神出鬼没の激烈エレクトーン奏者TUCKER、語る!

TUCKER   2007/05/11掲載
はてなブックマークに追加
 果たしてモンドかハードコアか! ユニクロCM (2005年冬放送)に登場したかと思えば、映画『ゲゲゲの鬼太郎』の音楽を担当。AIAFRAとのコラボ曲で弾けつつ、ジャッキー・アンド・ザ・セドリックスや、マニー・マークのツアー参加……と、国内外を問わず活躍するTUCKERの魅力に迫ります。


 “この男は一体何者なんだ!?” TUCKERのライヴを観るたびに、頭の中には“!”マークと“?”マークが浮かぶ。彼はエレクトーン奏者でありながら、激しいステージングで知られ、“ハードコア”なプレイを披露。超絶的なテクニックを持つターンテーブリストでもあり、ステージ上にてドラム、ベース、ギターを弾いてループさせ、一人で演奏することもあるし、時にはがらくたやおもちゃすら楽器にしてしまう。しかも、ヒップホップやドラムンベースのパーティに登場するだけでなく、活躍の場も国内外で、場所を選ばず神出鬼没。この男が通った後には常に驚きと謎が残される。そんな彼のルーツとは――

 「最初に弾いた楽器はギターですね。高校時代は家で延々とジョニー・ウィンターのコピーをしていて、その後、うちの母ちゃんが実家にあったエレクトーンを弾いてるのを見て、面白いなと思ったんです。最初はふざけて弾いていたんですけど、エレクトーンの面白いレコードを見つけて聴くようになって、ハマっていったんですけど。すでにその世界のエキスパートがいる楽器をやっても芽が出ないだろうし、人があんまり弾いてない楽器を探していたこともあって、これはちょうどいいな、と。ターンテーブルは、そのへんの知識がまったくなかったんですけど、渋谷の中古レコード屋でバイト中に流していた(米国の今はなきターンテーブル集団)Invisible Skratch Piklzのバトル・ビデオを観ているうちにすり込まれて……」



 ステージ・ダイヴ、逆立ちなど“優雅な”エレクトーンを演奏する姿とはおよそ結びつかないアグレッシヴなプレイが収録された初DVD作品『QUIET RIOT』を観れば、言葉と同様に放射状に放たれる彼の表現のベクトル一つ一つが徹底的に突き詰められ、その先で反転する。次から次へと語られる彼の世界は一見複雑に入り組んでいるようでいて、実は非常に明快。万人が“アクセス可能”なほどにポップかつユーモラスな表現へと昇華されていることが一目瞭然なのだ。

「ノイズとか、そういう音楽の世界も好きなんですけど、実験めいたことをそれこそ実験っぽくやると分かりづらくなるので。……たとえば、ギャル男が客席にいたとしても、盛り上げたいというか、実際にあったことなんですけど、ライヴを観たギャル男から“ヤバかったっす!”って言われて、こちらもヤバかったっていう(笑)。そんなふうに、最初から気に入ってくれるとは想像できないオーディエンスにも評価してもらえることはうれしいし、そういう間口は広くしたいな、と。ただ、お客さんに歩み寄りすぎてもおかしなことになるので、そのバランスを保つことが自分のテーマですね」

 本作には代々木公園やソナー・フェスティバル、ロンドンのクラブやCSテレビのスタジオ・ライヴ、はたまた、ショート・ムービーにビデオ・クリップ、ガレージ・バンド、ジャッキー・アンド・ザ・セドリックスやマニー・マークに帯同した海外ツアーの模様などがぎゅっと凝縮。激しく弾き倒して、火すら点けてしまうエレクトーンの演奏を中心に、そのほかの楽器も使いつつ、イージーリスニングからダンス・ミュージック、ハードコア/ヘヴィメタルまでをカヴァーするジャンル不問の音楽性は、聴き手の心と身体を揺らし、観る者を狂喜させる。では“!”と“?”の中にある、TUCKER自身からのメッセージとは――

「大人が若者に“これはカッコイイでしょ”って差し出すものとは違うものを提示していきたいんです。みんな、既成の概念に縛られてるというか、枠にあてはめられちゃう世の中なんで、そんな風潮に対する怒りと、ただただ、好きなことをやり続けるっていうことを見せたいな、と。エレクトーンにしても、僕が最初見た時はカッコイイ楽器だとは思わなかったけど、やっていくなかで自分の一部として、強引にカッコイイものとして打ち出していったわけで。そういう事が面白かったりするし、そうやって自分らしさを出すことがいいことだとみんなにも理解して欲しいですね」

取材・文/小野田 雄(2007年4月)

最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 中国のプログレッシヴ・メタル・バンド 精神幻象(Mentism)、日本デビュー盤[インタビュー] シネマティックな115分のマインドトリップ 井出靖のリミックス・アルバム
[インタビュー] 人気ピアノYouTuberふたりによる ピアノ女子対談! 朝香智子×kiki ピアノ[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く
[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん
[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催
[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン
[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015