ヤバい奴らがヤバいものを作って“ヤバくね?”って勝手に盛り上がる――ラッパーKNZZの1stフル・アルバム『Z』登場

KNZZ   2016/03/11掲載
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その方法論、音楽的な違いはあれど、“不良が作る音楽のかっこよさ”は間違いなく人を惹きつける。横紙破りと揶揄されたとしても、枠組みを壊し、暗黙のルールやマナーからはみ出すことを恐れず、“ヤバい”音を追及できるアーティストはやはり数少ない。“悪名高い”アーティストならではの熱や毒、正義感に満ちたギャングスタ・ラップ・アルバム『Z』をリリースしたKNZZに話を訊いた。
――今回のアルバムでは、KNZZさんの無骨な魅力……素朴さだったり、不器用さだったりするような部分を、客演の方やトラックが際立たせているなと感じたんですが、その辺りは意図的なものでしょうか?
「そういう奴らが集まった結果、みたいな感じに近いすね。不器用なんだけど、やりたいことがある奴。やるべくして、使命を持ってやってる感じ。音楽的にはフェアにやってるつもりだから、年齢は関係なく年下でも俺よりヤバい、実力ある奴も周りにはいっぱいいて……適当っすけどね(笑)。超ラフな奴も、くだらない奴もいますけど皆、面白くはありますね」
――比較的シリアスなトーンで作られたアルバムだと思いましたが、楽しくも聴けるのはそういった背景があるんでしょうね。
「けっこう俺、“笑い”がテーマなんですけど(笑)あくまでギャグなんですけどね。キャッチーに言うことが出来れば何でもありみたいな。“殺すぜっ↑”みたいな感じすね」
――ポップですね(笑)。
「ストレス解消の一環で聴いてもらえば。なんか……くだらないことしか言ってないと思うんすよね、俺。意味がないことはないんすけど、普通の人たちの人生には全く関係ない、 “ストリートはこういうことがあるから気をつけろよ”みたいな。ゴシップじゃないんだけど、雑学みたいなノリっすかね」
――いわゆるストリート雑誌的な?
「『実話ナックルズ』というよりは、俺は『実話ドキュメント』的な感じすね。そういう奴のほうが、言ってること面白くないすか? 普通の人と比べて、表現が偏ってるからこそ個性的と呼ばれるというか」
――KNZZさんのアルバムはまさにそのライン、ファミレスやドンキホーテの駐車場みたいなところで大きな音で鳴ってたらほんとにシビれるなと思って聴きました。
「そういうの、いいっすよね。俺自身もシュールなほうがウケが良かったりするんで。客が超いっぱいいるところでやるよりも、“ヤベえ、5人しかいねえ”みたいな」
――逆境で燃えるタイプですか?(笑)
「そうっす(笑)、全員の反応が分かるじゃないですか? そいつら“全員ぶっ殺す”みたいな感じの。誰かと比べてどうこうじゃなくて、自分が好きでやっていることだから……。しょうもないことしか言っていないんすけど(笑)。言いたいことなんて特にないし、やりたいこともないし。ラップに関しては、ムカつくことが原動力なんで。でも結局裏を返すと、“自分がやってねえんだな”ってとこに繋がるんで。だからラップをすることが前向きに機能してる」
――じゃあ、音楽活動されていなかった時は辛かったんじゃないんですか?
「俺、“ラップをやらない”っていうのがちょっと意味分からなくて。いまここで俺がフリースタイルしたらそれはもうラップしちゃってるじゃないですか?」
――そっか、単に誰かに向けて発信していないだけで。ご自身の中ではずっと続けていたんだ。
「もうひたすらでしたね。逆に暇だからそれしかやってないみたいな感じだったんで。そうすね、“暇つぶし”なんですよね。俺、仕事とか全くしたことないし24時間を自由に使えるんで、一生寝てようと思えば寝てられるし、ずっと遊んでようと思えば遊んでいられる。“ラップする”っていうのは時間を有意義に使えるんですよね。このアルバムは俺が一人で出したわけではないので、だからこそ嬉しくもあり……。周りが手伝ってくれたっていうのと、あとは“(世に)出せる曲”っていう」
――出せない曲は、クオリティの問題で出せないんじゃなくて、出しちゃうと波紋を呼ぶから出せないということですよね(笑)。
「まあ、出せない曲のほうが熱いんですけど(笑)。クオリティとかは、逆に言って低ければ低いほど熱いというか、“えっ、これなんだ?”という破壊力だと思うんすよね。そこを目指してますよね。目指せるもんじゃないですけど(笑)。ヤバい奴らがヤバいものを作ったから“あれヤバくね?”って勝手に盛り上がる、ヒップホップってそういうものじゃないですか」
――KNZZさんはいつぐらいから音楽に自覚的になっていったんですか?
「俺がラップしようと思ったのは妄走族が3rdアルバム『PROJECT(妄)』を出した頃かなあ。ハタチぐらいだったかなー。その頃の渋谷とかって人もメチャクチャいて、ラップするよりも有名な奴ぶっちめてたら簡単に有名になれた。“あんときのアイツらしい”って。でもそれは、ヒップホップで成り上がるっていうことにおける政治的な武器のひとつとしての力技、デモンストレーションですよね」
――ラッパーとしての看板のひとつだった?
