Diggy-MO' の4thアルバム『
BEWITCHED 』が完成した。魔法にかけられて、魅せられて。ファンタジックな響きのタイトルだが、つられて入り込むと、ソウル、ファンク、ジャズ、ハウスなどあまりに濃密なミクスチャー・ミュージックに度肝を抜かれる傑作だ。高速ラップと強迫的ビートで突っ走る異形のダンス・チューン「PTOLEMY」と、美しいメロディと浮遊感あふれるサウンドが胸を打つ「YOYOY」。リード曲たちを筆頭に、すべての音が光り輝く新作に込めた思いをDiggy-MO'が語ってくれた。
――アルバム、楽しかった。娯楽と言うとちょっと違うかもしれないけれど、素直に楽しめたというか。
「ありがとうございます。うれしいです」
――前作『the First Night 』のほうが、緊張感が相当高かったというか。それはこっちの問題でもあるんだけど、SOUL'd OUT を解散して、一発目にDiggy-MO'は何をやってくるか?って身構えていたところがあったんで。でも今回は、そんなことよりも音を楽しめたんですよね。それが最初の感想です。 ――ああ、そうですね。あの時はまだグループと並行しながらのソロでしたね。
「『Diggyism』と『DiggyismII』を出した時に、ある媒体の方に“『Diggyism』はいろいろ構えて聴いたけど、『DiggyismII』は本当にいいよ”って言っていただけたことがあって。明るいし楽しいし、こういうのが聴きたいアルバムかもっておっしゃってて。俺はその人のことがとても好きなので、その言葉はスッと入ってきて“ありがたい”と思いましたね。で、今回この『BEWITCHED』ができてみて、もしかしたらみんな『the First Night』って『Diggyism』っぽい感じがしたのかなって、ちょっと思ったりもしたんです」
――その通りですね。たぶん。
「『the First Night』にも、キャッチーな曲がないわけじゃないし、たぶん明るくないわけでもない。オープニングはワンツーを〈Lovin' Junk〉〈Blue World〉で決めてるし。『Diggyism』も、〈
爆走夢歌 〉から〈ZAZA〉や〈
JUVES 〉、〈FIRE WOO FOO FOO feat.LISA〉とか〈サムライズム〉と、7曲目ぐらいまで、今ライヴの後半でダーッとやるような曲を並べてたり……反応してくださる方々もいろいろにありがたく、とっても面白いです(笑)」
――確かに(笑)。
「少し経って離れて見ると、またあらためて“なるほどな”とか思いますね。今回は色味はけっこうある感じだと思ってますけど(笑)」
――ありますね。非常にカラフルでスムーズな感じがする。
「ギラッと色彩豊かな感じは、出来てみてなんとなく気づいたというか。とはいえ、そもそも単純にいい曲を書きたいだけみたいなのもあるんだけど(笑)。面白くちょっと振り切ってみた方向のもの、それこそ〈PTOLEMY〉とかですかね。そして一方で〈YOYOY〉や前作では〈Blue World〉のような曲があって、全体が成立しているような気もするので、それがどういう割合かとかは、毎回違うとは思うんだけど。アルバムとして、自分で作りたい理想形というものが、やっぱりあるんだなとか思いますね」
――バランスとして?
「はい。単純にソングライターとしてそういう理想があるんでしょうね。聴いてくれる人が、いいと言ってくれたらいいなとか。“普通じゃん”“いや、そうなんだよね!”みたいな(笑)」
――どういうこと?(笑)
「普遍的なテーマ性や音楽性の、“いい曲”みたいな、そういうポジションの曲を書きたいと思うのは、俺の中には常にあって。変わってるかどうかとかじゃないからね、音楽は。そりゃたまにいい曲で、いい詞も書きたい(笑)」
――あはは。たまにだなんて(笑)。
「大丈夫です。Diggy-MO'は振り切るのが好きなだけなので(笑)」
――おぉ、なるほど確かに。そもそも「PTOLEMY」から始まったんでしたっけ。このアルバムの第一歩は。
「ですね。〈PTOLEMY〉を作ってて、途中で〈GIRL MY〉も同時進行でみたいな」
――それは2015年の夏に、前のアルバムが出た直後?
