初にスチャダラパーのみなさんに紹介していただいた時も手が震えたし」
――当時の藤原くんはどんな少年だったんですか?
ナオヒロック 「代官山をうろうろして、ネタ物のレコードとかを探してたんですよ。それも、お母さんの作ってくれたサンドイッチと、なぜか紙袋を入れたジュースを持って、口をポカーンとあけて(笑)」
藤原 「口は今もあんまり変わんないと思うんですよね」
ナオヒロック 「BIKKEさんは大ちゃん知ってました?」
BIKKE 「知ってた。サンドイッチの件は知らなかったけど(笑)」
藤原 「BIKKEさん、僕のこと知ってくれてたんすか!」
ナオヒロック 「でもまさか、音楽を作る人になるとは思ってなかった」
BIKKE 「ねえ。なんで?変なもんに興味持って!」
藤原 「(爆笑)」
BIKKE 「音楽って楽しいと思うけど、人生の短い間にしときな(笑)」
藤原 「いやあ、憧れというか、呪いというか、こういう先輩方をかっこいいと思って僕もこの道に入ったので」
ナオヒロック 「もう遅いです(笑)」
――その少年時代の藤原くんが憧れた先輩方のなかでも、ナオヒロックさんがゆったりとしたペースであっても音楽をやめずに来たっていうのは、特別な映り方をしていたんじゃないですか?
藤原 「ナオヒロさんも僕の先輩ですけど、さらにその上の大先輩のみなさんからのナオヒロさんへの圧倒的な信頼感というか、いじられつつも愛されてる、ナオヒロさんの場があるという感じがいいんですよね」
ナオヒロック 「いやー、なんも考えてないんですよ!これまでも、“アルバム出したほうがいいよ”とか“続けたほうがいいよ”とかすごい適当に言ってくる人たちがいて、絶対適当に言ってると思うんですよ(笑)。でも、そういうのが励みになって“まだやっていいのか?まだやっていいのか!”って思うんです。あんまり自分からはやってないんです」
藤原 「それこそ、スチャダラパーのアルバム『5th WHEEL 2 the COACH』(1995年)でのオープニングのナオヒロさんのシャウトとか、ああいう大傑作な場を用意される人なんですよ。あれだって別にナオヒロさんが“やりたい”って言ったわけじゃないじゃないですか。あのアルバムのCMでナオヒロさんを見て、
JxJx(サイトウ“JxJx”ジュン /
YOUR SONG IS GOOD)さんは“よっちゃん(少年時代のあだ名)いったー!”って大興奮したって言ってましたから(笑)」
――そうだ、JxJxさんと小学校の同級生なんですよね。
ナオヒロック 「はい。そうなんです。いやー、あのときも全然いってない、いってない(笑)。あのCMもスチャダラパーのOKが出なくて、何回も撮り直したし」
藤原 「ちなみにアルバムの頭のMCは、どういうディレクションだったんですか?」
ナオヒロック 「
SHOWBIZ & AGの12inch〈Bounce Ta This〉のB面に、ああいうイントロデュースの曲があったんだよね。そういう感じでって指示があったんで“わかりました、それで”って」
藤原 「それ、やばいですね。SHOWBIZ & AGだったんだ、あれ」
ナオヒロック 「スチャダラパーのみんなは、人の良いところを引き出すのがすごくうまいからね」
――ナオヒロックさんは、いじられているという実感はなく?
