「きっかけは、仙人掌“BE IN ONES ELEMENT”やDOWN NORTH CAMPのALBUMプロジェクトもお願いしているCPF(CREATIVE PLATFORM: 会員限定で制作資金の先行投資を募る音楽コンテンツ・プロジェクト)から“色んなビートメイカー、ラッパー、DJをフィーチャーして、毎月7インチシングルをリリースする企画はいかがですか?”というオファーがあって。その企画はただ7インチをリリースするだけでなく、Diaspora skateboardsを主宰している小林万里くん(ミュージック・ビデオを多数手掛けている)に撮影をお願いして、その制作過程を映像に残して、サイゾー動画というメディアで放送しよう、と。お願いしたいビートメイカー、ラッパー、DJに関しては、スタートの段階で3、4人決まっていたんですけど、ビートを募集してみたり、友達からもらったビートから選んだり、そのほとんどは企画を進めながら、決めました」
――そのプロジェクトありきで制作した12枚の7インチシングルをまとめたものが、アルバム『7INC TREE / V.A』なんですね。ビートメイクであったり、制作過程を映像で紹介するプロジェクトとしては、dublabのドキュメンタリー『SECONDHAND SURESHOTS』や、目隠しで選んだレコードをもとにビートメイクするヒップホップサイト、MASS-APPEALの動画企画「Rhythm Roulette」がよく知られていますが、7INC TREEはそうしたプロジェクトが念頭にあったんですよね?
「やっている最中の意識は、前作『DAY and NITE』のような通常のアルバムを作る作業とは違う部分もありましたし、出揃った12曲を振り返った時、意図せずとも今まで自分が作った曲と共通するものが表れるんだなと感じる部分もあり。アルバムの曲順は、2016年2月の初回から出来た順番そのままなんですけど、アグレッシヴな前半からメロウな、ディープな後半への流れが自然と生まれたのが我ながら面白いな、と。ラスト2曲、MASS-HOLEがプロデュースした〈FU-JIN RAIJIN〉とDJ GQがプロデュースした〈EMERALD〉のガツンガツンとしたトラックに関しては、自分の普段のアルバムではこういう締め括り方はしないんですよね多分。でも、12ヶ月の流れを大切にして、結果こうなったっていう。そういう流れにしてもそうだし、ビートのチョイスやその時思ったことを形にするフリースタイルに近いリリックに表れている感情も、もしかすると作った季節も影響しているのかもしれないですね」
――そして、JJJがプロデュース、スクラッチがDJ K-FLASH、そして、Mr.PUG、JJJ、ILLNANDESをフィーチャーした1曲目の「RAP RUSH」は、昨年2月に無料配信されたISSUGI×JJJのミックステープ『LINK UP 2 EXPERIMENT』にも収録されていますね。
「曲自体は7INC TREEのために作ったんですけど、JJJと作っていたミックステープにもショート・ヴァージョンを入れて、同時期に公開したんです。去年はこのプロジェクトを進めながら、ミックステープも作ったし、『DAY and NITE』もリリースしたんですけど、リリースするしないに関係なく、曲作りのペースはそんなに変わってないし、その流れをキープ出来たらいいんですけどね」
「正直、超あります(笑)。でも、実際の話あまりに多すぎて、全部聴けるわけではないんですよね。だからゆっくり時間をかけて少しづつ聴いてます。だから、ビートを募集すればそういう人もビートを送ってくれるんじゃないかなって。そして、俺自身、SEEDAくんの『CONCRETE GREEN 2』でMONJUをフックアップしてもらったし、今度は俺がそういう役割が出来るんだったら新しいビートメイカーをフックアップしつつ、でも結局俺自身が新しいビートメイカーから新鮮さをもらってフックアップされるところもあって、そういう関係こそがヒップホップだなと思っていて」
「『DAY and NITE』のリリース・パーティ限定で『16FLIP VS TRASMUNDO』っていうビートテープをリリースしたんですよね。どうしても出したいということで、店主のハマさんが提供したネタをもとに2日で作ったんですけど、自分の場合、超ヤバい曲を作るんだと常に意気込んでるわけではなく、気軽に遊びでやってみることで、いい曲が出来ることも多々ありますからね」
――そういう軽いフットワークの遊びこそがヒップホップの面白い部分でもありますし。
「だから、今回まとめた7INC TREEのファースト・シーズンの経験も踏まえて、5月からFRESH! by CyberAgentでこのプロジェクトのセカンド・シーズンを始める予定です。みんなに観てもらいたいですね。日本には音楽の側面を打ち出したヒップホップの番組がまだまだ足りないと思うんですよ。自分としては、7INC TREEプロジェクトを通じて、ヒップホップの内側にもっと興味を持ってもらいたいし、そうすることでより身近なものになるんじゃないかなって」