2018年の夏に1st E.P『
at ONE 』でメジャー・デビュー。ブルース、ファンク、ディスコなどのルーツ・ミュージックに根差しつつ、現代的なギターポップに昇華した楽曲で注目を集めている
竹内アンナ から、E.P第2弾『
at TWO 』が届けられた。ヒップホップ、エレクトロなどを取り入れたポップ・チューン、原点である“アコギと歌”を軸にしたナンバーなどを収録した本作、そして、この1年間の変化などについて語ってもらった。
――2018年は本格的なデビュー・イヤーだったわけですが、振り返ってみるとどんな1年でした?
「とても充実した1年でした。3月の〈SXSW〉で行ったUSツアーによって体力、メンタルともに鍛えられました。その後、関西限定で『alright』をリリースし、8月にメジャー・デビューE.P『at ONE』をリリースしたことで、私の音楽をメディアを通して聴いてくださる方が増えましたし、いままではライヴ会場でしか出会いがなかったので、たくさんの方々に私を知ってもらえるのはすごくありがたいことだなと実感しています」
――状況の変化に伴って、音楽に対するスタンスも変わった?
「やってみたいことがどんどん増えました。1作目で関わってくださったミュージシャンから色々な音楽を教えて頂き、聴く音楽の幅も広がりました。
TLC の〈No Scrubs〉をカヴァーしたことで、R&B、ヒップホップも今まで以上に聴くようになって。いまのヒップホップのサウンドは“何でもアリ”というか、すごく自由で。何にも捉われない感じは、自分の音楽にも反映させたいと思っています」
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――E.P第2弾『at TWO』も新しいトライが多かった?
「1曲目の〈TOKYO NITE〉では自分の声をサンプリングして使っていて、2曲目の〈Free!Free!Free!〉ではエレクトロを取り入れるなど、ギターが中心になっていることは変わらないのですが、新しいことにもたくさん挑戦できて楽しかったです」
――収録曲についても聞かせてください。「TOKYO NITE」はシティ・ポップの進化型と呼びたくなるような洗練されたナンバー。
「今の私がやりたいことを詰め込んだ曲です。曲中でリズムが変わったり、ボサノヴァのテイストが入っています。あとギター・ソロと同じフレーズをスキャットで歌っています。スキャットは私が好きな
トム・ミッシュ や
ジャミロクワイ もやっていて、“いつかやってみたいな”と思っていました。短いフレーズですが、この曲に取り入れることができました」
――ラップのフレーズも入ってますね。
「前回の〈No Scrubs〉で初めてラップに挑戦したのですが、今回も挑戦したいと思って。韻を踏みまくることで、感情をたたみかけるように表現できたと思います」
――歌詞のテーマは、前作『at ONE』とつながっているとか。
「前作の『at ONE』では高校生の時に作った曲や、それ以前にも作った曲が収録されていました。言ってみれば、まだ子供のときに書いた曲が中心です。たとえば〈ALRIGHT〉は“ぜんぜん根拠はないけど、大丈夫!”みたいな漠然とした気持ちを歌っているのですが、いまは大学生になって“いいことばかりじゃない”という難しさもわかってきて」
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――現実と理想のギャップも感じるようになったと。
「そうですね(笑)。それでも憧れの場所でがんばることには意味があるし、“前を向いて努力していきたい”という気持ちを歌っています。〈TOKYO NITE〉は大変なこともあるけど、最後は明るくて前向きなメッセージやメロディに持っていけました」
――竹内さんのルーツは70年代のディスコ・ミュージックですからね。やっぱり楽しく盛り上がれないと。
「最近ドライヤーで髪を乾かす時に、イヤホンを付けてディスコ・ミュージックを聴きながら踊るのが好きなんです!(笑)。いつ聴いても元気が出るし、そういう音楽を現代的にアレンジしているアーティストもよく聴いています」
――2曲目の「Free!Free!Free!」も気持ちよくアガれるダンス・チューンですね。
「エレクトロに振り切った曲です。以前からよく聴いていたのですが、自分でやってみるのは初めてでしたし、これもひとつの挑戦です。私がアコギでデモを作り、それをトラックメイカーの方にアレンジして頂きました。アコギのソロも入ってとてもいい形でミックスできました。そういう作り方も初めてだったし、データでやりとりしながら曲を作るのもおもしろくて。最近少しずつ自分でもトラックを作っているのですが、もっともっと上達したいです!」
――制作の幅も広がりそうですね。歌詞には去年のUSツアーのときに感じたことが反映されているとか。
「ニューヨークに行ったとき、ブルックリンの街中をひとりで散歩していたら、すれ違う人がみんなカッコよく見えました。みんな個性的で、自分に自信を持ってしっかり胸を張って歩いているなって感じました。私は人目を気にするところがあるし、“今日の服、イマイチじゃないかな?”みたいに堂々とできないことがあって。そういう気持ちは誰にでもあると思うし、“自分らしさを大事にしよう”というメッセージを込めた曲を作りたいなと」
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――特にアーティストにとっては大切なことですよね。
「この曲をE.Pに収録することが決まった頃も、自分と他の人を比べて色々考えたり、気持ち的にアップダウンを繰り返していて。〈Free!Free!Free!〉の歌詞を改めて読み直して、“そんなに気にしなくていいんだ”と自分で気づかされたというか。歌詞にも出て来るのですが、“あの人みたいになりたい”と思っている憧れの人も、私にはなれないじゃないですか。当たり前のことだけど、そのことを改めて認識することで、心が軽くなりました」
――「ペチュニアの花」はアコースティックな手触りの楽曲。大切な人に思いを伝えることをテーマにした歌詞も印象的でした。
「明日は何が起こるかわからないし、後で後悔しないためにも大切な人にはいつも優しい言葉をかけるようにしたいなって。もし言いたいことがあるのなら、後回しにしないで、そのときに伝えたほうがいいと思っていますし、そういう距離にいられることも、ありがたいことです」
――アコギと歌を軸にしたアレンジも、歌詞のメッセージ性にすごく合っていて。
「ほぼギターと歌だけのシンプルな曲なので、自分の7年間のギター人生のなかで吸収してきたものをサウンドに反映したかったです」
――ということは、竹内さんがもっともリスペクトする……
「はい、
ジョン・メイヤー の影響も入っています(笑)。全体としてはフンワリと温かい雰囲気だけど、ところどころに変拍子を取り入れ、いろんなテクニックや表現がちりばめられていて、ギター1本で完結させるためにアレンジャーさんともいろいろ相談して、コンパクトなサイズでしっかり世界観を表現できたかなって。アコギと歌は私の原点でこういう曲を収録することで“やっぱりコレだな”って再確認できました」
――以前のインタビューで「ジョン・メイヤーの若い頃の演奏を観て、“いまの練習じゃダメだ”と思った」と話してましたけど、それはいまも継続中?