ナオヒロック 「いや、ありました(笑)。今で言うフックアップみたいな感じではありましたけど」
藤原 「でも、いじられて本当に落ち込んだこともあったとか?」
ナオヒロック 「ドッキリにはめられて。そういうのは何回もありました。リアクションがおもしろかったんで、ダマし甲斐があったんだと思うんです。今年も〈LB大博覧会〉(
〈大LB博覧会 at TOKYO CULTUART by BEAMS〉2015年1月16日〜2月11日 東京・原宿 トーキョー カルチャート by ビームス)でだまされそうな企画があったらしくて(笑)」
藤原 「スチャダラパーの映像作品『リスチャダライブ』(95年)でも、1回本編が終わった後に始まるナオヒロさんがドッキリ仕掛けられる映像とか最高で、そうそうたるクルーの中での存在感が圧倒的なものがあったんですよ。『元気が出るテレビ』の
高田純次さん的というか」
ナオヒロック 「それはめっちゃ光栄だな(笑)!」
藤原 「ちなみに、LBの先輩方から、親身になって“こういうふうにしたら?”みたいなアドバイスとかはないんですか?」
ナオヒロック 「言われるけど」
BIKKE 「リリックの内容とか?」
ナオヒロック 「そういうのもあります」
藤原 「BIKKEさんからもなにか言ったりしました?」
BIKKE 「俺は、そんな仲良くないもん(笑)。でも、(渡辺)俊美くんからは結構あったんじゃないの?」
ナオヒロック 「ありました。歌詞のこととかで、“もっと下ネタとかやったほうがいいんじゃないか?”みたいな」
BIKKE&藤原 「(爆笑)」
ナオヒロック 「“そ、そうすか”って感じで(笑)」
藤原 「昔、
ハリウッドランチマーケットの店員さんでヒロキくんってナオヒロさんのおさななじみの人がいたんですけど、その人が“ナオヒロの歌詞はシュールやねん”っておっしゃってて。たしかに、スチャダラパーの〈GET UP AND DANCE〉でのナオヒロさんのリリックとか、わりと抽象的というか幻想的なところがありますよね」
ナオヒロック 「ちゃんと聴いてくれてる!そう言われるだけで、もう十分うれしい(笑)。ひとりでもそんなことを言ってくれたら“やった甲斐あるわ〜”って思うし、“伝わった!”と思えたら、また1曲できるかもしれないから」
藤原 「それが原動力ですからね!」
ナオヒロック 「
Twitterが出てきたときも、“どうして俺の知らない人がこんなに俺のこと褒めてくれてるんだろう?”って思ったし」
――今回の「Will Be 〜夢のつづき〜」は、そういうナオヒロックさんのラップ人生と絶妙に重なり合った感じがありますよ。
ナオヒロック 「BIKKEさんは、さすがな感じでしたよね」
藤原 「昔からのファンとしては、自分のトラックにBIKKEさんが乗ってきてくれると“うわー、あの感じになる!”っていう感動がありました。ファンとしても、ナオヒロックさんとBIKKEさんが一緒にやる感じって意外というか、なかなかない感じなんですよ」
ナオヒロック 「ありえないと思う。俺も聴いてみたいと思ったし」
――リリック的にはどういう構想だったんですか?
ナオヒロック 「今回は、リリックとしてはBIKKEさんが鳥になって、僕は猫になってるんです。ジャケットがそのまま答えになってるんですけど」
藤原 「“まるまって待つぜ ベストアンサー”ってパンチライン、やばいですよね」
ナオヒロック 「BIKKEさん、だれかにこの曲のこと言われたりしました?」
BIKKE 「いや、だれにも言われない。このリリースのこと、そんなにみんな知らないと思うよ(笑)!」
ナオヒロック&藤原 「(爆笑)」
ナオヒロック 「最高っすね、それ(笑)」
藤原 「友だちの漫画家の小山ゆうじろうくん(『とんかつDJアゲ太郎』)にプレゼンしたら、“いいっすね!”って言ってましたよ」
――確かに、『とんかつDJアゲ太郎』の世界観にこの曲はちょっと合ってる気がします。
藤原 「そうですね。普通じゃ出せないグルーヴというか」
――もうちょっと話題にしたいですよね。
ナオヒロック 「僕はもう十分ですけどね(笑)!」
――このコンビでもっと曲を作ってみるとか。
ナオヒロック 「それはいいですね!大ちゃんとは聴いてきた音楽もわりと近いんで、安心できるんですよ」
