昨年7月にシングル「
青い涙」で歌手デビューを果たし、オリコン・ウィークリー・チャートでも6位を獲得した
水谷果穂が、2ndシングル「
君のステージへ」を6月27日にリリース。テレビ東京系アニメ『
若おかみは小学生!』の主題歌にも起用されている爽やかな応援ソングは、儚さの際立った前作から一転、透明感ある力強い歌声で歌手としての進化を示している。TBS系『
ブラックペアン』等、数々のテレビドラマで女優として、日本テレビの情報番組「Going! Sports&News」ではお天気キャスターとしても活躍する彼女に初インタビュー。
――デビュー・シングルの「青い涙」と比べると、歌声もヴィジュアルもグッと大人っぽくなりましたね。去年11月に二十歳になって、やっぱり何か変わりました?
「二十歳になって、味覚はホントに変わりました。大人が好む食べ物が、急に全部食べられるようになったんですよ。コーヒーとか、わさびとか、ガリとか、紅ショウガとか。今までも食べられなくはなかったんですけど、別に無くてもいいと思っていたものの美味しさがわかるようになったというか、やっぱり焼きそばには紅ショウガが無いと始まらないんだなって(笑)。そういう味覚が二十歳で変わって、こんなに急に変わるんだ!ってビックリしました」
――すごいですね(笑)。では、歌手デビューをしたことで変わったことは何でしょう?
「お芝居で演じる役柄としてではなく、“水谷果穂”としてテレビやライヴに出ることが多くなって、人前に立ったり喋ったりっていうことには急激に慣れたと思います。最初はライヴのMCとかでも何を話せばいいのかわからなかったんですけど、もう、ホントに思ったことをそのまま口にすればいい!って。そう吹っ切ってやっていくうちに、だんだん自分の言葉で喋れるようにはなってきましたね」
――“思ったことをそのまま”って、例えば?
「“今日は疲れてますね”とか……」
――オーディエンスに?! そんな風に語りかけるアーティストって、滅多にいませんよ!
「いや、変に良いこと言おうとするより、素直に言っちゃったほうが受け入れてもらえるかなぁって(笑)」
――それはそうかもしれませんが……では、今日の本題に入りましょう。今回の「君のステージへ」は、数ある候補曲の中から2ndシングルに選ばれた1曲だそうですね。
「はい。まず、アニメ『若おかみは小学生!』の主題歌を歌わせていただくことが先に決まっていて。いろんな曲を試して歌っていたんですけど、この曲は最初に聴いたときからホントに爽やかで、アニメのイメージにすごく合うなぁと思っていたんですよ。なんだか緑みたいな印象があって、『若おかみは小学生!』にも勝手に葉っぱみたいなイメージを持っていたから、曲と作品が上手くリンクするなぁって。で、よくよく歌詞を見ると、主人公の女の子をそのまま歌詞に起こしたような感じにして頂いて“あ、ぴったりだな”と」
――そう言われると、アニメ『若おかみは小学生!』のロゴも緑ですよね。
「確かに! だから緑だと思ってたのかも(笑)」
――しかもタイアップが決まる前から、『若おかみは小学生!』の原作文庫も読まれていたとか。
「はい。単行本が水色で縁取ってあったので、そのときは水色っぽいイメージだったかも(笑)」
――では、実際に歌うときはアニメの主人公をイメージしました? それとも自分自身の経験を歌詞に重ね合わせて?
「ホントに全部試しましたね。自分に重ねて歌ったこともあったし、アニメをイメージして歌ったときもあったし、友達だったり家族だったりに置き換えて歌ったときもあったし。そうやって気持ちが変わるだけで、なんとなく歌い方も変わってくるんです。なので、いろんなパターンを試して良いニュアンスの歌い方を少しずつ見つけていって、最終的には大切な友達だとか家族を想って歌ったときが一番しっくりきました」
――歌詞を見ると応援ソングの色合いが強いですもんね。資料にも“大切な人を想って歌った曲”というコメントがありますが、具体的にはどなたに向けて歌いました?
「一番は妹ですね。当時、妹がちょうど受験で、私から見てもすごく頑張っていたから、応援したい人を考えたとき、妹の姿が真っ先に浮かんできました」
――なるほど。ただ、歌のメッセージに説得力を持たせるためには、自分自身の経験も必要になってくると思うんですよ。例えばAメロには“悔しくてひとりで 泣いた日”なんていうフレーズもありますが、そんな経験ってあります?
「そんなことしかないくらいです(笑)。歌に関しても歌唱力が足りないばっかりに自分の思うように歌えなかったり、それで練習のときに泣きながら歌っちゃったり……私、結構涙もろいんですよ。そういった自分の思い出とも重なるので、Aメロは歌っていてぐっときてしまうんですけど、一番自分が元気づけられるのは、やっぱりサビの“曲がり道も坂道も ゴールへ続く道”ですね。ホントに一歩一歩ひたむきに頑張っていこう!っていう気持ちになれるんです」
――裏を返すと、それだけ歌が好きだってことですよね。
「歌うことは小さい頃から好きでしたね。幼稚園のときは童謡だとか、自分で適当に歌を作って歌ったりもしてましたし。その時々で自分が好きだった人、流行ってた曲とかを、とにかく家でずっと歌ってました。別にストレス溜まっていたわけじゃないけれど、ただ、大きな声を出して歌うことが、すごく気持ちよかったんです」
――それこそ三姉妹の長女ということですから、妹さんたちとアイドルごっことかもしたんじゃありません?
