エマーソン北村が演奏・録音・発売にいたるまですべてを手がけたひとりアルバム、通称“エマソロ”。2014年にリリースされて高い評価を得た“エマソロ”での1stアルバム『
遠近に』に続き、2016年12月、待望の第2弾アルバムがリリースされた。タイトルは『ロックンロールのはじまりは』。
なにやら謎かけのようでもあるタイトルだが、音楽も文学も自然と寄り添っている感覚は、まさにエマさんならではのもの。そして、その音楽と共鳴するパッケージ・デザインを『遠近に』に続いて担当しているのが、グラフィック・デザイナー / イラストレーターとして活躍する
惣田紗希。
キセルのサポート・キーボードとして長く活動するエマーソン北村と、
ceroのアルバムやシングルでのジャケット・デザインの多くを手がけてきた惣田紗希。
カクバリズムを接点にした交流が以前からあったのだろうと想像してしまうが、じつは2人の面識は『遠近に』での共同作業がはじめてだったという。
年齢も親子ほど違う2人が、パッケージ作りを通じて感じていったそれぞれの思いとは?そして新作『ロックンロールのはじまりは』に込めた思いとは?顔なじみのようで馴れ合いにはならない2人に、作品制作のバックグラウンドや音楽を通じて見える世界について語ってもらった。
エマーソン北村(以下 北村) 「そもそも僕から“今回、惣田さんと対談したい”とリクエストしたんです。
惣田紗希(以下 惣田) 「私、あんまり音楽のことは話せないですけど、いいんですか?」
北村 「ぜんぜんいいんですよ(笑)。そもそも自分のCDのデザインをお願いしたときも、“あえて音楽の話をしないでデザインしてもらいたい”という気持ちもあったので仕事のやりとりしかしてなかったし。今まで惣田さんとしゃべったことがない話をしてみたいなと思ったんです」
――そもそもエマさんの前作『遠近に』(2014年)を惣田さんがデザインしたのが2人の仕事としては最初です。エマさんはデザイナー、イラストレーターとしての惣田さんについてはご存じでした?
北村 「いいえ。『遠近に』のジャケット・デザインを探してくれる人を探すなかで、カクバリズムの角張(渉)くんから何人かの名前を挙げてもらって。その人たちの作品をいろいろと見て、惣田さんにお願いしたいと思ったんです」
惣田 「私にも最初は角張さん経由で依頼が来ました。エマーソンさんの名前は知っているけど、だいぶ歳上で、音楽業界も長い方なので、“なんで私みたいな小娘に?”って思いました(笑)」
――エマさんにとっては、惣田さんの作品のどこが決め手だったんですか?
北村 「最初に作品を見たのは、ceroのジャケットでした。たぶん、シングルの『
Yellow Magus』(2013年)だったと思います。あと、惣田さんに会う前に自分でもCDショップでceroのジャケットを見たり下調べをしているときに、たまたま惣田さんが白金のフリースペースで俳句の展示(グループ展〈ホットリーの俳句道〉 2014年3月 東京・白金高輪
hottory)をやっていたんです」
惣田 「やってました!」
北村 「なにか多少はデザインの展示もあるだろうと思って、ひとりで出かけていったんですよ。そしたら惣田さんの作品としては俳句がひとつ飾ってあるだけで、ぜんぜんデザインの参考にならなかった(笑)。でも、その俳句がおもしろかったんですよ。他の人が五七五で書いているなかで、惣田さんはちょっと違ったんです」
惣田 「わりと自由律みたいな感じだったかも。“風が水面を揺らすだけでこんなに美しいかたちがあるんだから、私たちが無理してなにか作ることないんじゃないか”みたいな句でした」
北村 「うん、そういう句でした」
――じゃあデザインというより、俳句が決め手だったんですか!
北村 「そうですね。決め手というより、どういうデザインをするのかわからなかったから、よけいに印象に残ったのかもしれないですけど」
――エマさんが惣田さんについて調べたように、惣田さんもエマーソン北村とはどんなミュージシャンか調べました?
