“いま
lyrical school がスゴい!”……と筆者が書くと、いままでのリリスク原稿を読んで下さった方には“またか……”と思われてしまいそうだが、まあ聞いて欲しい。
1月にオリジナル・メンバーが全員卒業し、5月よりminan、hime、そして新メンバーのhinako、risano、yuuによる5人の“新体制”として新たなスタートを切った彼女たち。その意味では、文中でもプロデューサーのキムヤスヒロ氏の口から語られる通り、公式的に5月以前を“旧体制”としている訳だが、そこにはメンバー変更や、時制的な違いを超えた意味を感じる。
それは彼女たちの紡ぐ物語の違いなのではないだろうか。旧体制はラップ / ヒップホップに対してあまり強い興味を持っていなかったメンバーが、楽曲やライヴを通して、スキル・アップやアプローチを展開し、“ヒップホップ・アイドル”になっていくという、アイドル的な成長物語という部分があった。しかし、現在のメンバーにはそもそも“上手いラップ”という皮膚感があり、それに基づいたラップ・スキルが、活動半年の段階で既に備わっている(特にhimeのラップ・スキルはかなりのレベルだろう)。そして現在のライヴで見られるような、振り付けやフォーメーションを削ったことによる、メンバーが思い思いにその状況に相応しい動きを自ら考え、組み立てていくという、集団MCグループのライヴを感じせるタフなパフォーマンス。それは乱暴な言い方をすれば“アーティスト的”なライヴであり、“ヒップホップ・アイドル”という彼女たちのキャッチフレーズを引き合いに出せば、“ヒップホップ”の方向により針が振れているように感じるし、それが今のリリスクの興味深い点だろう。
しかし、ニュー・シングル「
つれてってよ / CALL ME TIGHT 」に見られるような、大人と子供の狭間の時に感じるような切なさや、ときめきと言った甘酸っぱい楽曲性は、彼女たちのアイドル性をしっかりと担保するものであり(もちろん、一番に担保しているのは彼女たちのキュートさであることは間違いない)、ヒップホップ・アイドルというオリジナリティをしっかりと形にしている。
この半年の動きは“これまでのリリスク”と“いまのリリスク”がどう結びつき、どう変わっていくのかという“変化”を見せる時間であっただろうし、彼女たちが12月16日に恵比寿LIQUIDROOMで行うワンマン・ライヴ〈TAKE ME OUT〉は、そこから更に“これからのリリスク”を明確に見せる機会になるだろう。本稿では、メンバーに加えてプロデューサーのキム氏に、“いまのリリスク”について話を伺った。
――まず、5月の新体制から活動をスタートさせた新メンバーの3人に、加入したことでアイドルのイメージが変わったかどうか、という部分から伺いたいのですが。
yuu 「全然考え方が変わりましたね。やっぱり、アイドルのイメージって、清楚で可愛らしい、ぶりっ子なイメージでした。でも、いまのリリスクのライヴは振り付けが無くなってたり、どんどん自由になっていってて。だから、普通のアイドルのイメージとは離れていってると思うんですけど、それでもお客さんに受け入れてもらえるのが嬉しいし、お客さんが認めてくれてるからこそ、アイドルから離れてるっていうんじゃなくて、“オリジナルなアイドル”になれてるんだと思います」
risano 「そうだよね。格好いいパフォーマンスを見せて、お客さんが楽しんでくれれば、それはアイドルだと思うし、そういうアイドルとして、もっと認めさせていければなって」
hinako 「最初は“これでいいのかな?”って不安もあったけど、いまは“ウチら格好いいし可愛くね?”って思います」
minan 「言うね〜」
――ヒップホップ的なセルフ・ボーストですね。
キム 「それぐらいカマしていこう!(笑)」
hinako 「だから“リリスクってかっけー!”って思いながら、いつもステージにいます。でもアイドルだから可愛い部分ももっと出したいと思うし、格好よさと可愛さの両方高められたら、マジ卍ですよね!」
――(新しい日本語過ぎるな……)。
hinako 「マジ最高ですよね!」
――最初からそれでお願いします(笑)。そして3人が加入して5人体制になったリリスクを、運営側は公式に“新体制”と呼んでいますね。今年1月にami、ayaka、meiが卒業する以前にも、リリスクはyumi、hina、erika、marikoの4人が卒業していて、その都度で体制は変わっていますが、今回の体制をあえて“新体制”と呼んでいる理由を、プロデューサーのキムくんに伺いたいのですが。
