お笑いコンビ・ライセンスのトーク・ライヴ〈LICENSE vol.TALK〉DVD第5弾が登場

ライセンス(お笑い)   2015/10/20掲載
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現在はヨシモト∞ホールで行なわれている、お笑いコンビのライセンス井本貴史 / 藤原一裕)によるトーク・ライヴ〈LICENSE vol.TALK〉から、選りすぐりトークを収録したDVD第5弾がリリースされた。来年には結成20周年を控え、独特の漫才やコント、そしてバラエティ番組を盛り立てていくメイン、バイプレーヤーとしてのポジショニングなど、非凡なる笑いの存在感を放つ2人が、迷いなく“続ける”と言い切る舞台への想いを訊いた。
――ライセンスさんは来年で結成20周年を迎えますね。
井本貴史 「あんまり僕は節目っていうのにこだわりがないんです。昔、本を出した時も9年で出しましたし(笑)、“よう続いたな”ぐらいのことやと。通過点かなあっていう。とりたてて“なにかやらな”とも思いませんし」
――予定されてることも?
藤原一裕 「うーん……今のとこないですねえ。なにせ20年やってる実感がないんで。20年もやってるか? 計算したらやってないんちゃう?(笑)」
井本 「体感で言うたら、あっちゅう間ですもん」
藤原 「若いころは暇だったんで。20年分の仕事をした気にはなってないです、全然」
井本 「諸先輩方の20年目と、僕らの世代の20年目ってたぶん、全然意味違うと思うんですよ。今だと下手したら若手の枠に入るでしょ」
藤原 「今は20年ぐらいのやつゴロッゴロいますから(笑)」
井本 「まだ、ひな壇の3段目とか座ってますからね。何歳になったら1段下がんねん、何年やったら1段目にいくねんって(笑)」
――近しい先輩の年の重ね方などはご覧になっていていかがですか?
井本 「何歳までモンスター級でやんの?っていうのはずっと思ってますけど」
――(笑)不満ですか?
井本 「不満です。“絡みたい”というよりは“観たい”という気持ちもあるので、全部の仕事をやめてくれとは言わないですけど、4、5本は減らしてくれと。それはもう(笑)、さすがに思いますね。だって一生どころか三生ぶんぐらい稼いだと思うんですよ、お金が全てじゃないですけど。“もう、よくないすか?”っていうのはずっと(笑)」
藤原 「ずっと強いマイク・タイソンっておるんやなっていうね。ほんとのマイク・タイソンだってもうダメですよ(笑)、そら体力も衰えるでしょうし。でもお笑い界においては衰えるどころか、なんなら拍車がかかるんやなっていう。それこそ20年なんてもう、屁みたいなもんで」
井本 「そんな人らから見たらねえ」
藤原 「“あっそう”ぐらいの感じでしょ、僕らの20年なんて(笑)。だから特別、祝うあれもないんやなあと思うんすけど」
――それでは芸人としての理想形はありますか?
井本 「自分たちが50歳ぐらいになったときにトーク・ライヴでウケてたら、たいしたもんやなと。ウケてたいですしね。それこそダウンタウンさん、(明石家)さんまさんとか、若い人からしっかり笑いを取るじゃないですか。年齢差というギャップを感じさせない」
――ライセンスさんは感覚的に客席との距離が近い気がします。
井本 「なるべくあまり開きのないように意識はしてます。“町のお兄ちゃんがしゃべってる”みたいなイメージがいいんですけど、50代になったらそうもいかないかなー。“おもろいオッサンしゃべっとるな”ぐらいになれれば、いいっすよね。たまに重いことも言う、みたいな(笑)。これは年齢と共にしゃあないと思うんで。あたりまえのことを言うてるつもりでも、なんか重みが勝手に出るというか。年輪の分」
――体力的なものも多少は……。
藤原 「まあでも、舞台で1時間しゃべられへんようになったらやめますわ(笑)」
――そりゃそうですね(笑)。
藤原 「そこまで無理になったらやめちゃうでしょうけど、DVDの枚数をどこまで増やせるのか、もしくはジャケットからひとり消えてしまうのか(笑)、分かんないですけど」
井本 「ジャケットでひとりになってたら一番おもろいでしょ。死んでんねんもん(笑)。我々の体力が残んのか、よしもとR&Cの体力がなくなんのか、会場のヨシモト∞ホールがなくなんのか、どれかが尽きるまでは(笑)」
――(笑)ちなみにトーク・ライヴはいつごろから始めたんでしょうか?
藤原 「上京してすぐ……。たぶんもう14年、15年ぐらいやってますね」
井本 「下北沢のちっちゃいライヴハウスから始まって」
藤原 「月に2回、金曜の深夜に5時間トーク・ライヴやってたんですよ。だから月10時間」
井本 「しゃべるっていう」
――だいぶ過酷な(笑)。実際どうまわしていたんでしょう。
井本 「むちゃくちゃしんどいす。1時間やって5分休憩して」
藤原 「ただただ2人でしゃべる。企画もなし」
井本 「ゲストを呼ばない。たまーに誰か来たりとかはありましたけど、でも基本、2人でやらんと意味ないんで」