「1ヵ月後ぐらいかな。9月だった気がする」
――「PTOLEMY」は、どんなインスピレーションで出来上がった曲ですか。
「そうだな……〈JUVES〉を思いついた時と近いかもしれないです。頭の中にイメージが浮かんで、あとは作業すれば出来るなっていういい予感が、〈JUVES〉の時とけっこう似てる。ちなみに〈JUVES〉は当時、周りにはまったく受け入れられなかったんだけどね(笑)」
VIDEO
――へぇ、「PTOLEMY」はすごいですよ。イントロ一発でぞわっとする。アルバムの中で一番緊張感の高い曲だと思います。
「……(まじまじと紙資料を見つめながら)これここに“推し曲”って書いてあるね(笑)」
――あはは。今さらなんですか(笑)。推し曲ですよ。やはりその理由として、ラジオ乗りがいいとか、キャッチーとか、そういうことよりは、これが今の自分だというアティテュードを打ち出したかったりとかはある?
「う〜ん、やっぱり単純に、“なんかいいのできた! どう?”みたいな感じなんですよね。〈JUVES〉の時もそうだったけど、すごく感覚的なものかもしれない。これヤバくない?って。こんなの、あまりないでしょ? でもすごい謎でもないし、意外と楽しくない?って感じで。……でも俺、いつも勘違いだからな(笑)」
――そんなことない(笑)。すごい曲ですよ。ライヴで初披露した時、みんな立ちすくんで聴き入っていたのを覚えてます。
「どうなんだろうな。普段こういう感じ……とか言っちゃうとアレだけど、こういう曲を聴かない人からすると、何コレ?っていう感じなのかもな、あははは」
――そんなことないですよ。
「自分の中で、逸脱してる感じではないんだよね。コードも至ってシンプルだし、そこにラップがダーッと、ひたすら打ち込まれてる。ラップがたどるメロディも、全部ルート音にピタッと来る展開だし、その中で、アイディア勝負みたいな妙技がけっこううまくいった感じがしていて。面白い曲になったとは思ってるけど、スタンダードから外れているという感じが自分の中には全然ないというか。なので普通に“どう?”って感じです(笑)」
――薦めたいですよ。いろんな音楽好きの方に。
「おぉ、それはうれしいです」
――そしてもう1曲の推し曲は「YOYOY」。これはさっき言った「Blue World」に連なるような、まさに“いい曲”路線と言うか。
「プロセスとして初めにAメロとBメロがあって、2コードでずっと進んで行く感じが気に入っていて、サビまで一通り仕上げたんだけど、時間がたって、サビを変えたくなっちゃって。それによってイントロも全然違うものが浮かんで。そういう時って、もう止められないというか。それで最終的にこうなりました。なんかそれはそれで実は、“いい曲”路線って自覚もそこまでなかったんだけど(笑)、最近ちょっと……」
――え、なるほど。いや、いい曲ですよ。ライヴでも、終盤の盛り上がる位置にあって全然おかしくない。むしろ、あってほしい。
「そういうことか。言われてみると、確かにそうかもしれないですね。そういうの、言ってくださいよ」
――あはは。言ってくださいよって(笑)。
「DiggyにはDiggyの世界観があるからって、周りから思われてるパターンが多くて、あんまり意見を言ってもらえないんだけど。俺、意外とそういうの聞きたいんですよ。なので、言ってください(笑)」
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――あははは、そうなんだ(笑)。リリックの話も聞きたいんですけどね。このアルバムのリリックで、表現したかったことというのは? 非常に肉感的な、エロティックな表現が多いのと、男女のラブ・ソングが多いように感じたんですね。
「なんかウケますね」
――それは意図的に?
「いや、そんな感じだったんじゃないかな、モードが」
――相変わらず思想的な鋭さはあるけど、官能的な愛の歌が多いというか。メッセージ性よりも、物語性が強いというか。それも、『the First Night』との大きな違いだと思うんですが。
「そうかもしれない。みんな、エッチなの好きだからね(笑)」
――あははは、そういうことなの?(笑) でも「先生、」とか、こういう肉感的なファンク・チューンに、こんなにエロティックな歌詞が乗るのは、ある意味王道じゃないですか。キターッ!っていうね。ここに思想的な歌詞ではないでしょうと。
「まさに。思想枠は、一枠ぐらいにしたいという」
――それは意図的に?