キム 「今年の5月からの活動を新体制とすることは、同時に結成から今年2月に活動休止に入るまでの6、7年のリリスクの動きを“旧体制”とすることになると思うんですが、旧体制としての活動の後半は、それまでにグループが培ってきたパフォーマンスや活動のクオリティを、そのまま煮詰めていくっていうフェーズに入っていました。だから精度は上がっているんだけど、プロデュース側としては、これ以上何をするべきなのか、っていうアイディアが浮かびにくくなってたし、何をするにしても、ある程度あらかじめ想像がつくようになってしまっていました。そんな中で、オリジナル・メンバー3人が同時に卒業することが決まった時に、運営側としては正直、解散っていう選択肢もあったんですね。でも、まだリリスクにはminanとhimeがいたんですよ。この2人は、素晴らしいセンスとポテンシャルを持ってる、簡単にいえば“格好いい”2人だった。そしてこの2人となら、もっと新しいこと、面白いことが出来るっていうイメージが持てたんですね。だから2人には、“新しいグループを1から作るぐらいの気持ちで、新体制になっても一緒に活動して欲しい”って話をしました。そうしたら2人も“一緒にやってきます”って強い覚悟を持ってそれに応えてくれたんですよ。この2人がいれば、全く想像がつかない、今までではたどり着けなかった、その先のフェーズにいけるんじゃないかなっていう気持ちが確信に変わりました」
お披露目ライヴ
――新メンバーが、運営側に新しいインスピレーションを生んだ部分もあると思うけど、もっと根本的には、minanとhimeがその部分を刺激する存在だったというか。
キム 「その通りですね。2人とも格好いいんだけど、それぞれにキャラクターがあって、それぞれ異なる輝きを放ってます」
――ただ“新しいグループを作る”ような気持ちだったとしたら、それこそtengal6からlyrical schoolに変化したように、グループ名を変えるぐらいの、パッケージからして変わったことが分かるような変化も考えられたと思うんですが。
キム 「新体制と言っても、いまの活動は、過去の活動を礎にしているのは間違いないんですよ。過去に強い影響を受けているから、その恩恵ももちろんあるのと同時に、それが枷となったり、制限になる部分もたくさんある。でも、それがあるから、過去のイメージ、旧体制のイメージから離れていったり、イメージを突き放していく努力や苦悩の中からこそ、“その先のアイディア”が、スタッフや運営だけじゃなくて、メンバーからも出てくるんですよね」
――思い出っていうのは非常に強力だと思う。美しくなっていくしかないから、それを塗り替えるのは大変ですよね。
キム 「だから、minanとhimeはメッチャクチャ厳しい環境の中で活動してると思うんですよね。新メンバーもそれぞれ、かなり色んな感情を抱いてると思う」
minan 「前の体制の曲をやると、みんな色々と思うだろうし、100%満足はしてもらえないと思うんですよね」
――そういう声は実際に聞いたりして思うことですか?
minan 「言われたこともありますね」
hime 「でも前の曲を聴きたい人もいるし……」
minan 「そのジレンマはあるんですよね」
hime 「過去の曲も大好きだし、やりたくないって気持ちは無いけど、でも聴くと旧体制と重ねるだろうし、どうしてもカヴァーとかコピーって見られるのはしょうがないかなって」
――僕も実際に、今の体制の最初のライヴの時に、ファンから“リリスクのコピー・グループに見える”っていう話を聞いたこともあって。ただ、いまはとにかく新曲をライヴごとに披露して、以前の曲をやるにしても振り付けを削ったりしてるから、見え方はかなり変わってきてるし、そのファンもふた月ぐらい経ったら“いまのリリスク最高じゃないですか!”って変わってて(笑)。だから現在のアプローチは正解だと思います。メンバーとしても、新曲に重点を置きたい?
minan 「そうですね。新曲の方が、みんなのイキイキ具合も強いんですよ。もちろん、前のいい曲たちも歌いたいんだけど、違いを見せる、新しいものを見せるっていう点を考えると、いまは新しいことをやった方がいいのかなって」
hime 「だから、新しくなったからには、新曲を中心にしていきたいんですよ」
minan 「変革期だからこそ、それは必要なのかなって。実を言えば、本当は新体制の初ライヴから、気持ち的には全部、新曲で行ければいいなと思ってて。だけど現実的には厳しくて、最初のワンマンでは新体制になった意味をなかなか見せられなかったんですけど、それが最近ようやく見せられるように、そして受け入れてもらえるようになった感触がありますね」
@JAM EXPO 2017
――なるほど。先程から少しずつ出ているように、いまのリリスクは、ライヴで振り付けやフォーメーションを削ったり、無くしてたりしています。そういったパフォーマンス・スタイルになった理由は?