――そのときお話された内容は……。
井本・藤原 「全く覚えてないす」
藤原 「何一つ覚えてない(笑)」
井本 「でも、それぐらいやらんと、みたいなとこもまあ、ありましたし。暇でしたしね。ほかにも仕事はありましたけど、やりつつっていう感じですかね。その延長線上がこれ(DVD『LICENSE vol.TALK』)」
藤原 「徐々に会場も大きくなって。最初お客さんは30人ぐらいやったんちゃいますかね」
井本 「お客さんが入るんやったら、箱をもうちょっと大きくする?っていう感じで。何年やったからどうというわけではなく、自然と」
――トーク・ライヴについて、どう考えてらっしゃいますか。
井本 「芸人にとっては大事というか、醍醐味のような気がしてますね。しゃべる仕事なんで。しゃべれんと」
藤原 「打ち合わせもせずにやるんで、相方が何を話すかも知りませんし。そういう意味で、いまだに緊張感はある意味、一番かも」
井本 「生ものですから、目の前にお客さんがおって。反応もダイレクトですし」
藤原 「テレビやラジオと違って、お題というかテーマがないじゃないですか。テーマなしでしゃべるっていうのはこれだけなんで」
井本 「“これしゃべります”って感じもなんか、ねえ(笑)。野面がよくないすか(笑)」
――DVDはご覧になりますか?
藤原 「うん、観ますよ。“あったあった!”みたいな(笑)。しゃべったらしゃべったで、話題がその日で終わっちゃうんですよね。なんで、振り返ってこういうふうにDVDとかでまとめてもらうと“言うてたなー”みたいに、忘れちゃってた話も意外とある(笑)」
井本 「もはや我々の資料映像ですね」
――じゃあ、ライセンスには欠かせない作品ですね(笑)。
井本 「完全なる資料映像です(笑)」
藤原 「『LICENSE vol.TALK』で5枚なんで。この前にもいくつか出てますし、そう考えたらもう、ほんまにライセンスの思い出アルバムみたいな。そのときそのときを“あったあったこんな時期!”みたいなね(笑)」
井本 「いいっすよね、だから死んだ時は写真いらないっすもん。これをずっと流しておくか、写真が必要になったら断片的にここから使ってくれと。そんなもんです(笑)」
――実際の舞台には来たことのないファンの方もたくさんいらっしゃると思うんですけど。やっぱり生を体感して頂きたいですか?
井本 「東京でしかやってないですし、そういう意味でもDVDは、来れない人に“こんな空気感だよ”みたいなものを分かってもらえるには、僕はいいツールだなと。これをきっかけにいつかね、機会があれば」
――舞台だけでなくライセンスさんへの入り口としても最適だと思います。
藤原 「今回発売された“05”じゃなくても、どれでもいいんで」
井本 「番号が付いてるのは年代別みたいなもんですから」
――基本、おふたりは実際に起こったエピソードをお話される?
井本 「うん、ですね」
藤原 「ほとんどですね。疑問に思ってることを会場のお客さんに聞くこともありますけど、DVDには入らないゾーンやったり。まあ、ライヴ来てもらうと分かるんですけど、言うたらあかんことも言うてたりするんで、編集で切られちゃったりも」
井本 「40分ぐらい切られたことありますから。“どうせ使われへんよな”と思ってしゃべってましたけど(笑)」
――トーク・ライヴは毎回1時間ぐらいですよね(笑)?
藤原 「1時間っす。ライヴ自体は。配信もあるんですけど、けっこう切られてるみたいです(笑)」
井本 「でも、そこ考えながらやったらもう……」
藤原 「会場に来てる人が最優先」
井本 「あくまで配信、DVDは後付けなので」
藤原 「うちの母親とかは配信を観てるんすけど、会員になって(笑)。“あんた、今週30分ぐらいしかあらへんかったで”“半分切られてるやん”みたいな。それで“何の話したん?”って電話してきて確認する(笑)」
――身近なところからクレームが(笑)。
藤原 「クレームですよ“短い”言うて(笑)」
――舞台を重ねることでお互いについて新しい発見があったりは?
井本 「発見とまではいかないですけど……。プライベートは一緒にはいないので。そういう意味では“そんなとこ出かけたんや”とか。楽屋ではしゃべらないんでね、よっぽどのことがない限りは」
藤原 「トーク・ライヴがあるからしゃべれへんのか、どっちがどっちか分かんないすけど。家も知りませんし」
井本 「我々が仲悪いとかそういうことじゃないし、いいと思うんですよ、コンビで仲が良いのは。ただ、距離が詰まりすぎてるやつらの話を聞きたいかな?と思うんすよね、僕は。人ってどっちかっていうと、せめぎ合ってるほうが好きでしょ。特に“笑い”ってなると……。単純にたぶん、自分がそうじゃないと楽しまれへんのかもしれません。お互いが分かってることって、あんましゃべらないっすね」
――舞台はお好きですか?
井本 「舞台が一番楽しいですね。いろんな仕事の中で。好きです、やっぱり板の上は」