惣田 「キセルでキーボードを弾いているということでカクバリズムに関係があることとか、DJをやる人や音楽が詳しい人はみんな知っている。そういう認識でした。でも、歌詞がない音楽なので、“エマさんの音楽はなんていう音楽なんだろう?”って思ってました。いまだによくわかってないかも(笑)。でも、それもじっさいにお会いしたときにちゃんとお伝えしました」
――逆に言うと、惣田さんの感じた“わからなさ”も重要だと思うんですよ。エマさんが長いキャリアでやってきたことが変な重荷になってないということでもあるし。僕も『遠近に』が出る1年前からエマさんのソロが“スカやロックステディを基本にしたオルガン”というスタイルから、ちょっと違ったジャンルレスなサウンドに変化しているというのは感じてました。南池袋にあったミュージックオルグで、NRQと対バンされたことがあって(2013年3月2日)、そのときに〈橋からの眺め〉(『遠近に』収録)とかをもう演奏されてた記憶があります。 北村 「やってましたね」
――日本語のタイトルで、しかもインストなんだけど映像的なイメージを持つ曲で。
北村 「そういう変化って、自分でもぜんぜんわかってなかったんです。惣田さんが、僕がやってる音楽がわからないってよく言ってたのは、どういうジャンルかわからないって意味だと思うんですけど、それでぜんぜんよかった。むしろ“それでお願いします”みたいな」
惣田 「たしかに、そう言われました」
北村 「今に至るまで惣田さんには、レゲエとか
ジャッキー・ミットゥとかの話は一回もしてないですよね(笑)。そういう知識がなくても、自分の感じたことでデザインしてくれる人だと思ったし、『遠近に』ではそれがうまくいきそうだと思ったんです」
惣田 「デザインするにあたっては、エマさんからは、
さかなの
西脇(一弘)さんのイラストを使いたいという提案があって、絵が大量に送られてきたんです」
北村 「僕と西脇くんの付き合いが長いんで、こういうソロ・アルバムを自分が作るときは彼に頼もうというのはかなり早い段階で決めていました。西脇くんはアルバムのラフミックスを聴いて描いてくれたんです。たくさんあったので落とすに忍びないものがいくつかありました」
惣田 「見開きに使ったイラストも、そのなかのひとつでしたよね。2人の関係性の深さもあって、作品でアウトプットされるべき価値観はもう絵に出ていたので、私はそれをかたちにすればいいんだなと思ったんです。“こういうイラストがあるんだったら、ケースのかたちはこういうのがいい”って言ったり。そのなかで、“ちょっと本っぽくしたほうがいいんじゃないか”という提案がエマさんからあったので見開きを工夫したりとか、すり合わせをしていった感じでした」
北村 「そうでしたね」
惣田 「中に使った写真は、
うつくしきひかりの7inch『
木漏れ日のうた』をデザインしたときもご一緒した阿部 健さんがいいとか、そういう細かいところを私がディレクションしていきました」
――最終的にジャケットとなったこの図版を選んだのは、エマさん、惣田さんのどちらでした?
惣田 「最初は風景というわけではないけどにじんだ線で遠くの湖と山みたいなのが描かれている絵も候補にありましたよね。じっさい、何パターンか作ったんです。でも、最終的にこの絵には“行ったり来たり”感があったし、まさにタイトル通りの遠近感がある感じで決めた気がします」
――僕はこの西脇さんの絵はすごく好きなんです。古代の地図みたいにも見えて、距離としての遠近だけでなく時間の遠近も操ってるという気がするんです。このタイトル文字は惣田さん?
北村 「そうです。これは惣田さんに描いてもらいました」
――これ、描き文字なんですか。
惣田 「既存のフォントをトレースして、ちょっと手描きっぽいテクスチャーを加えました」
北村 「じつはceroの『Yellow Magus』での、輪郭だけになった文字のデザインの印象がよかったんですよ。“どう見せるか”という部分がすごくしっかりしてた。僕自身が文字やフォントが好きなタイプでもあるので、ここはこだわりたかった。それで『遠近に』のタイトル文字は惣田さんに描いてほしいと言ったんです」
――その初めての共同作業を経て、約2年ぶりに新作『ロックンロールのはじまりは』で、再び2人は一緒に仕事をすることになりました。エマさんがこの新作の構想を考え始めたのはいつぐらいからですか?
北村 「曲自体は『遠近に』ができたあとに、時間があるときにいろいろ作ってはいました。でもジャケットのなかに入れた長めの文章にも書いたんですけど、アルバムとしてのはじまりは、やっぱり2015年の夏に戦争法案(9月19日に可決された〈平和安全法制整備法案〉〈国際平和支援法案〉)が話題として出てきてからですね。政治的なことだけじゃないですけど、その法案に対する思いと自分の身の回りについて思っていることとが、自分のなかで曲と出会っていったんです」
――いわゆる10数曲が入ったアルバムというかたちまでは持っていかずに、この6曲のコンパクトさでリリースしようと思ったのはなぜですか?