キム 「キッカケはhimeだよね」
hime 「前から振り付けを少なくしたり、無くしたパフォーマンスをしてみたいと思ってたんですよね。それでTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL 2017)の前ぐらいに“フリを減らしましょう”ってキムさんに話したんですよね」
キム 「運営としても、新曲がどんどん増えていってるんで、そこに振り付けを入れると、その分だけ披露するまで時間がかかっちゃうんで、振り入れを省略してたんですよね。その動きの中で、メンバーも自由にパフォーマンスが出来るって感触があったんだと思う」
minan 「私の骨折もちょっと関係あるよね」
hime 「ですね。全面的にフリを減らしたのはそこでしたね」
minan 「TIFでいまの体制のリリスクに興味を持ってくれた人も多くて、“その人たちを夏のイヴェントでごっそり掴んでくぞ!”っていう大事な時期に骨折しちゃって。松葉杖が外れてもしばらくは動きづらかったんですけど、その時にhimeが“他のアイドルさんがめっちゃ振り付きで踊ってる中で、全く振りがなくて、しかも一人が棒立ちって、普通に格好よくないですか?”って(笑)。それまでは動けないってことが本当に不安で、“動かないで魅せる”なんて考えてもなかったんで、そのhimeの発想はスゴいと思ったし、そこに乗ってみようって。それで私自身、空気や表情で魅せることを考えたり、グループのパフォーマンスも変わっていった部分がありますね」
キム 「怪我の功名とはこのことですよ、まさに(笑)」
minan 「なんか軽いな……」
――振りを入れないというアイディアはどこから生まれたんですか?
キム 「himeと楽屋で
KANDYTOWN さんのライヴ動画の話をしてて、“あんな格好いい感じでライヴやってみたいです”って話があったんだよね」
hime 「KANDYのライヴ見たときの衝撃が忘れられなくて、あの自由な、ラフな感じが凄くよかったし、それをリリスクでもやりたかったんですよね。アイドルって常に全力で、1ミリも立ち位置も振りもズレちゃいけないみたいな感じだと思うんですけど、でも私たちは“ヒップホップ・アイドル”だから、そこから離れてもいいんじゃないなって。いまはどれだけ遊べるか、前の体制と違うことが出来るかが大事だと思うんですよね。だからこの半年はどうやったら変われるかなっていつも考えたし、その中で、メンバーも運営も例えば振りを減らすようなアイディアを楽しんでくれるから、スゴくやりやすくて。〈プチャヘンザ!〉の前奏の部分も、今までは自己紹介だったのを、いまはフリースタイルにしたり、ラップの被せも思い思いに入るようにしたり。そういう変化はスゴく楽しいですね」
キム 「himeが言うような、ステージ上で勝手に動いて、被せも思い思いっていうのは、実はtengal6の時にやりたかったことに近いんですよね。だけど、メンバーが思い思いに動く今のようなステージングって、全てをメンバーそれぞれに委ねている分、負担が大きくて大変なんですよ。振り入れも最初は大変だけど、一端入ってしまえば、後は精度を高めていけばいい。メンバーからの要望もある中で、徐々に振り付けがカッチリ決まっていったのが、旧体制のリリスクだったんですよね。それはそれで、いい表現が出来てたとは思うんですけど」
hime 「いつのリリスクにも、その時に合ってるスタイルがあると思うんですね。だから前の体制には、ガッツリ振りが入ってるパフォーマンスが、一番合ってたと思うんですね。でも今の体制には、いまの自由な感じが、一番個性が出せる方向なんだと思う」
キム 「新体制になって、思い思いにやってみたいって声がメンバーの方から上がるようになって、色んなことが“試せる”のがとにかくスゴくデカいんですよね。スタッフもメンバーもお互いに提案し合って“とにかく試してみよう”って出来るから、グループの進化にスピード感も生まれてるんですよね」
