Kalafinaの“変わらないもの”――沸点を保ちながら歌い続ける「blaze」

Kalafina   2016/08/26掲載
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 NHK「SONGS」に出演、さらに〈めざましクラシックス サマースペシャル2016〉〈情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'16〉などのイベントに参加するなど、活動の幅を広げ続けているKalafinaからニュー・シングル「blaze」が到着。TVアニメ「アルスラーン戦記 風塵乱舞」エンディング・テーマとして制作されたこの曲は、メンバー3人の美しく、ダイナミックなコーラス・ワークを軸にしたアッパー・チューンに仕上がっている。活動8年目を迎えて、さらに充実した時期を迎えている3人にシングル「blaze」の制作、そして、初のアリーナ・ライヴ〈Kalafina Arena LIVE 2016〉について聞いた。
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――地上波の音楽番組、夏フェスへの出演など、最近はさらに活動の幅を広げていますね。
Keiko 「そうですね。谷村新司さんをはじめ、いろいろな方とコラボレーションさせていただいたり、新しいことにも挑戦させてもらって。高嶋ちさ子さん(めざましクラシックス サマースペシャル2016)、葉加瀬太郎さん(情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'16 / 大阪公演)というヴァイオリンの2大巨匠と共演させていただいたのも、メディアに出させてもらったことでつながったのかなって」
Hikaru 「新しい場所に行けば、学びもたくさんあるんですよ。Kalafinaを知らない方々の前で歌わせてもらうと、受け取り側の反応もいつもとは違っていて。それは“どう伝えたらいいか?”ということを考え直す良い機会だし、今後に活かしていきたいという気持ちもありますね」
Wakana 「夏のイベントに関しては、ホールと野外というふたつの場所で歌わせてもらえたのも良い経験になりました。ホールのときはふだんクラシックを聴いていらっしゃる方にKalafinaを見ていただけるチャンスだったと思うし、実際、私たちのラジオなどに“初めて聴きましたけど、とても素敵でした”という声をいただくこともあって。情熱大陸は野外だったので、暑い中、すごく楽しそうにしているお客さがたくさんいらっしゃったんですよね。こういうラフな雰囲気も素晴らしいなと感じたし、まったく違う音楽の楽しみ方を教えてもらえたなって」
――その結果、Kalafinaの知名度も確実に上がっていると思います。そしてニュー・シングル「blaze」がリリースされました。Kalafina独自の世界観がさらに更新された楽曲だと思いますが、みなさんはどんな印象を持っていますか?
Keiko 「三声で勢いよくスタートする楽曲なのですが、最初にデモを録ったときから“前に進んでいく情景が思い浮かぶような曲だな”という印象を持っていて。その印象のまま、本番のレコーディングでも歌えたんですよね。曲によってはもっとドラマティックに変化することもあるし、1曲のなかに2曲分くらいのメロディが入っていることもあるのですが、〈blaze〉の場合はそこまで大きな展開はなくて、“変わらない道を淡々と進んでいく”という印象があって。それがそのまま楽曲にメッセージ性につながっているんですよね」
Hikaru 「真っ直ぐで力強い曲ですよね。〈blaze〉は“炎”という意味なんですが、プロデューサーの梶浦(由記)さんからも“心のうちに炎をずっと燃やしているイメージなんだよね”という話があって。〈僕らは何度だって 胸に灯す炎の先へ 歩き出してた〉という歌詞があって――最後だけ〈走り出してた〉になるんですが――常にスタート地点であるという自分との向き合い方を含めて、大きな爆発というよりも、同じ熱量で抑制しながら歌い続けることが大事だったんです。沸点を保ちながら歌うのは、少しハードでしたね。上を見続けながら音楽活動を続けていく大切さを改めて感じた曲でもあります」
Wakana 「燃え続ける気持ちを持ちながら走っていくためには、勇気や信念が必要だと思うんです。歌詞のなかに〈思い通りに行かないことが 君の心の 扉を開く〉という言葉があるんですが、“こうしたいけど出来ない。どうにかしたい”という気持ちはみんな持っていると思うし、それを持ち続けること自体が大事なんじゃないかなって。歌うことも同じですよね。私たちが活動できるのはお客さんがいてくれるからだし、みなさんの気持に応えられるように熱量を持って歌い続けないといけないなって。個人的にはメンバーのふたりに助けられてる部分もたくさんあって、そのことも〈blaze〉の歌詞から感じましたね」
――Kalafinaはいまも走り続けているわけですが、この先に実現したい景色というものはあるんですか?
