今年2019年7月に行なわれたフジロックフェスティバルにリアム・オ・メンリィは、ドラマーの池畑淳二が率いる苗場音楽突撃隊を中心とする11人編成のオーケストラ、ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRAのゲストの一人として参加し、ソロでの演奏も行なった。昨年のフジロックフェスティバルにリアムは、1980年代半ばに結成したホットハウス・フラワーズで登場している。
フジロックフェスティバルだけでなく、これまでにリアムは何度も来日してコンサートを行なっている。ときにはソロ、ときにはホットハウス・フラワーズ、ときにはアンディ・ホワイト、ティム・フィンとの三人で組んだユニットのALT、それにドーナル・ラニーのバンドやキーラ、スティーヴ・クーニーやグレン・ハンザードが組んでいたスウェル・シーズンなどアイルランドのミュージシャン仲間と一緒に、あるいはイングランドのサム・リー、はたまた山口洋やアイヌのトンコリ奏者のOKIといった日本のミュージシャンたちと一緒になど、多くの人たちとさまざまなかたちで自由にセッションをして、自分の音楽を奏でている。
そしてこの10月にはまたまたホットハウス・フラワーズで日本にやってきて富士山麓での朝霧ジャムや東京・渋谷のCLUB QUATTROでライヴを行なうことが決まっている。
今年のフジロックフェスティバルの出演を終えたばかりのリアムに、ホットハウス・フラワーズのことやソロ活動のこと、さまざまなミュージシャンとセッションをすることについて聞いてみた。
――今年のフジロックフェスティバルはROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRAのゲストで参加したりしましたが、あなたはいつでもいろんなミュージシャンとのセッションやコラボレーションを、自由に心から楽しんでいるようですね。
「たしかにあらゆる機会を楽しんでいるよ。子供が経験豊かな大人たちからいろんなことを学び取るのと似たようなところがセッションにはある。言葉やメロディを通じてというより、“ジージー”というセミの鳴き声の周波数に反応するかのように、ヴァイブレーションで共感し合えるからね」
――最近参加したセッションやコラボレーションの中で、とくに面白かったというものは何かありますか?
「この5年か10年、アイルランドでやっているイムラム(IMRAM)というのが面白いね。これはアイルランドの詩人のリアム・カーソン(Liam Carson)がスタートさせて、ディレクターをつとめているフェスティバルで、彼がボブ・ディランやレナード・コーエン、デヴィッド・ボウイやヴァン・モリソン、それにブルース・スプリングスティーンやニック・ドレイクの歌詞をゲール語に訳して、それをいろんなミュージシャンが歌うというプロジェクトなんだ。記録に残すというものではなく、コンサートや短いツアーをするだけだけど、ぼくは最初はゲール語でディランを歌うコンサートに参加し、それからレナード・コーエンを歌うコンサートにも参加した。コンサートは大成功で、すばらしい経験をすることができた。ディランやレナード・コーエンの歌詞をゲール語に翻訳して歌うなんてほんとうに興味深い。それから昔からの知り合いのドーナル・ラニーとのセッションも回数を重ねるたびに素晴らしくなっていくばかりだね」
――ディランやレナード・コーエンのどんな歌をゲール語で歌ったんですか?
「ディランは〈プレッシング・オン(Pressing On)〉や〈ブルーにこんがらがって(Tangled Up In Blue)〉、「エヴリィ・グレイン・オブ・サンド(Every Grain Of Sand)」、それに「ライク・ア・ローリング・ストーン(Like A Rolling Stone)」も歌った。レナード・コーエンは「パルチザン(The Partisan)」や「フューチャー(Future)」とか。コンサートでは「さよならマリアンヌ(So Long Marianne)」や「スザンヌ(Suzanne)」、「フェイマス・ブルー・レインコート(Famous Blue Raincoat)」といった有名な曲も取り上げられていた」
――「ライク・ア・ローリング・ストーン」のサビのところをゲール語で歌うとどうなるんですか?
「マルホロック エンホブロック〜」(と、歌ってくれる)
撮影/花房浩一(2018年7月31日@東京 渋谷CLUB QUATTRO)
――誘いがあっても参加したくないコラボレーションとかセッションもあるんですか?
「めったにないね。あまり乗り気になれないものがあったら、すぐに返事をせず、黙ったまま、どう展開していくのか様子を見るんだ。自分のどんなところが求められているのかも確かめてみたいしね」
――ソロ、バンド、ユニット、さまざまなセッションやコラボレーションなど、あなたはいろんなかたちで音楽活動を続けていますが、その中でもやはりホットハウス・フラワーズというのはかけがえのない特別な存在なんですね。
「そうだね。メンバーのフィオクナ(・オ・ブラニアン)とピーター(・オトゥール)とは、10代半ばから一緒に音楽をやって、ずっと同じ時間を過ごし、同じ経験を分かち合ってきた。一緒に音楽をやればすぐに共通の場所にアクセスできる。いつも三人が一緒になって発展してきたというか、進化してきたんだ。だからほかの誰もが入れ替わることができない組み合わせなんだ」
――普通バンドというと休止したり、解散したり、再結成したりと、そんな活動形態になってしまいますが、ホットハウス・フラワーズはそんなバンドとは異なるもっとスピリチュアルな結びつきのようにも思えます。
「たぶんそうなんだろうね。ホットハウス・フラワーズはもうおしまいだなんてぼくらの誰一人として言っていないし、こんなにも遠くまでやってきたけどバンドの物語はまだこれからもどんどん続いていくんだ。ホットハウス・フラワーズは過去のものを再生産するんじゃなくて、新しいものを探し、生み出し、今も音楽の女神との会話を続けている、生き生きとしたプロジェクトなんだ。10月の来日公演はホットハウス・フラワーズの核となる三人だけでやってくる。最高のトライアングルで、最近も三人で南アフリカに行って、現地のミュージシャンたちとセッションをしたんだ。三人でいるといつもスペシャルなことが起こる。ドラムスやベースがいなくてもぼくらはバンドなんだ。10月は三人での演奏だけでなく、他のミュージシャンたちとのセッションもどこかでやれたらいいなと思っている」
VIDEO
VIDEO
取材・文/中川五郎
ホットハウス・フラワーズ Live Schedule
撮影/花房浩一(2018年7月31日@東京 渋谷CLUB QUATTRO)
■単独公演 2019年10月11日(金)
東京 渋谷 CLUB QUATTRO
開場 19:00 / 開演 20:00
前売 5,800円(税込 / 別途ドリンク代)
※お問い合わせ:SMASH 03-3444-6751
■〈朝霧JAM〉 2019年10月12日(土)〜13日(日)
静岡 富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら
https://asagirijam.jp/