――単純にアイディアが生まれる量が増えるし、それを試す機会が増えますよね。
キム 「そういう“スピード感”が欲しいってことは、新体制が固まる前から、himeとminanとは意見が一致してて。リリスクが変わり続けるためにも、新しいことをどんどんやりたかったし、新メンバーにもどんどんついて来てもらわないといけなかった。だから、そのスピード感について来れるだけのスキルが、新メンバーにも必要だったんだけど、全員ダンス経験者っていうのもあって勘がいいし、吸収も速いんですよね。イベントの度に新曲が増やせているのは、いまのメンバーのスキルの高さによる部分が大きいし、そういうトライ&エラーの中で、合う服とか合う靴を選ぶみたいに、“合うスタイル”を探すことが出来てるんだと思いますね」
――そういった、アイドルの文法とは違うことを、アイドル・イヴェントであるTIFから本格化させたのは興味深いですね。
キム 「だから面白かったですよ。唯一じゃないですかね、走って登場しない、ラップしながらダラダラ出てくる、振り付け無い、お客さんに背中向けちゃう、って(笑)。でも、それが単に続くと、それもそれで“型”っぽくなっちゃうから、“それはやっちゃダメでしょ!”みたいなアクシデントをメンバーが起こすことで、そこでその型を壊したり、可能性の幅をメンバーに広げてもらってる感じはありますね。メンバーは直接ステージに立ってお客さんを見ながらライヴしてるからこそ、“喜んでもらえた”“ダメだったな”っていう気づきがあると思うんで」
――これはダメだろっていうのはありました?
キム 「基本はrisanoですね(笑)。いま、ライヴでは衣装としてバックパックを背負ってるんですけど、TIFの時に、risanoのバッグにたまたまバナナが入ってて、それをステージ上で食べたんですよ。ライヴが終わった後に面白かったよって言ったらそれ以来、ちょくちょく食べ物をバッグに入れようとするんですよね(笑)。でも、何かを食べるっていうのが面白いわけじゃないから、ってそこは止めさせて」
risano 「リュック持ってるから、なんか入れたくなるし、食べたくなるし」
キム 「定番のギャグみたいになると、目的が変わっちゃうからさ(笑)」
――新メンバーはそういった動きについてどう感じてますか?
risano 「最初の頃は、出来なかったらどうしよう、セットリスト通りに出来るかな、とか、ステージに立つ前は毎回緊張してて。でもいまは余裕が生まれたのか、ここでこう動いてみようとか、フリースタイルしてみようとか、のびのび出来るようになったし、とにかく楽しいですね」
キム 「TIFのスマイル・ガーデンでrisanoが……」
risano 「“NICE PEOPLE, NICE VIEW, CRAZY!”ってシャウトして」
キム 「あれはマジ最高だったな〜」
minan 「ホントに英語喋れるのかなっていう内容だけど(笑)」
――LAに2年半住んでたのが確かに怪しくなるルー大柴的な英語ですね(笑)。
risano 「もう思ったことがそのまま出ちゃったんですよね(笑)。パフォーマンス的にも、いろんなラッパーさんのライヴを見たり、曲を聴いたりして勉強してますね。ヒップホップ・アイドルの“ヒップホップ”の部分を強化していきたいって思い始めてます」
yuu 「私も毎回のライヴがどんどん楽しくなってます。生のお客さんの反応から、楽しんでもらえるんだな、ちょっと変えたほうがいいかなとか感じたり、特典会で色んな声を聞いて参考にしたり。メンバーからも、いつも刺激をもらうんですよ。自由なライヴだからこそ、打ち合わせも無いし、“こんなことするの?”って驚くことばっかりで、私も刺激を与えられるようになりたい。切磋琢磨っていうか、もっと自分も頑張ろうって気持ちでライヴに挑めるし、成長させてもらってると思いますね。まだまだ行くぞ!って思います」
hinako 「(minan、himeという)お手本になる2人もいるし、自分をよく見てもらうためにはどうしたらいいんだろうって考えてますね。でも、目立とうと思って前に出るんですけど、minanさんは後ろで“ボソッ”て歌ってるのに目立ってるじゃないですか」