北村 「短いですよね(笑)。でも本当はもっと少なくして、うつくしきひかりがやったブックレットと7inchの『木漏れ日のうた』みたいな作品のイメージで、文章に2曲くらい音源が付くものを考えてました。その段階で、一度惣田さんにも相談をしてます。2016年の春くらいでしたね」
北村 「でも、レコーディングを始めたら、なんとなくこれだけじゃ足りない気がしてきて、結果的に6曲になったんです。仕様に関しても、本としてのかたちがあって、そこにCDが入るようにしたかったんですが、だんだんいわゆるCDの仕様になっていったという流れです」
――本というかたちを強く意識していたのは、あの文章を書くことを決めていたからですか?
北村 「本に対する“夢中感”ということをこの1年くらいずっと思ってたのもあります。本を買って“明日から1週間くらいで読もう”って思ってたのを、その日のうちにもう読んじゃった、みたいな、そういう感覚です。僕はどのジャンルに対しても興味を持つようなところがあって、レコード屋さんに行くのとおなじくらい古本屋さんに行くとワクワクするタイプなんです(笑)。それで本みたいなイメージが音楽と並行するかたちで出てきたという感じですかね」
――惣田さんは、エマさんから最初に新作のアイデアを聞いたときは、どう思いました?
惣田 「最初は“レコードと、レコードを包んでる紙に文章が書いてある”みたいなお話でしたね。かっちりしたプロダクトというよりは、もっとぺらっとした感じで。でも、まだその時点ではそんなに具体的ではなかったんです。その次が下北沢での打ち合わせでしたっけ?」
北村 「そうです」
惣田 「その時点で、この『ロックンロールのはじまりは』というタイトルは仮で付いてました。あと、その日、のちにエマさんの文章のなかにも出てくる敗戦直後の昔の本屋さんに集う人たちの写真を見せてもらって、私もすごくハッとしたんです。『ロックンロールのはじまりは』という言葉もそうですけど、なんとなくニュースで見ていた政治の話とか、“戦後”という言葉を聞いても“今が“戦後”なのか?“戦前”なのか?”って思う感覚とか、これからどうなるのかなというモヤモヤした感情と私のなかでも結びつくものがあったんです。それで“本棚”というキーワードを意識して、なおかつエマさんがアルバムのために文章を書くというので、質感として本に寄せるものができたらいいと考えました」
――それは具体的に言うと、どういうアプローチになるんですか?
惣田 「本棚に収まるような感じとか、古い本みたいに朽ちてゆくようなイメージですね。さらに次の打ち合わせで、紙ジャケにすることが決まりました。“じゃあ、紙はいいのを使おう”と」
――アルバムに封入されたエマさんの文章、本当にすばらしいんですよ。音楽としてのロックンロールの起源を自分の視点でさかのぼりながら過去だけでなく未来にもはじまるなにかを予感させてくれるし、この不安な時代に反骨や不屈という精神をあらためて自問させてくれるものでもある。エマさんにとっては、あの文章で書かれたことは漠然とはずっと考えていたことだと思うんですが、それが『ロックンロールのはじまりは』という言葉で明確に意識できたのがその時期だったということですか?
