昨年冬にカヴァーEP盤「BIRDSONG EP -cover BEATS for the party-」をリリースし、あっと驚く選曲とプロデューサーの人選で名曲に新たな命を吹き込んだbird。彼女がこの夏に放ったカヴァー集第2弾『MY LOVE』は、birdに歌ってほしい曲をリスナーから募集し、多く寄せられたリクエストから厳選された“夏のラブ・ソング”集だ。
「去年からカヴァーを続けていて、私はなんで歌ってんのやろ、という想いにふと行き着いたんです。もちろん楽しいからだけど、ほかにもきっと理由があるはず、と考えたときに、私は普段上手に言えへんことを歌に託して人と繋がりたいのかなと思って。それなら伝えたい感情のなかで、一番あったかい気持ち――あなたが好きです、とか、ありがとう、という気持ちをたくさん歌いたいと思ったんです」
一言にラブ・ソングといってもいろいろあるけれど、『MY LOVE』の選曲はまさに王道! 1曲目から“ああ 私の恋は南の風に乗って走るわ”と歌う松田聖子のラブリーでスパークリングな国民的ソングで幕を上げる。
「〈青い珊瑚礁〉は、歌ならではの醍醐味をもっとも感じる曲ですね。歌詞は日常会話に出てきたらドキドキしちゃう表現が満載なんですけど、言葉が声とメロディに乗ることで物語が生まれる。そういう歌にトライするのは歌い手にとって刺激的だし、どんなふうに歌おうって考えるのは楽しくて、実りあるひと時でした」
そのほかにも、KinKi Kids「ジェットコースター・ロマンス」、真心ブラザーズ「サマーヌード」、スピッツ「青い車」、フリッパーズ・ギター「恋とマシンガン」などなど、押しも押されぬ名曲がズラリ。そこにラテンやボッサのフレイヴァーで涼やかな夏の表情を加えているのが、YOYO(
SOFFet)、
Saigenji、
Kenmochi Hidefumi、
GIRA MUNDOといった多様なジャンルを横断するアーティストたちだ。
「名曲にはメロディの強さと言葉のリズムがあるので、テンポ感は大事にしました。たとえば(CHEMISTRYの)〈Point of No Return〉のトラックはアッパーなドラムンベースですけど、歌ってみるとメロディは意外にゆったりしてる。これは音をたくさん入れずにシンプルなアコースティック・ギターのグルーヴと歌だけでいこうと思って、Saigenjiさんに演奏をお願いしました。やっぱり名曲は一緒に口ずさめないと、って思います」
目指したのは、リスナーの思い出と音がまざりあい、記憶のなかにすっと溶け込む歌。ジャケットのアートワークも彼女が撮りためた写真から、とっておきの夏の風景が綴じられている。デビューから10年、歌を楽しむbirdの素顔と遊び心を感じる納涼アルバムだ。
「デビューの頃に比べると、歌うことがだいぶん楽になったかな(笑)。一番大きな変化は妊娠期間中、おなかが大きくなって体が安定したときに、自然な声の通り道ができたんです。その感覚が子供を産んだ今も残ってる。体が楽器なので、これから体も声も変わっていくと思うけど、そのときどきの声を楽しんでいきたいなと思ってます」
取材・文/廿楽玲子(2008年8月)
【bird 2008 LIVE!「NEW BASIC」決定!】
●2008.11.21(金)大阪BIGCAT
●2008.11.29(土)名古屋CLUB QUATTRO
●2008.12.12(金)東京 赤坂BLITZ
※詳細はオフィシャル・サイト(
http://www.bird-watch.net/)でご確認を。