minan 「ボソッとはしてないよ!」
hinako 「それが格好いいんですよ! “ポツン”て歌ってて」
minan 「……完全にディスってる」
hinako 「前にガツガツ行くだけじゃなくて、“端っこだけど目立つ”んだって」
minan 「……もういいよ(笑)」
hinako 「尊敬してるんです!」
minan 「大丈夫、伝わってる(笑)」
hinako 「私もそういう見せ方もしてみたいなって、日々勉強してます」
キム 「でも、ホントにスゴいなと思いますよ。いまのパフォーマンスは来年の夏ぐらいに出来てればいいなと思ってたぐらいのクオリティなんですよね。それがもう既に出来てるから、毎回が楽しみですね」
minan 「パフォーマンスがメチャクチャいいって言って頂く機会が増えて、自分たちでも驚くぐらい。それによってグループ全体のモチベーションがホントに高まってますね」
ドリームミュージックライブ
――9月からは対バン・イヴェント〈MY DATE〉を毎月開催しましたね。
hime 「第1回はアイドルさんとの対バンだったんで、ブレイクビーツに乗せて自己紹介したり格好よく見せて、2回目と3回目は、バンドさんとラッパーさんだったんで、そこでは格好よさを前面に出すよりは、敢えてぶりっ子な仕草を見せたり。そういう足し算・引き算を考えたりして、色んな吸収も出来たので、収穫は本当に大きかったですね」
キム 「新しくなったリリスクを色んなジャンルのアーティストやファンに見て欲しかったし、メンバーにとってもインプットの入り口になって欲しかったんですよね。tengal6の時にも
SIMI LAB さんと対バンしたりしてたんですが、そういう初期のマインドを取り戻したかった。もっと言えば、無邪気な、理屈抜きに自分たちがやりたいことをやろうって。そこで何かが引っかかって、リリスクの背中を推してくれればいいなと思ったんですよね」
risano 「色んな方のライヴを見ることは本当に刺激になりましたね。対バンしたSUSHI BOYSさんとか、サブスクリプションでとにかく聴きまくってますね」
yuu 「羊のことで一曲ラップが出来るんだ!って思ったよね(笑)。〈MY DATE〉でもたくさん刺激をもらったし、そこで吸収したものを、これからアウトプット出来たらいいなって。自分でも色んなアプローチがしたいし、それで“yuuちゃんこんなことも出来るんだね”って思ってもらいたい。アイドルさんのステージを拝見して感じたんですけど、ドキッとする、ハッとなるような動きや振りってあるじゃないですか。リリスクは振りが無くなったことで、自分でもそういう動きに組み込めるようになったんですよね。だから曲によっては、お客さんをハッとさせるような、狙い撃ちな気持ちでパフォーマンスしたりしてます(笑)」
hinako 「“釣る”は考えるよね(笑)。リリスクはメンバーみんな格好いいから、私はその中にちょっと可愛さを入れることで、ギャップ萌えがあるのかなと思うし、そこでお客さんを釣ろうと思ってます」
キム 「打算的だな〜」
――いや、本当に打算的な人はこうやって手の内を言わないと思うし、素直すぎて心配になる(笑)。
hinako 「あとはラップの被せも頑張ってますね。普通に被せるだけじゃ面白くないと思うし、メインの人の真似をしてみたり、トーンを高くしてみたり、被せの聴かせ方も考えたいなって。そうやって色んなチャレンジをして、面白くなるもの、可愛くなるものを手探りしてる感じですね」
キム 「これは言っておきたいんですけど、いまのリリスクのライヴは基本的に“音源”を被せてはいないんですね」
――いわゆる、ライヴにレコーディングしたヴォーカル音源を被せることで、ライヴでのヴォーカルをフォローするような手法は取っていないと。
キム 「それはお披露目のライヴから。いままでほぼ地声でやってるんで、まだ半年なのにこれだけのパフォーマンスが出来ることは、贔屓目無しで本当にスゴいと思う」
