2003年に俳優デビューして以降、ドラマや映画、舞台など幅広いジャンルで活躍。とくに『エリザベート』のトート役、『ロミオ&ジュリエット』のロミオ役、『ファントム』のファントム役など、ミュージカル・シーンでの活躍がめざましい。ブロードウェイとウエストエンドのトップ・スターが日本に集結した舞台“4Stars”では、初演の2013年、2017年と連続出演して、その歌唱力を世界レベルで高く評価された。2018年はミュージカル『ブロードウェイと銃弾』のチーチ役で“第43回菊田一夫演劇賞”を受賞したのも記憶に新しい。2019年6月からは、トニー賞(2013年)でミュージカル部門・最優秀リバイバル作品賞他に輝いた『ピピン』の日本語版でタイトル・ロールを演じることも決まり、期待が高まっている。そんな城田優が満を持してニュー・アルバムをリリース。豪華ゲストを迎えた、ここでしか聴けないレア・トラック満載で華麗なるミュージカルの世界に誘う、とっておきの一枚だ!
――アルバム・タイトル『
a singer』には、“歌手・城田優を聴いて欲しい!”という想いが込められているのを感じました。
「歌手になるのは子どもの頃からずっと憧れて、続けて来たことだから。今回のアルバムではそのことを証明したかった。……と言いつつ、矛盾しているみたいですが、ミュージカル・ナンバーがほとんどなので基本的には“演じて”います。つまりは、ただキレイに歌うのではなく、歌詞の背景にある世界まで表現してお届けしたい。1曲だけ取りだして聴いていただいても、歌っているのがどういうキャラクターなのか、どういった物語のどんな場面なのかが皆さんに伝わるようなアルバムを目指しました」
――ミュージカルの世界に誘う入り口にもなるような、魅力が詰まった一枚です。名曲が多いので、収録曲を選ぶ時には迷ったりもされたのではないですか?
「まずは自分が実際に舞台で演じた役の、外せないナンバーから選びました。たとえば『ファントム』なら断トツで第2幕の〈母は僕を産んだ〉……第1幕の〈世界のどこに〉もスタッフから候補に挙がっていました。あと『ロミオ&ジュリエット』の〈エメ〉も舞台出演のお話をいただいた時にフランス語盤のCDで聴いて、“絶対に歌いたい!”と思った曲なので即決しました。舞台では共演できていないけれど、昨年ジュリエット役で高く評価され、いまや期待のミュージカル女優としても活躍されている乃木坂46の生田絵梨花さんとのデュエットで収録が実現できてよかった。ほかには、僕がアンソニー役で出演した『スウィーニー・トッド』から、この作品でいちばん美しくてピュアな楽曲だと思う、トバイアスのナンバー〈僕がついてる〉を。そして日本のミュージカル・ファンに愛されている『モーツァルト!』からは名曲〈僕こそ音楽〉を選びました」
――アルバムのオープニングには来年、出演が予定されている『ピピン』のナンバーを選びましたね。
「僕自身とても楽しみにしている作品です。1972年に初演され、2013年に新演出でブロードウェイで再演された『ピピン』の作品のテーマである“自分探しの旅”って、現代に生きる誰もが共感できる、普遍的な“問いかけ”だと思うのです。自分もブロードウェイでリヴァイヴァル版を観ましたが、そんな50年近くも昔に作られた作品とは全然感じなかった。この〈コーナー・オブ・ザ・スカイ〉という曲も、英語の歌詞は“猫には窓辺が、子どもには雪が似合う。じゃあ自分の居場所はどこだろう?”とか“川は曲がるところを流れ、鳥は空を行く。自分も心が自由になれる場所を探そう”という内容で、すごくメッセージ性があるしメロディも素敵。これを聴いて、日本語版の舞台にも期待していただけたらと思います」
――アニメ『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」や往年の名作『サウンド・オブ・ミュージック』からの超定番曲「マイ・フェイヴァリット・シングス」もそれぞれ聴きどころですね。
「ディズニーの長編アニメ映画って、僕にとってはもう完璧なミュージカル作品。なかでも子どもの頃からいちばん繰り返し観ているのが『アラジン』です。この曲もカラオケで何度も歌っているし、コンサートでとりあげたこともある。今回は、海外でも女優として活躍しているすみれさんの素晴らしい歌唱力を皆さんに聴いてもらいたくて、彼女とのデュエットで収録しました。僕は映画でオリジナルを歌ったレア・サロンガさんとも共演したことがあるのですが、すみれさんも負けてないと思いますよ。そしてスタンダード・ナンバーでもある〈マイ・フェイヴァリット・シングス〉は、思いっきりジャズ・アレンジで歌ってみました」
――しかしなんといっても、今回のアルバムの目玉トラックは“4Stars”のメンバーでもある世界的なスター歌手、ラミン・カリムルーさんとのデュエット「闇が広がる」でしょう! 城田さんが当たり役のトートではなくルドルフのパートを歌い、ラミンさんがトートを、しかも日本語で!
「去年“4Stars”のステージでやった時にお客さんの盛り上がりがハンパなくて、とくに千秋楽では拍手が鳴り止まなくて、まさにショー・ストッパーな一曲でした。僕からラミンさんに電話で“今回のアルバムにも収録したい”ってダメ元で頼んでみたら、二つ返事で快諾してくれたんです。なのでこれはラミンさんのファンにとっても貴重なレア・トラックだと思います。世界のトップ歌手と共演できた“4Stars”は僕にとってとても勉強になったし、あれ以来、ラミンさんには弟のように可愛がってもらっていて、本当に夢のような企画でしたね」
――そして、大ヒット・ミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』からは2曲も!
「どの曲も最高なのですが、初めて観に行った時に、冒頭の〈ザ・グレイテスト・ショー〉から強いインパクトを受けたのと、ヒュー・ジャックマン演じる主人公の夢を歌った〈ア・ミリオン・ドリームズ〉にガツンとやられて、2回目観に行った時もやっぱり〈ア・ミリオン・ドリームズ〉に超感動して、絶対にこれを歌いたいって思ったんです。〈ザ・グレイテスト・ショー〉はラップ調でちょっと難しかったかも(笑)。この作品がもし舞台化されたらぜひ出演したいですね。いまならザック・エフロンがやった役もまだできると思うので!」
――ラストを飾るのはドラマ『文学処女』の挿入歌でもある「イザベル」。これは
イル・ディーヴォも歌っていましたが、彼らのヴァージョンともまたテイストが違って格好いいです。
「スペイン語がわかるので、シンプルで切ない歌詞もいいなと思っていました。2013年の“4Stars”のリハーサルでこれを歌った時に、あの3人(レア・サロンガ、ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲス)が揃って“それいいね、優にぴったり!”って絶賛してくれたのが嬉しくて忘れられない。ようやく念願叶ってレコーディングすることができました。今回は現代のラテン・ヒットっぽいアレンジに挑戦してみました。かなり〈デスパシート〉を意識しているかも(笑)」
――6月の『ピピン』も楽しみですが、来年3月には中野サンプラザホールでコンサートもありますね。
「高校の入学式と卒業式、両方とも中野サンプラザだったので、僕にとっては特別な思い出の場所です。素敵な時間をお届けしますので皆さんのご来場をお待ちしております!」
取材・文 / 東端哲也(2018年9月)
“城田優コンサート2019〜a singer〜”2019年3月21日(木・祝)東京・中野サンプラザホール
開演 18:00
チケット: 9,500円(税込)
※全席指定。
※未就学児入場不可。
一般発売: 2019年1月12日(土)