「してます、今でもしてます! アイドルのMVとかをテレビで流して、ちょっとそれっぽい服に着替えて一緒に踊ったり(笑)」
――じゃあ、女優としてデビューしてからも、いつかは歌手デビューしたいと?
「いえ、歌でお仕事しようなんていうのは考えたこともなくて。まさか歌手デビューさせてもらえるなんて思ってもいなかったんですけど、最初に“声がいい”って褒めてもらったところから、じゃあ本格的に練習してみようかなと。そこから始まったので、ホントに少しずつ……ですね」
――では今回の2ndシングルも、少しでも1stより良いものにしたいという想いがあったはずですよね。
「そうですね。もう〈青い涙〉から1年経っているので、抑揚とかニュアンスとか当時は頭が回らなかった部分にも、今はイメージがどんどん湧いてくるんです。なので〈君のステージへ〉は、そのときできる一番良い状態で歌いたいなぁと考えてました」
――結果、真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐな曲になりましたが、ドラマ仕立てのMVでは水谷さんの兄役で、“うたのおにいさん”として有名な横山だいすけさんが出演されているとか。 「もう、すごく優しくて、本当に“お兄さん!”っていう感じでした。私や一緒に出演した友人たちにも距離感を感じさせないように明るく接してくださって、サビのダンスも一緒に練習してくださったんですよ」
――こんな真っ直ぐな応援歌でダンス?! ちょっと想像できませんが……。
「そういう意味ではCDとMVは切り離して考えていただいたほうがいいかもしれません。もちろん同じ曲なんですけど、CDでは真っ直ぐなメッセージを味わって“頑張ろう!”と思ってほしいし。でも、MVはホントに癒される映像になっているので、純粋にあったかい雰囲気を楽しんでもらいたいんです」
――じゃあ、元気づけられたいときはCDだけ聴いて、それで頑張った結果、疲れて癒されたくなったらMVを観れば良いと。アフターケアまで万全ですね。
「万全です(笑)。友達だったり家族だったり、大切な人たちと一緒にいるときの楽しい気持ちみたいなものが、このMVには出ているんですよ」
――だから友人役として、学生時代のご友人にも出演してもらったんですか?
「はい、静岡から来てもらいました。最初はエキストラの方に友達役をお願いする案もあったんですけど、もし本当の友達が出られるなら面白いかも?って話になって。“出ない?”って聞いてみたら、ビックリしつつも“えー、出たい!”って積極的にノッてくれて嬉しかったです」
――そのぶんリアリティが生まれますよね。さて、今作のタイトルは「君のステージへ」ですが、ちなみに水谷さん自身のステージって具体的にはどんなものでしょう?
「自分が“こうなりたいな”って、頭の中で漠然と目指してるものかなぁ? それは歌手と女優で分かれているものじゃなく、今はどっちも自分の一部なんです。だから片方が上手くいけば、もう片方も良くなるし、繋がっているんですよね」
――役の幅が広がれば歌の幅も広がりますよね。とはいえ女優と歌手とでは、必然的に目指す目標も変わってくると思うのですが。
「例えば女優だったら、主役とか大河とか朝ドラとかも絶対目指したいですけど、自分自身が持っているものを上手く使える役だったり、自分の周りにある要素の循環が良くなっている状態を目指したいですね」
――若手美人女優という正統派なイメージがあるぶん、もっと個性的な役をやってみたい気持ちもあります?
「そうですね。今は割と真面目だったり、優等生なイメージがある気がするので。例えば悪い役とか、ヤンキーみたいな役とかの経験もあると、逆に正統派な役も面白くやれるんじゃないかと思うんですよ。なので、いろんなものを試してみたいです」
――引き出しを増やすのは役者として大事なことですよね。では、歌手としての目標は?
「私自身が柔らかい曲調が好きで、そういう自分らしい曲が今まで多かったから、もっと面白い歌詞というか“こんなのも歌うんだ!”って驚かれるような曲も歌ってみたいですね。今まで演じてきた役柄的にも大人しいとか、しっかり者とかっていうイメージを持たれやすかったんですけど、例えば『Going! Sports&News』でお天気キャスターをやっている姿を見ていただけたら、もっと違う一面を知っていただけるでしょうし、もしかしたらそういう役にも繋がるかもしれないし。テレビ番組には飾らずに出ているので、それはそれで楽しんでもらえたらなと思います」
――バラエティとかも向いてそうな気がしますよ。
「あ、ゲストで出ると超楽しいです! だからバラエティ番組大好きなんですけど、ゲストではなくプロの芸人さんやタレントさんのポジションだったら、全然違うんだろうなぁって。ホントに皆さん、面白すぎて感動するくらい! プロってこういうことなんだと思いました」
――でも“楽しい”って言えるのが、まずは第一歩ですから。
「そうですね。今は歌手として、女優として、お天気キャスターとして、いろんな方面でお仕事させていただいてますけど、それぞれに興味を持って引っかかってもらえるように頑張りますので。ぜひ、どの活動も見てほしいです!」
取材・文 / 清水素子(2018年5月)