北村 「そうです。惣田さんには仮だと言って伝えましたけど、自分のなかではほぼ決めてました」
惣田 「私もこれがいいと思いました」
北村 「なにしろエマソロはほかにスタッフがいないんで、アイデアを聞いてくれる人がいないんですよ(笑)。惣田さんが打ち合わせのときに、この言葉にすごくハッとしてくれてたんで、自分でも“これはいいかも”って確信できたんです」
惣田 「もう一回、作品の仕様を決める打ち合わせをしたあとエマさんと2人で渋谷の駅まで歩いてたときに、渋谷の駅の周りがもうわけわかんないくらい取り壊されてたりして、“いろんなことがやばいね”って話をしてたのも、まさにこの新作にも通じてるような気がします。私はエマさんが知ってた昔の渋谷を知らないし、でも今の渋谷もまた知らない街になっていく。そういう感じが今回のアルバムと重ね合わさっていって」
北村 「あの日、おなじ場所でおたがいに携帯取り出して渋谷の写真を撮ったんですけど、おなじものを撮ってると同時に、僕が見てた80年代の渋谷は惣田さんの記憶にはないだろうし、何十年か後の渋谷は僕は見ることができないわけで、その境目みたいな時間に廃墟のようになった渋谷を2人が撮ってるというのはどういことなんだろうなと思いました。僕もそのことはすごく印象に残ってます」
――エマさんが見ているのは過去と現在の渋谷のレイヤーだし、惣田さんは不安とともに現在と未来のレイヤーを幻視する。その交錯が視点の厚みを生み出すというのはあります。さっきの“朽ちてゆく”という言葉にもつながる感覚ですけど。
北村 「この紙ジャケも、厚紙の上に特別な紙を貼ってもらってます。それ“朽ちる”というか、取り出して聴いたりしてるうちに擦り減っていってもいいんじゃないかという仕様なんです」
惣田 「通常は、ニスとかPPという加工があって、物質としての持ちをよくするために透明な膜みたいなものを貼るんですけど、今回はそれはなし。“壊れてもいいくらいのものという感じがいいんじゃないですか?”と提案しました。バーコードもないし、デジタルっぽいものはいれたくない。あとは紙の質感だけで空間が結構持つので、デザインは文字だけでシンプルにしました。ディスクのほうには“なにかワンポイントほしい”というエマさんの要望があったので、こういう線画を描きました」
――ジャケットからCDを取り出したときに、この線は目を引きます。
惣田 「エマさんから文章のラフはもらっていて、それを読んで、取り残された街のざらざら感とか、傷付いた感じとか、風がはらはらと吹いてるようなイメージで描きました」
北村 「僕がその時点で提示したのはまだ断片的なものだったんですけど、そこから“ざらざら”みたいなキーワードを拾ってくれるところが、すごく的確でしたね」
北村 「あと、惣田さんは活版印刷の見本もいくつか持ってきてくれましたよね」
惣田 「竹尾という紙の専門店が青山にあって、そこで1年間、フリーランスのデザイナー向けに紙の勉強会というのをやっていて、私もそこに通ってるんですけど、そのときに“せっかく紙がこれだけあるから、ここから選びましょう”といろいろエマさんにお見せしたんです。活版印刷については、実際に活版でやるまでの予算はなかったので断念したんですけど、戦後の印刷や活版的な文字の組み方を調べてやってみたりしてます」
――それにしても、『ロックンロールのはじまりは』ってすごいタイトルですよね。
北村 「そうですよね。そもそも“ロックンロールのはじまり”というのは、パンクという自分のルーツからの流れもあって僕にはずっと興味のあることなんですよ。要するに、初期衝動。でも、じつはその対象にしたような音楽は、このアルバムでは一個もやってない(笑)」
――でも、“ロックの歴史から定義されるロックンロールからロックンロールがはじまったわけではない”というのは、エマさんの文章にも描かれたテーマのひとつでもあります。
北村 「そうなんです。むしろ、ここで『ロックンロールのはじまりは』と言っているエマーソン北村は、ミュージシャンのエマーソン北村ではなく、もう一段階くらい素の“北村賢治”だという。そういう気持ちで書ければいいなと思ってました」
――教科書的な啓蒙とは真逆で、むしろ誰の人生でも、どんな時代でもロックンロールははじまるという仮定に力強さと希望を感じます。そして、このアルバムの6曲のどこからでもロックンロールははじまっていると思いますけどね。
北村 「そこで残るのが“ざらざら感”みたいなことだったんですよね。事実はわかっていなくても、その“ざらざら感”に対しては正直なものにしたいと思っていたところ、このデザイン打ち合わせで、惣田さんの口から“ざらざら感”という言葉が出てきたんで、“わー、すごい!”と思いました」
惣田 「あと、よく出てきた言葉は“透明”でしたね」
――“素晴らしい演奏の頂点でだけ演奏者は一瞬「透明」になれる”とか、震えるくらいすばらしい文章ですよ。
北村 「“透明”は言葉としてはすごく難しくて、僕が文章としてうまく書けたかどうかはわからないですけどね」