藤原 「今回はBIKKEさんが参加していただけるっていうことで、TOKYO NO.1 SOUL SETっぽいところにも近づきたいと思いましたけどね。とにかく、BIKKEさんが乗ったときに違和感がないようにしたいなと」
BIKKE 「正直な話、もっと変なトラックがくるのかな?って思ってたけどね」
藤原 「もっとナオヒロさんの良さを引き出せるトラックがあったんじゃないかとも僕は後から思いましたけどね」
BIKKE 「え?ナオヒロの良さって、どこ(笑)?」
藤原 「それを実験的に探ってみることもできたかなって。BIKKEさんのラップが最初入ってきてかっこよくてうれしかったんですけど、その次にナオヒロさんのラップが入ったときに、普通のトラックじゃダメだったんじゃないかってちょっと思いました(笑)」
ナオヒロック 「そう?」
藤原 「尋常じゃないんですよ、ナオヒロさんのビート感って!」
ナオヒロック 「尋常じゃない?そこ、詳しく聞きたい」
藤原 「独自のグルーヴ感というか」
ナオヒロック 「この曲は自分がやってきた曲の中では一番遅いんですよ。でも言葉数は少なくて。そうすると、言葉を伸ばすしかないんです。言葉を伸ばすと、よりオリジナルなグルーヴが出るんです。今回はそのことをよく指摘されてるんで」
BIKKE 「ナオヒロのフロウってちょっと変わってるところはあるよ。ふわーっとしてて、でも、どこかで帳尻は合ってる。下手なのかなと思ってた(笑)」
ナオヒロック 「下手じゃないです!天然なんですよ!」
BIKKE 「天然なの?」
ナオヒロック 「超天然です。そんな計算とかしてないんで」
藤原 「でも天然だとしても存在としてナオヒロックは成立しているわけだから、それをもっと活かせるものがあったのかなって思ったんです。海外でもいるじゃないですか、メチャクチャユルいけど超かっこいいラッパーとかって。往年のニュー・スクールだと、
GRAND PUBAとか」
ナオヒロック 「はいはい」
藤原 「そういう良さですよね。普通のうまさでは計れない部分というか」
ナオヒロック 「そういうのに自分で甘えてる部分はあるかもしれない(笑)。でも、自分は独特なものでいいのかなとは思ってます。狙ってるんじゃなくて、これしかできないんですよ」
――でも、つくづくナオヒロックさんの存在感は得難いですよね。こち亀(漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)に出てくる日暮さん(オリンピックの度に眠りから覚める名物キャラ)みたいでもあるし。
ナオヒロック 「僕は、ただおもしろくてやってるだけなんですよ。でも、“今CDシングル出せるのってすごいよ!”って今回のリリースではよく言われます」
――人に恵まれてるというか、ペースはゆっくりかもしれないですけど、こうして望まれて出せるわけですから、やっぱりその存在感が気になる人がたくさんいるんだと思いますね。このせわしないご時世に、すごく貴重なスタンスですよ。ちなみに、今後のナオヒロックさんの野望は?
ナオヒロック 「野望はですね、なんと、新宿タワーレコードで、このシングルのインストアライヴ(9月24日21:00スタート)!これは本当の伝説が生まれそうです(笑)」
BIKKE 「怖いよ〜、これめっちゃ怖いよ!俺知らないからね!いなくなっちゃうかも(笑)」
ナオヒロック 「じゃあ、念のためどっちのヴァージョンも持っていきます。BIKKEさんがいなくなったときのために、もともとBIKKEさんの声が入ってるほうも(笑)」
藤原 「(爆笑)」
ナオヒロック 「いやでも、当日は本当に伝説になると思うんで、ぜひぜひみなさん見に来てください!」
取材・文 / 松永良平(2015年9月)
撮影 / 仁田さやか
取材協力 /
終日one■ 2015年09月24日(木)東京
タワーレコード新宿店 7F
21:00〜
[出演]
ナオヒロック
スペシャルゲスト: BIKKE(TOKYO No.1 SOULSET) / アチコ(Ropes) / 藤原大輔(MU-STARS / MU-STAR GROUP)
[参加方法]
観覧自由。タワーレコード新宿店にてナオヒロック「Will Be 〜夢のつづき〜 feat. BIKKE」をお買い上げいただいた方に、先着でサイン会参加券を差し上げます。
※サインはCDに致しますので、当日はお買い上げいただいたCDを忘れずにお持ちください。尚、サインはナオヒロックのみとなります。