「例えばディスられてんだったらステージに上がってやり合ったほうがいいじゃないですか。妄走族は、要は“変わんない”っていうか、気取ってない本来の姿のままのことをラップしてるのが衝撃だった。それでイケるんだみたいな。ということは、ヤバいことをぶっかましてやって、それをラップすればイケるってことじゃね?みたいな感じ。俺は環境的にラップするような出来事が起こりまくってるってだけ、ですかね。でも他の人たちからすると、それは普通ではない(笑)そういうことってラップのネタじゃないですか」
――今回収録されている「THIS IS DIS!」も、だいぶシビれました。
「“お前の母ちゃんデベソ”の延長線上? “バーカ”みたいな。ある意味、言い返せないと思うんですよ。なんて言えばいいんだって(笑)」
――確かにそうかもしれない(笑)。真に受けていいのかってとこですよね。
「そんな深く考えてやったわけじゃないんですけど、ノリっすね。あんまムカついてないんで、要は(笑)」
――Beefを相手のスタジオでやるってことは、その場で返してもいいってことでもあるし。
「その後もずっといいぜ、ってみたいな(笑)いつでもいいよ?と。俺はあんまり周りの目を気にしてないっていうか言った結果、周りがザワついてんの見て“あ、ヤベえ”って(笑)。曲名“DIS”で、相手のスタジオで録って、名前も出して、だけど原因は特にない(笑)」
――原因ないんですね?!(笑)
「流れで。この状況でこれって“面白くね?”って(笑)。音楽でやってる訳ですしね」
――音楽を聴き始めたのはいつ頃なんですか?
「小・中学生のころはジャーマン・メタル聴いてましたね。Helloweenとか。兄ちゃんが2人いて、ひとりはヒップホップが好きで、もうひとりはバンドが好きで。Suicidal Tendenciesも兄ちゃんが聴いてて……DOGTOWNのトレーナーとかいまだにオリジナルを持ってますね」
――音楽的には90年初頭の流行りがスタート?
「そうすね、あとはPanteraとか。もうちょっとするとミクスチャーかな、中3の頃はSepulturaSoulflyを聴いてました。この前CD掘り出してきて、サンプリングしようと思って」
――それ面白いからぜひやってください(笑)。
「最近やってますね。シンフォニック・メタルの音源とかもサンプリングしてますよ。なんか俺、壮大な音楽が好きで。片っ端から聴いたことのないもの聴こうと思ったら出会ったんですよね。もう“シンフォニック・メタル”って意味は分かんねーんだけど(笑)フィンランド、ノルウェーに完全にくらってますね。だからよりコアな感じになってってる」
――ブラック・メタルはどうですか?
「あっ、写真集『Norwegian Black Metal』を持ってます。十字架をこれ見よがしに持ってたり(笑)」
――実際の意味は別として、外国人版“中学生が考えるとっても悪くて怖い人”(笑)。
「そうそうそう(笑)。なんであいつらヴァイキングになるんすかね? でもデカい刀持って山にいますよね? 俺あれの定義がちょっと分からなくて。ギャグじゃないすか? ギャグのセンス超高いと思うんすけど。ヴァイキングになっちゃうって相当ヤバくないすか(笑)」
――世間では比較的シリアスに受け止められてます(笑)。ある意味ヒップホップ・スターみたいなものと言えるかも。
「あ、マジっすか。50centみたいな。そう考えると分かりやすい」
――いまでもヒップホップ以外の音楽もチェックしてるんですね。
「そっすね、メタルなんかのCDも買いますし。でもヒップホップは基本的に好きなものだけ、外国ものは基本的にNYしか聴かないんで。東京生まれ東京育ちだからこそヒップホップが好き、みたいなところもあるんで。……もっと面白い奴がいたらいいですよね、俺が面白いとかじゃなくて皆がつまんないだけっぽいすね」
――枠なのか、どこかからはみ出るのが嫌な方が多いかもしれないですね。
「ですねー。もうそんな奴は引退。引退したほうがいいけど、そうすね、切り捨てるのは違いますね。でもこう……なんか。俺は中学の時にもうヴァイキングなんで(笑)」
――(笑)それぐらいのオリジナリティってことですよね。
「そうです。俺はヒップホップであれば今のこの状態で、メタルだったらヴァイキングかな(笑)」
――自分のストーリーをどう表に出すのかということでもあるし。
「そうそう、分かりやすく構築してったほうが見やすいでしょうし、サイヤ人から超サイヤ人になったきっかけとかは分かりやすいほうがいいし。俺がなぜヴァイキングになったかも(笑)」
取材・文 / 服部真由子(2016年2月)
MONSTERBOX
2016年3月11日(金)
東京 池袋 bed
開場 / 開演 23:00 〜 5:00
当日 2,500円 / with flyer 2,000円(+ 1Drink)


GUEST LIVE: RUMIxJOMO as Ill Clinton
RELEASE LIVE: 舐達麻
LIVE: 山田マン / KNZZ / BLYY
PICK UP LIVE: SHAKU
OPENNING DJ: 山田マン
DJ: DOMMON / K-SUKE / 244 / 栄慎
DANCE: ZULU-MK MASTERZ / gang dogge
FOOD: CHAMPION


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