継承しながら、自分のスピリットを――特別対談: THE SKATALITES × THE SKA FLAMES

ザ・スカタライツ   2016/10/20掲載
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 世界にスカという音楽を広めたオリジネイターであるTHE SKATALITESと、日本にスカという音楽を定着させたオリジネイターであるTHE SKA FLAMES。それぞれ長い歴史を持つ伝説的なバンドでありながら、THE SKATALITESは10月2日に『PLATINUM SKA』を、THE SKA FLAMESは10月19日に『Turn-up』をリリース。形を変えながらも、今なお精力的な活動を続けています。

 そんな彼らが、10月8日に行なわれた東京・渋谷 CLUB QUATTROでのライヴで久々の競演。ライヴ当日、リハーサルの直後という貴重な時間に対談を敢行しました。THE SKATALITESからは唯一のオリジナルメンバーであるLester Sterling(A-sax)、Ken Stewart(key)、Azemobo"Zem"Audu(T-sax)が、そしてTHE SKA FLAMESからは宮崎研二(g)、中須彰仁(per)、石川道久(A-sax)が参加。宮崎が持参した大量のレコードをかけながら、“ファンの集い(中須談)”にも似たなごやかな雰囲気で進んだ対談をお楽しみください。
THE SKATALITES × THE SKA FLAMES
――宮崎さんがお持ちになられたSKATALITES初来日の際の写真がちょうどありますし、そのときのお話から伺おうかと思います。
宮崎 「1989年だよね。今はなき汐留PIT IIで行なわれた伝説の初来日公演。先日亡くなった大御所のPrince Buster、ジャマイカ音楽の最大功労者のJackie Mittoo、さらにRoland AlphonsoやGladstone Andersonたちがいて、ここにいるLester Sterlingも、オリジナルSKATALITESとしての初来日だった。日本のスカ・シーンに大きな影響を与えた、今でも語り草になってるライヴ。2日間開催の両日ともにSKA FLAMESが前座として出演したんだけど、7000人のお客さんが見に来ていて、熱気まんまんで。このときのSKATALITESのライブは、LPやCD(『スカ・グルーヴ・イン・ジャパン』)としても残っているよね」
中須 「この写真に写っているドラマーは誰なんだろう?」
Ken 「これはWinston Grennanかな」
石川 「KenさんがJackie Mittooと一緒にキーボードを演奏している89年の映像がYouTubeにあがっていたのを見たんだけど、あれはなんの映像なんですか?」
Ken 「日本に来る直前の演奏だね。来日公演と同じくらいの時期にBunny Wailerのアメリカ・ツアー(『Liberation』ツアー)が開催されていて、そのフロントアクトとして回っていたときの映像じゃないかな。だから、当時SKATALITESは2つ同時にツアーをやっていたんだ。LesterとJackieとRolandは、そのツアーから一時的に離れて、日本へとやってきた。僕は日本には来られなかったんだけど、よく覚えているよ」
宮崎 「へー!それは事件だね(笑)。2つのSKATALITES!」
中須 「『RETURN OF THE BIG GUNS』にはJackie Mittooが参加してないんだけど、この頃はカナダにいたのかな?」
Ken 「『ROLING STEADY』で参加しているメンバーが、本当の“リユニオンSKATALITES”なんだ。『RETURN OF THE BIG GUNS』ではJohnny“Dizzy”MooreもJackieもいないんだけど、それは当時のマネージャーといろいろあって……」
石川 「仲が悪かったってことですかね(笑)。それは初めて聞いた」
Ken 「今流れているこの曲(〈MEET TO COME〉)は、SKATALITESのなかでもお気に入りの曲のひとつだよ。スロウだけど、すごくいい」
宮崎 「このアルバム、すごくいいよね」
中須 「〈PASSING THROUGH〉のRolandのソロがすごく好きなんですよ。って、ひとつのアルバムで何時間も話せちゃうね」
石川 「まだ80年代の話ですからね(笑)」
――近年でいうと、2014年のフジロックでの競演(※)が記憶に新しいですよね。あのときは、なにかお互いに話をしていたんでしょうか?
※〈FUJI ROCK FESTIVAL '14〉の3日目の〈FIELD OF HEAVEN〉では、SKA FLAMESとSKATALITESが続けて登場。先の出演となったSKA FLAMESは「Phoenix City」を演奏し、SKATALITESのステージのアンコールでは、SKA FLAMESのメンバーとともにパフォーマンスを披露した。