「ナチュラルにだと思います。音楽的なことがとにかく楽しいので。また全然違う雰囲気だけど〈首都高2〉みたいな曲とかでも、自分の感覚的な言葉を紡いでいってはいるけど、ライフソング的な重量感の方向ではまったくないし。中でとにかくこだわっているのは、こんな曲を書こうとか思っているプロセスに、言葉がちゃんとどんな方向でも“Diggy-MO'ならでは”に厳選されていて、且つ楽しく聴こえる感じだとか、そういう感じですかね。まぁ自分が楽しいように書いてるし、難しい必要はないというか」
――楽しく軽やかに、という感じですかね。
「基本的には、何でもそうなんだけどね。自分らしくっていうのはいろいろにあるけど、でもそういう感覚でそもそもいますね。……〈YOYOY〉とか〈Starlight Destiny〉、〈Arcadia〉や〈GASOLINE〉とかあのへんはタイプはガラッと違ってライフソングではあるけど、曲として考えてる感じや目指す感じというのは意外と全てに共通してはいるんだけど」
――ああ、SOUL'd OUT時代から脈々とつながってきているものがある。確かにそうですね。今回の『BEWITCHED』の中で、思想的な濃度の高い曲は、〈YOYOY〉ぐらい……かな。
「ですかね」
――理屈抜きで楽しんでもらえるアルバムが出来たと思います。そして『BEWITCHED』とはまた、今までにない、かわいらしいファンタジックなタイトルをつけたなと。これはどこから?
「“魔法にかけられた”という意味も多分にあるんだけど、“魅せられて”というニュアンスも強いかもしれない。自分の中では」
――何に魅せられた?
「ふふふ、なんでしょうね。自分でもそうなんだろうし、これを聴いてくれる人がそうであれば楽しいよね、って思ってます(笑)。あとは、男女間のいろいろな歌が多いから、そういうことも含めて、ゲーム性が高いテーマも楽しんでもらえるかなとか。 ゲーム性って言うとアレだけど、例えば〈にこにこジョバンニ〉に象徴されるようなドキドキな危ういようなニュアンスも。あとは、ミュージカル・ソングの〈BEWITCHED〉とかも好きで、タイトルを思いついた時、いいイメージで重なりましたね」
――ああ、そうか。ジャズナンバーとしてもスタンダードですね。
「オリジナルの歌詞はけっこう生々しいんですよ。そこからってわけじゃないけど、でもともかくスタンダードとして有名で好きな曲だったということもあって、タイトルがポンと出てきた時にいろんなイメージとリンクして、チャーミングだしこれかなって」
――正直、SOUL'd OUTが好きで、今はちょっと離れたみたいな人もいると思うので。これを読んでたら、聴いてください。いいですよ、今回は。
「あははは、そんなに推してくださって嬉しいなぁ(笑)。わりかしファンク系統の曲もフィーチャーされてるからね。聴いて楽しんでくれたら嬉しいです」
取材・文 / 宮本英夫(2017年2月)
Diggy-MO' LIVE TOUR 2017“BEWITCHED”
2017年3月17日(金) 愛知 名古屋 Electric Lady Land 前売 5,900円 / 当日 6,400円(税込 / ドリンク代別) 開場 18:30 / 開演 19:00※オールスタンディング / 6歳以上有料・5歳以下入場不可 ※全公演共通 U-18 当日会場にて身分証提示で1,000円キャッシュバック お問い合わせ サンデーフォークプロモーション 052-320-91002017年3月19日(日) 東京 渋谷 TSUTAYA O-EAST 前売 5,900円 / 当日 6,400円(税込 / ドリンク代別) 開場 16:15 / 開演 17:00※オールスタンディング / 6歳以上有料・5歳以下入場不可 ※全公演共通 U-18 当日会場にて身分証提示で1,000円キャッシュバック お問い合わせ ディスクガレージ 050-5533-08882017年3月25日(土) 福岡 BEAT STATION 前売 5,900円 / 当日 6,400円(税込 / ドリンク代別) 開場 16:30 / 開演 17:00※オールスタンディング / 6歳以上有料・5歳以下入場不可 ※全公演共通 U-18 当日会場にて身分証提示で1,000円キャッシュバック お問い合わせ キョードー西日本 092-714-01592017年3月26日(日) 大阪 UMEDA CLUB QUATTRO 前売 5,900円 / 当日 6,400円(税込 / ドリンク代別) 開場 16:30 / 開演 17:00※オールスタンディング / 6歳以上有料・5歳以下入場不可 ※全公演共通 U-18 当日会場にて身分証提示で1,000円キャッシュバック お問い合わせ キョードーインフォメーション 0570-200-888