今年、デビュー20周年を迎える鈴木祥子。ライヴ・ツアーや新作のレコーディングをはじめ、“記念の年”を飾るにふさわしい活動が来年春まで続いていくが、作品としてまず届けられたのは、『SHO-CO-SONGS collection 1』。初期オリジナル・アルバム4作にPVや未発表ライヴ映像を収録したボーナスDVDを追加した、ファン待望の3枚組ボックス・セットだ。 ――まず、今回あらためて初期の作品を聴いてみて、どんなことを思いましたか。
「最初の『VIRIDIAN』は、原点っていったらおおげさかもしれないけど、ポップやフォークやロックの香りがある自分の要素が思いがけずに全部入っているなあと。ミュージシャンもアレンジャーも、みなさん曲に素直に反応してくださっていて、とてもシンプルでいいアルバムだと思いました。とくに〈サヨナラの朗読〉という曲には、自分のルーツ、クラシックの名曲のイメージがすごく出ているなと思いました。
続く『水の冠』のころは、曲作りが面白くなってきて、いろんなタイプの曲を書いて、それがアレンジされて素敵になっていくのが嬉しい――そんなことをおぼえた時期だったと思います。アレンジの比重が
佐橋(佳幸)さん寄りになり、アコースティック・ギターを中心とした曲が多くなっているのがひとつの変化かな。佐橋さんは、ギターを持って歌うことを最初に教えてくれた人でもありますね。
『風の扉』は混沌としているけど、みんな生き生きと演奏しているし、自分も伸び伸びと音に反応して歌っている感じがして、そういうインタープレイができるようになった。音をみんなで出して合わさったときの解放感。そして無条件で体にくる音――。音に対する意識が自分のなかで変わりましたね。音が太いし、柔らかみがあるから、今聴いても楽しいですね。
4作目の『Long Long Way Home』からはデジタルの48チャンネルになりましたが、とてもすっきりとしたポップスを作っていたなあと。スタジオにずっといて曲を書かなきゃいけなかったから、たいへんだったという思いも強いですね。でも、
大貫(妙子)さんに〈青い空の音符〉の歌詞を書いてもらったのは大きかったなあ。今歌っても違和感がないぐらいすごく深いメッセージがあるんですよ。それに自分の歌い方がようやくこのアルバムからできてきたんじゃないかな。このアルバムのツアーで、“クエストホール2デイズ”っていうのがあったんですが、ステージで演奏する楽しさを初めて知ったのもいい思い出です。今回のDVDにも入っている〈サンデー バザール〉なんて、自分で言うのもなんだけど、堂々としてますよね。〈ひとりぼっちのコーラス〉はその前の『風の扉』のレコ発での演奏だけど、DVDを観ると、まだぜんぜん歌えてないし、おっかなびっくり。目が泳いでるもん(笑)。でもそういうのもいいかなと思って入れたんですけどね」
――マスタリングにも立ち会ったそうですが、リミックスでとくに気をつけたことは?
「低音を出すようにしました。80年代の録音とかマスタリングって、上がキラキラして中低音は少ないという傾向があるので、エンジニアの田中(三一)さんに相談しながらやったんです。ベース・ラインがはっきりし、エレキ・ギターの音もより見えるようになって、よりロックっぽくなりましたね。とくに3作目と4枚目は。〈Circle Game〉はものすごくかっこよくなったと思います。〈光の駅〉〈水の中の月〉〈Down By The River〉もベースが前に出て、骨太さが増したし。全体的に、音が意外と古びていないのがいいなと思いました」
――この『1』に収められている作品は、20年のキャリアの中でどんな位置づけにあるものだとご自身は感じてますか。
「ビジョン・クエストというか通過儀礼というか……。音楽の世界に放り込まれ、肉弾戦でやりながらつかんでいくしかなくて、で、ちょっとずつわかっていったっていう。音楽をやるってどういうことかとか、歌って何なのかとか、プロとしてやるっていうのはどういうことかとか、そういうのを通過儀礼としてつかんでいったという感じですかね。まだぜんぜんつかめてないんですけど……。でも、こうして聴いてみると、初々しくて幼いけど、しっかりした自分の芯みたいなものがあったんだなって。だから今回これを出すチャンスをいただいて、自分を再発見できたことで、否定的な気持ち、がいっさいなくなりました。こんな未熟な人間にこんなにいっぱい作品を作らせてくれたり、またそれを今、こうして再発するチャンスに恵まれるということに、ほんとに感謝してます。人は生かされている、ってよく言うでしょ。私も作らされてる、ってかんじがします。そうやって生きるのが自然なんだ、って。前から聴いてくれていた方も、初めて聴くという方も、ぜひ聴いてほしいですね。ジャケットもかわいいでしょ♪ 80年代っぽくて」
取材・文/藤本国彦
■鈴木祥子“SHO-CO-SONGS VOL.1〜1988〜1990”
発売記念ツアー“SHO-CO-SHALL BE RELEASED 〜いろいろあったよ20年〜”
6月14日(土)愛知・名古屋TOKUZO
6月15日(日)愛知・名古屋TOKUZO
6月21日(土)東京・南青山MANDA-LA
6月28日(土)京都・京都ZAMPANO ※アナログ発売イベント
6月29日(日)京都・京都磔磔
7月6日(日)神奈川・横浜サムズアップ ※ツアー終了記念アフター・パーティー
■デビュー20周年記念ライヴ決定
9月21日(日)東京・C.C.Lemonホール
※詳しくは、オフィシャル・ホームページ(
http://www.syokosuzuki.sakura.ne.jp/)へ。