宮崎 「いや、とくに打ち合わせがあったわけじゃなくて、突然“やるか!”みたいな流れになって。“みんな来いよ〜”てな感じで。スカのライヴでは、最後にセッションするっていうスタイルができてきた」
中須 「いまのスタイルのSKATALITESとは初めての競演だったんだよね。でも、SKATALITESの演奏の流れをしっかりと引き継いでいた」
宮崎 「メンバーは変わってるんだけど、演奏はほとんど変わってない。新しいんだけど、伝統をしっかりと継承してるからすごいなと」
中須 「今回のアルバムを聴いていても、やっぱりSKATALITESなんだよね。ジャマイカンじゃないと、本当はそういう演奏ができないはずなんですよ。でも、SKATALITESを継承しているメンバーたちは、変わらない演奏をしてる。それにすごく感動しましたね。だから遠く離れた日本では僕らが、ジャマイカの素晴らしい音楽を勝手に継承しようと思ってます」
Zem 「すごいね。そういわれるとすごく嬉しいよ」
石川 「『PLATINUM SKA』に関しては、後半に収録曲のダブ・ヴァージョンが入っていて、それはKing Tubbyとかの時代、70〜80年代の作り方なんですよね。そういう意味でも、伝統をしっかりと継承しているなと感じます」
宮崎 「SKATALITESは、世界でいちばん重要なバンドかもしれない。スカだけじゃなく、ロックステディやレゲエを生み出し、それらはダブを生み出す起点にもなっているし、ポピュラー・ミュージックやパンクにも影響を与えているんですよね。前に共演した元THE CLASHJoe Strummerも好きだっていっていた(※)
※2001年、Joe Strummer & The Mescalerosの東京・赤坂BLITZ公演の前座を、Joe Strummer本人の希望で SKA FLAMESが担当した。
――SKATALITESにとって、SKA FLAMESはどういう存在に映っているんですか?
Ken 「日本で初めてこういうことをやったバンド。すごくオーセンティックなジャマイカン・スカをやっているよね」
宮崎 「僕らは孫みたいなもんですよ」
――たしかに、“SKA FLAMESはSKATALITESの直径だ”っていうことをよくいわれますよね。
Zem 「正しいと思うよ。ジャマイカン・スカっていうのは、ほかの音楽とは違うスタイルがある。だから、そういった部分を継承しながら演奏していくっていうことが大事なんだ。それをしっかりとやっているSKA FLAMESも、ジャマイカン・スカの伝統の一部になっていくんじゃないかな」
Lester 「その伝統っていうのは、1959年にRico Rodriguezがやっていたスタイルが基になっているんだ」
中須 「やっぱり、はじまりはRicoかぁ」
――SKA FLAMESが95年にリリースしたアルバム『DAMN GOOD』には、LesterをはじめLaurel Aitken、Roland Alphonsoが参加していますよね。あれはどうやって実現したんですか?
中須 「彼らがツアーで日本に来ていて、野音の楽屋でお願いしました。土下座で、お願いしますって(笑)」
宮崎 「Laurel Aitkenとはもともと約束してたんだよね。日本にきたら一緒にレコーディングしようって。1987年の〈MODS MAYDAY〉にGaz MayallTHE POTATO 5を連れてきていて、スペシャル・ゲスト・ヴォーカルがLaurel Aitkenだった。彼らはそこで初めてSKA FLAMESを目撃することになるんだけれど、もう大騒ぎになって。“お前たち!なんてすごいんだ!目を閉じれば伝説のSKATALITESが演奏しているようだ!”“なんで日本にSKATALITESのようなバンドがいるんだ!完璧じゃないか!”“いますぐ一緒にレコーディングだ!”とLaurelが騒ぎ出して……言われたとおり、レコーディングするためのスタジオを探そうと思って、10円玉を集めて芝浦インクスティックの公衆電話から電話しまくったんだけど、さすがに今日の今日では無理だった(笑)。だから、いつか一緒にレコーディングしよう、と約束してたの。結果的に実現したのは7年後だったけど、スタジオでは“レジェンド”から直接いろんなことを教わりました。ちなみに、その約束の実現の前にGaz Mayallのレーベルからデビューすることになって『SKA FEVER』をリリースしたんだけど、自分たちで六本木WAVEに買いに行きました。輸入盤だと思われたみたい(笑)」
中須 「話を戻すと、このアルバムのタイトルになっている“DAMN GOOD”っていう言葉は、Roland Alphonsoが言ってくれた言葉なんですよ」
宮崎 「そうそう。“めっちゃいいよ!”っていう意味でね」
中須 「Rolandは4曲吹いてくれたんですけど、スタジオへの移動中のおれの車のなかで曲を聴かせていて。たくさん録音してもらいたいから、これもって言ってすぐに次の曲を聴かせたら怒られたんですよ。集中して聴きたいからって。でもLesterは、いつでもいいよっていう感じで。(〈No more Time〉を聴きながら)この曲は最初のソロがRolandoで、2回目のソロがLester、バックはSKA FLAMES! すごくない?」