藤原 「ネタとかコントとかやったら、下ろす時やっぱり緊張……作品を失敗できないという“緊張”があるじゃないですか。トーク・ライヴはそういう意味の緊張じゃなくて、今日どうなるやろという“緊張”がある。肩の力はこっちの方が抜けてますね」
井本 「ネタってスキルなんですよ。トーク・ライヴはたぶん筋肉なんですよね。シンプルな」
――本能的に反応するような。
井本 「反射神経とか、瞬発力、持久力、筋力もそうですし。……やっててありますね“こんなん言わんかったらよかった”とか、“なんでこんなフレーズで言うたんやろ”。しゃべってる途中で思いますもん“なんや今の言い回し、しょうもな”。んで、帰るときに“こう言えばよかった”とか思いますし。そういう薄い段を積んでいくことなんでしょうね。“次はこういうワードを放りこんでみよう”とか。舞台はそういう場にはもってこいです。たぶん、一番筋肉が付くと思う」
――鍛錬の場と捉えることもできるということでしょうか。
井本 「うーん……鍛錬やし、本番やし。どっちの意味でもある。毎回が真剣勝負ではあるけれど、重ねるうちに場慣れするというか。どう動けばいいか見えてくるし、鍛えられる。そういう感覚に近いかな」
藤原 「ほんとに今回、話が全くないわっていうときもあるんすよ。ゼロの時もありますし、1個か2個やな……みたいな。しかも片方はめっちゃ弱いしな……とか思いながらも実際起こってないことを話すことはできないし、舞台には出るんで。舞台で井本の感じを見ても“こいつもあんま、あれへんな”ってなった時の緊張感はすごい(笑)。でもそのほうが良いときがあります。こーんなちいさい出来事をめっちゃ広げようとするんで(笑)。そんなんとかは、もしかしたら腕に繋がっていくんかなあ。自信にはなりますよね。遡ると、そういう状態で5時間やってた時期があるわけで(笑)あれから比べたら、1時間ぐらいなんでもないかなみたいな」
――経験しているのは強みですよね。
井本 「若い芸人におすすめしたいですね。5時間ライヴやってみ?って。不思議と眠いとかはなかったり、まさに筋トレやと思いますよ。あの頃は芸人として4〜5年目ぐらいとかやったんで筋肉もないし、戦い方も分からへんし。自分らに合った鍛え方を見つけるしかなかったんですよね。器用な方はすぐできるんでしょうけど」
――ライセンスにはトーク・ライヴが合っていた。
藤原 「うちには合ってましたね」
――今後なにか新しく始めたいことはありますか?
井本 「いや、これ(トーク・ライヴ)を続けたいっていうのが、デカいですかね。60歳になったら赤いチャンチャンコ着て(笑)。エグいでしょ(笑)。“おい。じじい”ってなるでしょうね、お互い。“こないだうっとうしいじじいがおってさー”“おまえもやろ”みたいな(笑)。そんなんなったらいいすね」
藤原 「不可能なんでしょうけど、可能性がゼロではないというところに望みをかけると、DVDを翻訳して海外で発売して欲しいすね(笑)。海外に出たいとかではなくて、勝手にやっといてくれってことなんですけど(笑)。外国の方が笑う話はあんのかな? ちゃんとニュアンスが伝わるように翻訳してもらったらどうなんのかなとか。興味はありますね」
井本 「あとはそれこそ、これがテレビ番組になったら最高です、僕は」
――“続けていきたい”っていうのは現状維持だけではなくて。
井本 「もちろん、発展もしたいですし。ほんま、これが我々の入り口やと思うんですよ。なんで、やっぱそれをテレビという媒体を使うのが一番、僕らのことをよく知らない人たちにも伝えやすいんで。なればいいなあとは常々」
――ちなみに、そんなお話は……?
井本 「ないす……ね。だから、おもんないでしょうね(笑)。おもろかったら話きてるでしょ(笑)」
――いやいやいや(笑)。おもしろいから続いてるわけで(笑)。
井本 「いやどうなんすかねー(笑)」
藤原 「テレビのリズムでもないですしね、しゃべってる感じが。ひとつの話をダラーっとしゃべってることないと思うんで(笑)。それこそBS、CSぐらいやったらねえ、なんかやらしてくれそうな気はするんですけど」
井本 「深夜帯とかにね、ふとん入って横になりながら“なんかしゃべっとんな”“気づいたら寝てたわ”みたいな(笑)。そんな時間帯でいいですけどね。上手にやってくれるところがあれば。ぜひ、お待ちしております(笑)」
取材・文 / 星 隆行(2015年9月)
ライセンス トーク・ライヴ
LICENSE vol. TALK

2015年10月22日(木)
東京 渋谷 ヨシモト∞ホール

開場 21:00 / 開演 21:30 / 終演 22:30
前売 2,000円 / 当日 2,300円

チケットよしもと 0570-550-100 / Yコード 999-060
チケットぴあ 0570-02-9999 / Pコード 597-712

※未就学児入場不可

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