MY DATE
――話は変わって、ニュー・シングル「つれてってよ / CALL ME TIGHT」ですが、「つれてってよ」はyuuさんからのラップから始まりますね。
yuu 「最初なので、私のラップでその後に歌うみんなのテンションが決まってしまうんで、緊張感はあります。でも私自身“なんて素敵なの!”って感じた曲なので、この曲の世界観に、私の歌でリスナーを引き込めたらなって気持ちで歌ってますね」
risano 「自分の中で歌いやすいのは、ガツガツ・ノリノリって感じなんですけど、この曲はR&Bっぽい感じなんで、このビートでどうラップしようかなって最初はちょっと迷いましたね。歌詞も最初は意味が分からなくて」
キム 「遠回しだから?」
risano 「そう。“結局何が言いたいの?”って(笑)」
キム 「“バイトしない”とかハッキリ言わないとダメ?(笑)」
risano 「だから、ラブ・ソングなのかどうなのかなって。……結論なんだろ。素敵な曲だと思います(笑)」
――強引に纏めたな?(笑)
hinako 「私、滑舌が悪いんで、“美しい”が“美てぃ”になっちゃったりするんですよね。まあ、誤魔化してるんですけど(笑)、yuuがちゃんと曲の世界観にリスナーを引っ張ってるのに、私の滑舌で壊さないようにしなくちゃなって、不安と緊張はちょっとあります。でも、自分らしく、笑顔で明るく歌って、ちゃんと歌詞の世界が分かってもらえるといいなって。歌詞も曲もしっかりした曲なんで」
キム 「なんだその感想は(笑)」
hinako 「しっかりした、よく出来た曲だと思います」
キム 「ありがとうございます(笑)」
hinako 「あと、この曲って長くて……」
――語弊がありますが、ロング・ヴァースってことですね(笑)。
hinako 「それですそれです。集中力が必要なんですよ」
hime 「〈夏休みのBABY〉は細かくヴァースを割っていく感じだったんですけど、いまのメンバーは、ロング・ヴァースを蹴った方が、ラップの中で個性が出せると思ってたんですよね。だからこの曲の構成は嬉しいですね」
――先輩が見事に話を回収してくれました。そしてアイドルから“ロング・ヴァースを蹴る”という言葉が出るのも感動です(笑)。
hime 「個人的には、ビートに対して速く乗りがちなんですけど、この曲は後ろに乗った方が格好いいのかなと思って、そういうフロウにも気を使いましたね」
minan 「メンバーの個性がかなり強く出ているので、いまのリリスクを紹介する曲になってると思いますね。自分のヴァースで言えば、あんまりクドくならないようにしました。私、ソロ・パートがクドくなっちゃうんですよ。格好つけよとしちゃうっていうか」
――例えば「FRESH!!!」の歌い上げる感じとか。でも、そういうパートを任されるから、仕方ないのかなとも思いますが。
minan 「でも、なんか自分がダサいな〜って。だから、この曲は自宅で鼻歌で歌ってますぐらいの感じが出せたらいいなって。塩ラーメンみたいな」
VIDEO
――食べ物に例える必要が合ったかは分からないけど(笑)。では「CALL ME TIGHT」はいかがでした?
hime 「最後のパートは私なんですけど、聴いてもらえました?」
――もちろん。あれは……。
hime 「(早口で)オマージュの元が、
TWIGY さんの〈七日間〉と、
TOC さんの〈World View feat. TwiGy〉じゃないですか! もうそのパートがラップ出来るのがスゴい嬉しくて! もうあんなにレコーディングで手に汗握ったのは初めてでした!」
――himeさんががラップについて話し出すと超早口になるの、ラップ・オタクっぽくてスゴく面白いです(笑)。
hime 「もうマジでみんな分かってくれ!って(笑)。そういうオマージュがあるのも、リリスクならではだと思うんですよね」
hinako 「めっちゃ好きです、この曲」
――それはどんな部分が?
