2009年にミニ・アルバム『KARMA』で“NEO TOKAI”の礎を築いたヒップホップ・グループ、TYRANTに在籍し、CREATIVE PLATFORMとのプロジェクト「#WhoWannaRap?」から2作アルバムを披露した“SLUM RC”ことRCSLUM RECORDINGSの中心人物としても知られるラッパー、YUKSTA-ILL。地元である三重県鈴鹿市を出発点として、たゆむことなく遊び、学んできた彼が、2作目となるソロ・アルバム『NEO TOKAI ON THE LINE』をリリース。自ら“原点回帰”と語っているように、その日常やリアルな原風景をも歌った、新たな代表作だ。
――『NEO TOKAI ON THE LINE』は5年ぶり、2作目となるソロ・アルバムですね。冒頭の3曲は、その立ち位置や決意を的確に伝える楽曲が並んでいますが、YUKSTA-ILLさんのこれまでの活動を知らない方へ向けての意思表示でしょうか?
「ハードコアもヒップホップもストリートのものだし、互いに共鳴し合えると思います。鈴鹿のイベントもFACECARZと一緒にやってたり。4月はFIGHT IT OUTとISSUGIくんを呼ぶつもりで、いけてるやつはみんな呼ぼうって。ハードコア・バンドを呼んだら男祭りになりそうなんだけど、女の子も来てくれるし。なんていうか“ピースでヴァイオレント”ですね、モッシュが起こってもそんな雰囲気で」
「怒らしてたんですよ(笑)。俺は皆にちょっと便乗してたくらいですけど。でも俺が行きだす前とか、もしかしたらもっと酷かったのかもしれない。楽しんだ結果、あの頃のムードをリヴァイヴしたいっていう感じですね。今も下手したら毎週いる……いや……まあまあいるんですけど(笑)。ぱっと一人で遊びに行く感じです。曲順でいうと〈OVERNIGHT DREAMER〉は、鈴鹿(HOOD BOND)から、名古屋の丸美(LET'S GET DIRTY)に向かって車を走らせているところですね」
「なんでも片っ端から観るってタイプの映画好きではないですね。たまたま観たら、すごくハマっちゃうタイプ。ホラー映画嫌いだったのに『CUBE』はすごい考えさせられましたね。相方のKOKINちゃん(KOKIN BEATZ THE ILLEST)の家に行くと、いろいろ観せられるんですよ。製作費かかってなさそうなのに奥深いし“どうなるんだろう”って」
「隣接してるカルチャーだと思うんですが、忘れられてる感じはありますね。自分は何よりもアレン・アイバーソンから影響を受けました。地元のチームだったから毎週試合も観てたし。ヒップホップのカルチャー・アイコンでもあったと思う。『NEO TOKAI ON THE LINE』は原点回帰がテーマだったから、俺には切っても切れない存在でした。彼は先日殿堂入りしたので、祝福の意味を込めてこのアルバムを捧げたいと思って。〈LET'S GET DIRTY〉の冒頭のサンプリングは、アイバーソンが試合前にREDMANの〈LET'S GET DIRTY〉をラップして“やるぞ!”って自分を鼓舞してるところですね。試合終わってパーティして、翌日もちゃんと試合して点を取るっていう、まじめにやるだけの選手よりも相当タフなことをやってたんで、そこにも憧れてました」
――「LET'S GET DIRTY」を手がけたPUNPEEさんと以前にコラボしていた「Where I Belong」(『TOKYO ILL METHOD』収録)とはあまりに雰囲気が違っていたので、なにか打ち解けたのかなと思いました(笑)。
「PUNPEEくんはすごくフラットに向き合ってくれる人なので、打ち解けたのは最初から。実はこのビートは、『TOKYO ILL METHOD』の時に〈Where I Belong〉と一緒に渡されていて、予約していたもの。やっと世に出せたんです。こういう内容で、SOCKSくんとやるってイメージまで、実はもう決めてました。楽しめましたね……パーティすることもヒップホップだと思ってます。地元でやる自分たちのパーティ、例えばMETHOD MOTELであったり、三重ならALL FOR ONEに来てもらうのが一番どんなことをやっているのかを分かってもらえるんじゃないですかね。そこがあるから、ほかのパーティに呼んでもらったりできるし」