――もっと長い文章を書いてもらいたいという気持ちにもなりました。言ってしまえば、エマさんの音楽はオルガンやキーボードのインストなので、“ラウンジ音楽”だという人もいると思うんです。でも、いつもそこで引っかかるのは、もうちょっとなんていうか人間の生きてきた結果としての肉体とか記憶とか、そういうものに沿っていると思うんです。そこが不思議さであり魅力なんです。BGMのようなんですけど、心に触ってくる。僕もそういう意味では惣田さんが最初に思ったのと一緒で、いまだにこの音楽がどういうジャンルのものか説明できないんですけど、確実に自分の近くにあるという感覚だけはよくわかるんです。
惣田 「この対談の前にあらためてアルバムを聴いてきたんですけど、本というか、一曲一曲が本のなかの一章ずつみたいにつながってる気がして。この文章を読むことで、一曲一曲が朗読的にも思えました」
――音があって、文章があって、アートワークがあって。2人の関係性は『遠近に』以上に密ですよね。
北村 「僕のほうでは、次も惣田さんに発注するというのは『遠近に』終了直後から決めていました」
惣田 「私はそれが不安だったので、線画だったら
松井一平さんはどうでしょうとも提案したりしたんですけど、“いや、惣田さん描いてください”と」
北村 「松井さんのドローイングも見せていただいて、たしかにすごくよかったんですけど、そこは意外とすっぱり“惣田さんにお願いします”と言いましたね。打ち合わせを何回もするわけだし、そのうえで“これだ!”とお互いに思える瞬間を切り取ってゆく過程はレコーディングとも一緒だと思うんです。それが惣田さんとうまくいくといいなと思ってやってましたから」
――このコンビ、続いていくといいなと思ってます。
北村 「僕ね、惣田さんがいいと思ったポイントが2つあるんです。ひとつは打ち合わせ中に惣田さんが描き留める図。イラストというか図ですね。それがものすごくわかりやすいんですよ」
惣田 「私が自分でわからないので図に描くということなんですけどね」
北村 「僕は個人的に手描き地図とかが好きなんですよ。惣田さんは個展のフライヤーで地図も自分で描いていて、それもいいなと思ってたんです。あと、もうひとつは、メールの文章ですね。めちゃめちゃわかりやすいんですよ」
惣田 「いや、エマさんのメールの文章がめちゃめちゃ細かいんですよ(笑)。だから、読み解くのに時間がかかるんです」
北村 「本当にすいません(笑)」
惣田 「たとえばアーティストが作った曲のコンセプトをレーベルの人がわかりやすく伝えてくれる、みたいなパターンとは違って、エマさんの場合は、私が編集さんの立場になったようなメールをエマさんにするんです」
――惣田さんから“エマさんがやりたいのは、こういうことですよね?”って解読してあげてる、みたいな?
北村 「僕の編集役をしてるんだっていう意識だったんですか?」
惣田 「いや、それはないんですけど、ただメールの読み解き方としてそうしてたんです」
北村 「そうだったんですね!僕はもうメールの返事がわかりやすいんで、もうただ単に“惣田さんすげえな”って思ってたんですけど、惣田さんは苦労してたんですね。そりゃそうですよね(笑)」
惣田 「でも、それでエマさんが“わかりやすい”と思ってくれてたのなら、それでよかったです(笑)」
北村 「いろんな世の中のことがクリアに見えてるんだと思うんです。僕よりはモニタの解像度が格段に上がってて。それはあると思います。僕がぐだぐだと考えてることを、ちゃんと図にしたりして返してくれる」
――作品にとって意味のあるかたちとは何なのかと探る試みは続けていってほしいです。
北村 「そうですね。惣田さんとは今回ミニマルな方向はかなり極めたので、ぜんぜん逆なデザインとかもやってみたいですね」
惣田 「データで音楽が成り立つ時代なのに、こんな本みたいな作品を作ったりする。それってもう世界中でも日本くらいかもしれないですけど、それもおもしろいなと思ったりしてます。音楽をこうやってかたちにできるのなら、もうちょっと私もいろいろやってみたいですね」
取材・文 / 松永良平(2016年12月)
写真 / 久保田千史
2017年1月20日(金)
東京 下北沢 風知空知開場 19:00 / 開演 19:30
ご予約 2,800円 / 当日 3,300円(税込 / 別途ドリンク代500円)[電話予約]
風知空知 03-5433-2191
[メール予約]
風知空知 yoyaku(at)fu-chi-ku-chi.jp
「ご希望公演名」「お名前」「枚数」「ご連絡先電話番号」を明記の上お申し込みください。※お問い合わせ: 風知空知 03-5433-21910
2017年1月23日(月) 〜 2月3日(金)
東京 表参道 青山見本帖11:00〜19:00
※土日祝 休館
入場無料[出展]
門内拓海 / 惣田紗希 / LEE KAN KYO
[オープニング・パーティ]
2017年1月23日(月)
19:30〜21:00