中須 「最初に〈Rip Van Winkle〉を車の中で聞いてもらったら、“DAMN GOOD, DAMN GOOD!”ってすごく褒めてくれてました。“この曲は、石川のソロがとても良いから俺は吹かない”って言ってるよと、同行してくれていたJason Mayall(Gazの実弟)が通訳してくれて。Lesterも同意だって。石川くんの演奏をとても褒めていました。それはいまでも変わってない」
――タイトルにはそんなエピソードがあったんですね。
中須 「Gazは、“Lester Sterlingはスカそのものなんだ! あの特別なアルトサックスのフレーズを聴いたらわかるだろう。あれがスカなんだ。だから〈Lester“SKA”Sterling〉と呼ぶんだよ”って常々言っていましたね」
Lester 「……(『DAMN GOOD』を聴くも、覚えていない様子)」
石川 「何回もCD渡してるはずなんですけどね(笑)」
中須 「何千、何万回ってレコーディングしてるからね。彼らは、録音するのが仕事。録音したものを聴くのは、リスナーである僕らだから。……あの、Lesterの吹いている曲で、僕がいちばん好きな曲を流してもいいですか?(曲を流す)」
Lester 「これはなんていう曲?」
中須 「〈Candle Lights〉!」
石川 「本人は全然覚えてないんだ(笑)」
中須 「もうファンの集いだね(笑)。対談にはならないですよ。彼らと対談なんて、そんなおこがましいことはできない。僕らは、彼らの演奏を体で感じて、伝えていくことしかない。本当に、僕らは子供、孫です」
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――SKATALITESという伝統はこの先も長く続いていくと思いますけど、彼らに望むことはありますか?
中須 「彼らがやっていくことに対して、望むことなんてないです。僕らが真似できていることがあるとすれば、続けていくっていうことだけです」
宮崎 「ずっと続いていくなかで変化もするだろうけど、本質は変わらないからね。すごいですよね」
――伝統を継承しながら続けていくのに必要なことというのは、どういう部分なんでしょうか?
Zem 「とにかく、ひとつずつショウをしっかりとやっていくことだけ。それから、メンバーからしっかりとスタイルを学んでいくこと」
Lester 「おれが教えてるんだよ(笑)。John Coltraneだって誰だって、サックスから学んでるんだ」
(一同笑)
Zem 「そうやって伝統を学びながら(笑)、自分のスピリットも入れていく。それを、楽しみながら世の中に広めていければいいな、と思ってるんだ」
宮崎 「継承しながら、自分のスピリットを。それはおれたちも一緒だね」
中須 「とにかく、ジャマイカンではない彼らが、SKATALITESというバンドを続けてくれているということに、とにかく感謝を伝えたいですね」
宮崎 「うん。おれたちはSKATALITESを本当に尊敬しているから」
Ken 「昔と違って、今だったらデータでやり取りすることも可能だから、もしコラボレーションできることがあったらぜひやりたいね」
中須 「ぜひ、お願いします!! 光栄ですね。でも、今までは僕らがオファーする側だったけど、もしSKATALITESからのお願いがあったら、それもやってみたいね」
Zem 「Tonight! 今日のステージでのセッションをまずお願いしたいな」
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取材・文 / 木村健太(2016年10月)
通訳 / Junko Nakayama
Live Photo / Isao Amano
THE SKA FLAMES 『Turn-up』

THE SKA FLAMES
『Turn-up』

2016年10月19日(水)発売
POCS-1502 2,593円 + 税

11年ぶり(!)となるスタジオ録音盤。彼らならではの流行に左右されないスカ・ミュージックはもちろん、スカの基になったソウルやバラード、R&B、カリプソなどの要素や和のテイストもシェイクされた、“聴かせる名曲”ぞろいの一枚。

THE SKATALITES 『PLATINUM SKA』

THE SKATALITES
『PLATINUM SKA』

2016年10月2日(水)発売
PLS-003 2,300円 + 税

結成50周年を迎えてから初のアルバム。Lloyd Knibb生前最後のレコーディング曲やDoreen Schafferをフィーチャーしてのロックステディ・クラシック、Rico Rodriguezへ捧げたナンバーなどを収録。
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