Keiko 「そうですね……。活動を始めた頃は“Hikaruの故郷である富山でライヴをやりたい”“Wakanaが生まれ育った福岡で歌ってみたいね”ということだったり、“いつかはベスト・アルバムを出したいね”ということも話していましたが、それをひとつひとつ実現させてもらう中で、いま振り返ってみると“それを目指していたわけではなかったんだな”と思うんです。目の前のことに誠心誠意、心を込めて向き合っているなかで生まれた奇跡だったのかもしれないな、と。それはいまも同じで“こうなりたい”“あの目標を達成したい”と明確に掲げているわけではなく、大好きな歌を歌い続けることが小さくて大きな目標なんですよね。もうひとつは、お客さんと音楽を共有している幸せな時間を大切にしたいということ。どんなアーティスト、どんなミュージシャンの方も“ステージから去りたくない”と感じたことがあると思うんですけど、それは私たちも同じで。あの幸せを体験したら、もっと大きな景色を見たいというよりも、“これを続けていきたい”と思うのが自然じゃないかなって」
初回生産限定盤A
初回生産限定盤A
初回生産限定盤B
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通常盤
通常盤
――カップリング曲の「夏の朝」は郷愁を誘うミディアム・バラードです。
Hikaru 「夏のフワッとした開放感とちょっと寂しい感じが両方あって、それがノスタルジックな曲調に現れていると思います。メインのヴォーカルを取っているのはWakanaなんですが、私はそれを聴いたうえで“童心に戻るような、幼い感じを出したい”と思って。無垢な楽しさ、少女のイメージですよね」
Wakana 「少女らしさもあるし、少し大人っぽい雰囲気もあって。(〈夏の朝〉の主人公は)そういう矛盾が生じる年代なんだと思います。レコーディングのときはナチュラルな感じを出したいと思ったので、力強さではなく、できるだけナチュラルに歌うことを意識しました。“3人で歌えばこうなる”というイメージも頭のなかにあったんですが、出来上がってみると、自分が思っていた以上に色が付けられた印象でしたね。この曲はすごくシンプルだから、ひとりひとりの声がよく聴こえると思うんですよ」
Keiko 「短いスパンのなかで、3人がリレーしながら歌いますからね。Wakana、Hikaru、私とつながって、曲の世界観を一緒に作っている感じというか。三声のハーモニーはないけど、しっかりと夏の朝の情景を描けていると思うし、レコーディングにもスッと入り込めました。こういう曲を歌うと、いまの3人のヴォーカル力や表現が良く見えるし、それがお互いに嬉しかったりするんですよね。細かいテクニックもそうだし、感情の乗せ方もそうだし」
――歌の表情も日々変化している?
Keiko 「自然な変化はあると思いますけど、基本的には変えないようにしているんです。音楽性の軸もそうですが、Kalafinaは“変わらないもの”を大事にしているので。変わらないもの、ブレないものあってこその枝葉だと思うんですよね。3人の歌に関しても、それぞれの役割を掘り下げることで初めて、それぞれのソロにつながっていくんじゃないかなって。Kalafinaとしての役割を果たさない限り、ソロに意識を向けても伸びないと思うので」
――その意識は、Kalafinaが始まったときから一貫してるんですか?