hinako 「全部」
――そりゃそうだろうけど……(笑)。
hinako 「可愛いです。とっても」
minan 「この曲はhinakoの可愛いスパイス入ってるよね」
hinako 「そうなんです! 私のラップのイメージは、“学年で一番モテる女の子”なんですよ。レコーディングの時のキムさんのダメ出しも“それじゃまだ2位だね”、OKの時は“よし! 1位になった!”って(笑)。だから私が一番可愛いんです」
minan 「言うだけはタダだな」
hime 「しかもそのパートだけだからね」
hinako 「だからそこだけ聴いてください(笑)」
yuu 「ホントにロマンティックで大好きな曲だったから、レコーディングもスムーズにいけるかも!って思ってたんですよね。だけど浮かんでるイメージ通りにラップできなくて、レコーディングでちょっとつまずいちゃったりして、やっぱり難しいんだなって。でも、本当にキュンキュンする、何度も聴きたくなる曲ですね」
risano 「ドレスを着て、ヒールを履いて『Dream Girls!』みたいな、私の中のイメージはそういう感じなんですよね。可愛くて格好よくて、っていう。
Beyonce 的な感じをこの曲ではイメージしましたね」
minan 「私は歌パートがメインなんですけど、作詞の大久保(潤也 / アナ)さんがそこに私のキャラクターに合わせた内容にして下さったのかなって」
hime 「大久保さんはマジで分かってくれてますよね!」
minan 「ホントにありがとうございます、って。メンバーのTwitterとかBlogもチェックして頂いてて」
yuu 「“いいね”とかも細かくしてくださって」
キム 「それじゃただのファンだよ(笑)」
minan 「そういうことじゃなくて、そこでメンバーに沿った世界観を考えてくれるってこと」
yuu 「そういうことか〜(笑)」
――両曲ともガーリーな側面が強くて、現在のライヴのタフさとは違う感触もありますね。
キム 「このメンバーでのアルバムを想定していってますね。いままでのリリスクの延長にはありつつも、そこではやってなかったことを目指して、いまのリリスクにもフィットする内容にしたいなって」
VIDEO
――そして12月16日には現体制で2度目のワンマンとなる〈TAKE ME OUT〉が恵比寿LIQUIDROOMで開催されます。
risano 「自分がいま持ってる以上のモノを出し切れるライヴにしたいですね。フロアのみんな、ヘッズのみんな、見にきてくれた方、運営……LIQUIDROOMにいる全員の心が、ライヴを通して一つになれたらいいなって。そしてライヴを通して、目標にしている日比谷野音にリリスクだったらいける!って、私たちだけじゃなくて、ヘッズのみんなも確信できるような、以心伝心出来るような、一つになれるライヴにします!」
hime 「まともなこと言ってる!」
キム 「以心伝心って言葉を知ってるんだ」
minan 「一期一会を“いっきいっかい”って読んだのに(笑)」
――いいこと言ったんだから潰し合いは後にしてください(笑)。
yuu 「お披露目以来のワンマンだから、心境としてはスゴく緊張してます。でも、まだ新体制を見れてない方もいると思うんで、ちょっとでも気になってる人には、絶対に来て欲しい。だからとにかく来て!って思うし、楽しんでもらえる自信もあります。いまの私たちを見て欲しい。一瞬も見逃せないライヴにしたいですね」
hinako 「全員でお客さんのハートをがっちりキャッチしたいですね。そして誰かしらを好きになって欲しい。みんなそれぞれ個性的だし、5人の中で誰かタイプはいるはずなので(笑)、ハートをキャッチされてって欲しいですね。一緒に楽しみましょう!」
hime 「これを“ひねくれてるな”って思って欲しくないんですけど、あんまり意気込みはないんですよ。どのライヴも同じ気持ちで立ってるし、次の日から始まるリリース・イベントも同じ気持ちでやると思う。だから、いつも100%出し切ってるし、LIQUIDROOMもいつものライヴをやるだけだと思ってます。でも今年のリリスクの集大成になると思うし、その期待は裏切らない、期待に絶対に応える内容にしたいですね。色んなことでヘッズの皆さんを振り回しちゃったんで、その感謝の気持ちを伝えたり、安心させるようなライヴにしたいです」
minan 「“リリスクのライヴがいい”っていうのは、前の体制でも言われてたことなんですよね。だけど、いま言ってもらってる“ライヴがいいね”は、以前とは違うニュアンスがあると思うし、リキッドではそのイメージ以上のライヴが出来ると思うんですよね。だから“ライヴがいい”で終わらない、それ以上のモノを見せたいし、“いまのリリスク”を見ておいて欲しいんですよね」
キム 「minanが言ったように、“いま”が一番変化していると思うし、“いまのリリスクはここまで出来る”ってところを見せたい。変わり続けること、更新し続けていくことで、良い未来は見えると思うんで、その意味でも“いまのリリスク”の証人になって欲しいんですよね。そういうライヴにしたいと思ってます」
取材・文 / 高木“JET”晋一郎(2017年11月)