「もちろんです。練習というよりは好きだから弾いていますので何時間弾いていてもぜんぜん苦ではないです。今はひたすらカヴァーをやっています。これも当たり前のことだけど、聴くだけではなく実際に演奏することで身に付くことはたくさんあると気づきました。コードの響きだったり、曲の構成だったり……」
――最近はどんな曲をカヴァーしてるんですか?
「最近はブルースが多いです。いま練習しているのは、これもジョン・メイヤーが演奏しているのですが、〈Wait Until Tomorrow〉という曲。ギターのフレーズ自体はそれほど大変ではないのですが、歌いながら弾くとめちゃくちゃ難しいです。完全にマスターできたらライヴで披露するかもしれません(笑)」
――今回のE.Pにもカヴァー曲を収録。
ガンズ・アンド・ローゼズ の代表曲「Sweet Child O' Mine」ですが、ホーンを交えたアレンジが新鮮でした。
「しっとりと始まって、だんだんクレッシェンドして、原曲のロック感に近づいていくアレンジで私も気に入ってます」
――この曲、去年のUSツアーでも大ウケだったそうですね。
「そうです! 7都市を回るツアーだったので、その土地に縁のある曲をカヴァーしようと思って。ガンズの曲はロサンゼルスで演奏したのですが、リハのときからお客さんがサビのフレーズを一緒に歌ってくれて、“めっちゃウケるやん!”って(笑)。結局、全公演でやりましたがどこも大合唱で、みんな喜んでくれて。曲のパワーを改めて実感しました。他にも何曲かカヴァーしましたが
シェリル・クロウ の〈All I Wanna Do〉も一緒に歌ってくれました」
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――“らしさ”もあり、新鮮なサウンドもあり。いろいろな表情を楽しめる作品になりましたね。
「1作目を聴いてくれた人が『at TWO』を聴くと“ガラッと印象が変わった”と思われるかもしれません。1曲1曲のサウンドも違うし、“竹内アンナって、こういうサウンドもできるんだな”と楽しんで頂けたらとても嬉しいです」
――『at TWO』の楽曲がセットリストに加わると、パフォーマンスの幅も広がりそう。
「エレクトロの曲もあるので、トラックにアコギを合わせることも出来るし、ステージでやれることは増えると思います。今は“ひとりでどこまでやれるか?”ということを意識して、いろいろと試しながら自分らしいパフォーマンスを作って行きたいです」
――期待してます! ちなみに他のアーティストのライヴも観てますか?
「気になるライヴは積極的に観に行きます。最近だと
MURA MASA とか、
テイラー・スウィフト のライヴも観に行きました。 テイラーや
YUI さんをきっかけにシンガー・ソングライターという存在を知ったので、大好きなアーティストのライヴを観られるのはとても幸せです」
――テイラーも変化を恐れないアーティストですよね。
「カントリーをやっていた頃から大好きで聴いていたので、〈Shake it Off〉が出たときはビックリしました(笑)。それでも変わり続ける姿勢、常に自分をアップデートさせるスタイルはすごく好きだし、自分も見習ってそんなアーティストでありたいなと思います」
取材・文 / 森 朋之(2018年12月)
■2nd E.P『at TWO』発売記念ミニライブ&サイン会 2019年1月28日(月) 大阪 タワーレコード梅田NU茶屋町6F イベントスペース 開演 19:302019年2月6日(水) 東京 HMV&BOOKS SHIBUYA 6F イベントスペース 開演 19:302019年2月10日(日) 愛知 草叢BOOKS新守山店 イベントスペース 開演 15:00■2nd E.P Release Live『at TWO』 2019年4月7日(日) 大阪 心斎橋 Music Club JANUS 開場 15:30 / 開演 16:00前売 3,500円 / 当日 4,000円(税込 / 別途ドリンク代) ※お問い合わせ: キョードーインフォメーション2019年4月12日(金) 東京 渋谷 TSUTAYA O-nest 開場 18:30 / 開演 19:00前売 3,500円 / 当日 4,000円(税込 / 別途ドリンク代) ※お問い合わせ: HOT STUFF PROMOTION