Keiko 「私たちが意識するというよりも、まず、梶浦さんが音楽プロデューサーとして常にいてくださってますからね。Kalafinaの音楽にはブレがないし、私たちが“どうしよう”と悩んだことはないです」
Hikaru 「Kalafinaとしての枠組みは変えずに、その中でどう表現力を向上させていくかということですね」
Wakana 「梶浦さんの音楽にはいつもワクワクさせてもらっているし、私たちも“梶浦さんがワクワクするような歌を歌いたい”というシンプルな気持ちなんです。メンバーに対してもすごく信頼感があるんですよ。友達とも家族とも違う特別な愛情があるというか。常に話し合って、相談しているんですけど、それもすごく大事だと思います。それがないとお互いの気持ちも更新できないですから」
Keiko 「それが8年半続けてこられた理由かもしれないですね。お互いの結束がバラけてしまったら、“この音楽性は違う”ということになったかもしれないし」
――いわゆる方向性の違いですね。
Keiko 「そうですね(笑)。3人ともヴォーカリストだから、もちろん自我もあると思うんです。でも、共通して梶浦さんが作る音楽が好きですからね。梶浦さんのメロディを聴いて熱くなったり、涙が込み上げてきたり、いつも五感を刺激されていて。梶浦さんに“この3人にいろんな世界を歌ってもらいたい”と思ってもらいたいんですよね」
Kalafina
――9月に行なわれるアリーナ・ライヴ〈Kalafina Arena LIVE 2016〉についても聞かせてください。武道館のライヴは2度目になりますね。
Hikaru 「はい。前回の武道館(2015年2月28日、3月1日)が終わったときに3人で“武道館という響きを掴みに戻りたい”と話していたんですが、こんなに早く実現して(笑)、嬉しいですね。神戸ワールド記念ホールでの単独ライヴは初めてなので、すごくワクワクしてます。広い会場だし、席によってはお客さんが遠くなることもあると思うので、そこも含めて演出を考えたいですね」
Wakana 「春のアコースティック・ライヴ、上海でのライヴ、夏のイベントと途切れることなくライヴが続いているのもいいなって思います。アリーナではもっといいライヴが見せられるんじゃないかなって」
Keiko 「ずっと緊張感は持続してますね。昨年出させていただいた5枚目のアルバム『far on the water』のタイトルを掲げたツアーを2015年から2016年にかけて開催したのですが、そのツアーは視覚的というか、いろいろな色彩を楽しんでもらうような作り込んだ内容だったんです。そのツアーを経て、もっと想像を膨らませてもらえるような演出にもトライしながら、目を閉じて、五感を研ぎ澄ませながらハーモニーをシンプルに感じてもらえるところも作りたいと思っていて。その両方がいまのKalafinaの音楽だし、すべてをつなげて音楽の旅になればいいな、と」
――現在のKalafinaの表現が多面的に体感できるライヴになりそうですね。まさに2016年の大イベントじゃないですか?
Keiko 「ただ、やっぱり日々の積み重ねが大事だと思ってるんですよ。1日1日がスタートというタイプというか。唯一、みんなの念頭に置いているのは10周年のアニバーサリーかな。それが初めてかもしれないですね」
Hikaru 「ふだんの会話のなかで“こういうことやってみたいね”って話してるくらいですけどね。“これは10周年に取っておこう”とか」
Keiko 「そうだね(笑)」
――Kalafinaとしてやれることもどんどん増えてますからね。
Keiko 「本当にそうですね。梶浦さんにも言っていただいたんですよ、“やれることが増えてきたね。だからこそ、ひとつひとつの選択が大事になってくるよ”って。これまで丁寧にお客さんと一緒に歩いてきたので、それを壊したくないんです。先ほども言いましたけど、音楽面でも活動においても“変わらないもの”を大事にしながら進んでいきたいと思っています」
取材・文 / 森 朋之(2016年8月)
Kalafina Arena LIVE 2016
・2016年9月10日(土)
兵庫 神戸ワールド記念ホール
開場 17:00 / 開演 18:00
全席指定 7,900円(税込)
お問合せ: キョードーインフォメーション 0570-200-888
※未就学児童入場不可

・2016年9月11日(日)
兵庫 神戸ワールド記念ホール
開場 15:00 / 開演 16:00
全席指定 7,900円(税込)
お問合せ: キョードーインフォメーション 0570-200-888
※未就学児童入場不可

・2016年9月16日(金)
東京 日本武道館
開場 17:45 / 開演 18:45
全席指定 7,900円(税込)
お問合せ: キョードー東京 0570-550-799
※未就学児童入場不可
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