世界からも注目を集めるクラブジャズ・バンド
quasimodeのメンバーであり、
土岐英史、
竹内 直、
野本晴美、
守谷美由貴QUARTETなどをはじめとするセッションにも数多く参加、またサンプラー・アーティスト
BLAHMUZIKとのユニットBMSOなど、多岐にわたる活躍をみせるジャズ・ドラマー
今泉総之輔が初となるリーダー・アルバム
『凛』をリリースした。本作は、自身のルーツともいえるヒップホップに真正面から挑んだ意欲的な一枚となっている。
――初のソロ・アルバム、リリースおめでとうございます。端正なジャズ・アルバムに仕上げられていますね。
「そうですね、うん、小奇麗ですよね。どの楽器のプレイヤーとも同じ目線で、リーダー・アルバムとして、曲として、良いものを仕上げたいと思っていました。自分だったらドラマーのアルバムでドラムだけがフィーチャーされていたらちょっと落ちる、別にいいかなとなってしまいそうだし」
――ジャズのドラマーはバランスをとることを重要視される人のほうが多い気がしていて、今泉さんはアグレッシヴな演奏もこなせる方だと思っていたので、どちらが出てくるのか楽しみでした。
「意外とみんなそのことには気がついていないかもしれないけど、その通りですね」
――このアルバムではオリジナルがスタンダードと並んでも遜色なく美しいことに驚きました。
「ドラムの人は良い曲書きますよ、意外と。他人のオリジナルも沢山演奏させて頂いているし、後ろでちゃんと聴いてますからね(笑)。今回のメンバーは、トリオで長らく一緒にやっているので、意思の疎通もタイム感もうまくいっていましたね。中盤に置いたメドレーは結成当時からやってる曲です」
――公言されているヒップホップの影響がどのように現れるのかとても興味があったんですが、中盤のメドレーやアルバムの構成はヒップホップのマナーに則っていますよね。
「そのあたりは意識的に構成したというよりも自分にとっては当たり前で、定番というか。このアルバムはヒップホップを好きだった人、今でも好きな人に共感してもらいたかった。時代は変わってきていて、ヒップホップで育った世代もジャズの世界の第一線で仕事をするようになったんだなと分かってほしくて。そういうドラマーがいてほしいじゃないですか。特に90年代前半、サンプリングものの時代に関しては自信があるというか、それを“かっこいい”と思った耳しか自分にはないんですよね。だから欲を言えば、このアルバムはあと5年早く作りたかったんです。同世代が家庭に入る前、クラブや音楽を楽しむ年齢層だったころに。ジャズはすごい練習しなきゃいけなかったから間に合わなかった(笑)」
――ジャズ・アルバムとして完成しながらも、アルバムのアクセントとなっている中盤のオリジナルやBLAHMUZIKさんとの曲などは、ヒップホップの流れにあります。
「自分はとにかくヒップホップが好きなんですよ。フィルターを使ってこもらせたモコモコの音だったり質感、好きなタイム感でループさせられること……。これがすべてなんです。ちょっと分かりづらいんですけどね。すごくマニアックだし、普通に生きてる人には関係ない要素かもしれないけど、これが決まっていないと自分が演奏する意味はないと思う」
――全体的に演奏のうえで振り切ってるところはあえて悪目立ちさせない、クリーンで洗練させている印象です。
「それはquasimodeの活動で培ったものが大きいかもしれないです。フリー・ジャズのバンドもエンタテインメントのバンドも、どちらもたくさん共演させていただいたので聴く人のことを考えて洗練させたいと思っていますね。ストリートの感覚も大事だし、独りよがりなオタクっぽい音にはならないようにしています。頭でっかちでポップさが足らないのは嫌なんでしょうね。スタンダードの曲を演っているときはヒップホップに負けないくらいの強度を持った刻みを心がけています。あと、
田村(和大)くんのピアノはモノホンすぎて、ゾッとするようなフレーズなんですよ。チャラさがゼロっていうか、分からない人は寄せ付けないような筋の通った音。彼はジャズ・マナーが完璧に近いから、ヒップホップをやらせてみたかった。このアルバムは、後録りでの音量調整はせずにライヴと同じように録音してるんです。今って、ドラムの音圧とピアノの音量を後から調整していて“そんなに聴こえないだろ”って作品のほうが多いんですけど。相手の音を聴いて、バランスをとった演奏をするってのは難しいけど大切なことで、そこにある空間を録ってもらいました」
今泉総之輔 / 凛
――「次世代ジャズ・ドラマーの今」と紹介されているアルバムですが、今後はどのような活躍を目指していかれますか?
「これまでずっと……今もそうだけど、ぎりぎりスキルが足らない、ちょっと背伸びしなきゃいけないような仕事がくるんです。夜通し練習して磨いて、はじめて追いついてくる。ずっと練習してますね(笑)」
――努力し続けて、伸び続けていかなきゃいけない。
「本物のジャズ・ドラマーになりたいというか、今はその折り返し地点にいると思っています。ちょうど37歳なんですけど、ここから50代が近づいてきたころにどうなっているかを視野に入れて、ネクスト・レベルを目指して練習を続けていくつもりです。磨き続けているからこそ派手なことができる……一発屋みたいなことはしません。そして、さらに日本のジャズのレベルを上げるのに、少しでも貢献出来たらと考えています」
――今泉さんの考えるネクスト・レベルって、どんなドラマ―なんでしょう?
「隅々までちゃんとしている、全方位型のドラマーですね(笑)。日本にもこんなドラマーがいるのか!みたいな。全ての人に分かってもらえなくても良いんです。日本といえば、本当にいいものじゃないとダメでしょ。モノホンですよね、ずっしりとしたものにしたいなと」
2015年10月20日(火)
東京 丸の内 COTTON CLUB1st.show 開場 17:00 / 開演 18:30, 2nd.show 開場 20:00 / 開演 21:00[CHARGE / 料金]
・自由席 / テーブル席 4,800円
・指定席 / BOX A(4名席)7,000円 / BOX B(2名席)6,500円 / BOX S(2名席)6,500円 / SEAT C(2名席)6,000円[MEMBER]
今泉総之輔(ds) / 須長和広(b) / 田村和大(p)