BASI 「ただ、作品ごとに音楽に対する感覚とか発想が違うし、似たようなものを3つ同時に動かしてるんじゃなくて、全く別なものを3つ動かしてる感じだったので、全部、全箇所が新鮮に捉えられたんで、“しんどく”は無かったです。韻シストとソロの感触の違いに関して言えば、やっぱり韻シストは6人で作ってるし、ラップだけ考えても、韻シストには圧倒的にスキルのあるサッコンの存在感や要素があって、楽曲を対等にシェアして1曲を作るっていう感触があるんですね。且つ、『HIPSTORY』以降の韻シストはShyouやTAKU(g)も歌うようになったので、更に楽曲内の振り幅やバラエティも増えて、お互いに切磋琢磨して1曲を作ってるんです。だけど、ソロはそれを1人でやる訳なので、そこに載っている乗員数が違うというか、曲に対するバランスがちょっと違うなって感じですね。ただ、どれも刺激であって、充実してるからリリックが沸いてきたんだと思うし、どこかに繋がっていく感覚がありましたね」
BASI 「リリックについては、他を遮断して韻シストに集中して。韻シストに向けて、書きましたね。確かに韻シスト以外の仕事で得たフィールを韻シストにも繋いでいくのが一番美しいとは思うんですけど、今回に関しては、完全に韻シストに集中して。これまでの19年間と、これから迎える20周年を目前にして、自分たちの歴史とかメンバーの今のヴィジョンをズレなくラップとして落とし込むことが必要だなって。それだけこの『Another Day』に込めるものが特別だったんですよ」
Photo by 新井友樹
――今回の『Another Day』というタイトルはどこから生まれたんでしょうか?
BASI 「もともと温めていたタイトルが、ある映画と被ってしまってちょっと使いづらい状況になってしまったんですよね。そんな時、福岡にライヴで向かう飛行機の中で、Shyouとこれまでの韻シストの歴史を振り返りながら、今回のアルバムではデビュー作である『ONE DAY』が持ってたような“ゆるさ”を、今の自分たちで“タイト”に形にしたいって話したんです。ただただゆるかっただけの『ONE DAY』とは違うもの――つまり『Another Day』やって、飛行機の中で閃いて。その説明をメンバーにしたら、満場一致で、みんなが“それやな”って。きちんと生まれた、思い入れのあるタイトルです」
BASI 「〈Don't leave me〉をラジオで聴いたおかんが、“めっちゃ良かったわ〜、懐かしい感じするわ〜”っていう、おかんならではコメントをくれて(笑)。でも、捉えてくれる人はそういう感じでいいと思うんですよ。ヒップホップとして、ってことではなくて。もちろん、そう評価してくれるのは嬉しいけど、トータルとして、懐かしいとか、気持ちいいとか、ノレるわっていう、ポピュラーなものになりたいんですよね。韻シストとしてもそういう扉を開けることで、挑戦する次のステージが待ってると思う」
BASI 「自分としては攻撃は随所ではしてるんですけど、痛くないように殴ってるっていうか。攻撃してても痛くなくて、ちょっとファニーな、リスナーもピースに聴けるっていう、猫パンチみたいな感じですね。やっぱりラップなんで、時には毒づく瞬間も好きですし、単に優しい言葉を並べるっていうよりは、攻撃はしてるけど、優しいフィーリング、ムードは分かるっていうか。それを出すのに必死ですね」
BASI 「時代とかシーンの確認を、ライヴを通してやっている部分もあって、そこからリリックとかサウンドが生まれることが確実にあるんですよね。想像やイメージだけでは世の中とシンクロしないので、僕らはライヴを大事にしていますね。“いま”を夢中で捉えて、そこから生まれたリスナーとの関係について、僕らは音楽で返していってると思うんです」
BASI 「ライヴ後にSNSに上がる写真やムービー、コメント、リアクションによってリスナーとの距離を近く感じることが出来る環境の中で、リリックを書いたりしてるので、より距離が近づいていくのかもしれないと思うし。一緒に成長していってるような、距離を縮めて感じ合っていってるという感触がスゴくあるので、作品も僕らやリスナーの日常にフィットしてるものになってるのかなって」
BASI 「でも、あのケンドリック・ラマーっぽいフックのフロウを提示したのはTAKUなんですよ。実は僕らは全員がヒップホップIQが高いんで(笑)、そういう要素がメンバーのあらゆる角度から生まれて、一曲になってるんですよね。且つ、その感覚はメンバーの中で何センチずつかは違ってるんで、その全員が思う美味しいところにどう落とすかのもポイントで」
BASI 「自分らと世間のイメージがフィットしにくい時代からずっとやってきて、いまようやくみんなとフィット出来てきた思うんですよね。良い意味で遠回りをしてきたと思うし、その中でヒップホップでは出会えなかった偉大なるミュージシャンとも出会って。そういう人も巻き込んでの20年目を形に出来ればと思うし、見といて欲しいですね」