これまでにソロ作を1枚、ユニットで2枚のアルバムをインディで発表しつつ、YA-KYIMやMay J.、そしてマボロシといったメジャー・アーティストの作品への客演参加を経て、満を持してシングル「Big Soul」でソロ・メジャー・デビューを果たすTARO SOUL。
「(他アーティストへの客演は)去年だけでも20曲ぐらいやってますね」と話すように、もしかしたら彼自身の楽曲は知らなくても、彼が参加した楽曲は耳にしたことがあるというリスナーも多いだろう。
「ポップなR&Bモノからハードなヒップホップまでいろいろ参加させてもらったんで、ホントに修行でしたね。その経験で、自分が適応できるトラックもやりながら増えてったし、“これが出来るんだ”って自分でも発見がありました」
そして、それだけの幅を作れたのは、歌とラップをシームレスに繋げることのできる、いわば“ラップするように歌い、歌うようにラップできる”という彼独特のソウルフルなラップ・スタイルによるところが大きいだろう。ただ、そのスタイルを本人が躊躇なくできるようになったのは、ここ一年ほどだと言う。
「インディ時代の
『SOUL SPITS』の頃は、“自分はラッパーだから、歌ってると思われたくない”って思ってましたね、スタイルは今と近いんですけど。ただ、それは自信がなかったからですね。今はいろんな経験を積んで、自分のスタイルを自分で信用できるから、もし“男性シンガー”って思われててもいいし、そのイメージを上手く壊せれば面白くできると思うんですよね」
そして、メジャー第一作となる「Big Soul」は、しっかりとヒップホップのコアな部分を残しながら、表面にはカラフルな陽気さをまぶし、非ヒップホップ・リスナーにも届きやすい作品となった。ただし、本作はポップな仕上がりではあるが、“ラップがあってサビが歌で”というような、いわゆるJ-POP的なモノではなく、至極真っ当なヒップホップ・イズムが貫かれており、彼の立ち位置の面白さが楽曲にも表われている。
「自分と同世代がしっかりストリート的なヒップホップで格好いいモノを作ってるし、もともと自分もそっちに近いところにいたから、どうしようもなくヒップホップな人間だって自分で気付いてるし、それを越えた何かをしたいなって」
そしてそれは、彼の音楽的な原点とも近づいてくる。
「もともと子供の頃から
マイケル・ジャクソンに憧れてきて今に至るわけだから、そのレベルまで行きたいんですよ。有無を言わさないような、純粋に格好いい音楽を作りたいんです。ただ……でかいこと言ってしまって正直ビビってますけど(笑)」
これまでには存在しなかったラップ・スタイルで彼はどのような新しい道をメジャーで切り拓いていくのか、ゴリゴリのB-Boyがメジャーへどのようなエフェクトを与えるのか、興味は尽きない。
「メジャー・デビューだけどこれまでの道筋も踏まえた途中経過って思いはありますね。“これからまだ他とは違うことができるよ”ってところを見せていきたいし、今まではヒップホップ・リスナーに向かってきたから、そうじゃない人たちが自分の音楽にどう反応してくれるのかは凄く興味がありますね」
取材・文/高木晋一郎(2004年4月)