平原綾香が
「Jupiter」のときと同じ手法で、クラシックの楽曲をモチーフにした
新曲を11月12日に発表する。今回モチーフとなったのは
ショパンの「ノクターン」。切なくも美しいメロディにのって綴られる“至上の愛”が歌われる本作は、平原綾香が女優にも挑戦したフジテレビ開局50周年記念ドラマ『風のガーデン』(毎週木曜日放送中)の主題歌にもなっている。また、両A面となる「カンパニュラの恋」もドラマに関連した作品。そこで、ドラマと本作について平原綾香に話を訊いた。
現在、毎週木曜日に放送中のドラマ『風のガーデン』で氷室茜というシンガー役で女優としてフィーチャーされている平原綾香。脚本は
倉本聰で、出演は
中井貴一、
黒木メイサら。そして
緒形拳の遺作となったドラマだ。末期癌を抱え、余命を宣告された主人公の“最後に帰る場所”がテーマ。平原は、中井貴一が演じる麻酔科医の最後の恋人という、物語のキーパーソンとなる氷室茜の役を演じている。倉本聰の作品ならではのリアリティのあるヒューマン・ドラマで、昨今の世の中で失われつつある“命の尊さ”を改めて教えてくれる物語だ。
「ドラマのお話をいただいたときは自信もなかったし、ミュージカルとか演劇だったら文化祭とかでやったことがあったんですけど、ドラマというのはイメージが湧かなくて。でも、やってみようと思ったのは、作品が素晴らしいと思ったのと、倉本先生がじきじきに言ってくださったからです」
“歌手の役は歌手にしかできない”という倉本聰のこだわりと熱意で実現したこのドラマの出演。主題歌は、倉本が考えていた“クラシック”というこだわりと、平原がもともと録音していた楽曲が合致したことがきっかけとなった。その曲が、ショパンの夜想曲をモチーフとした楽曲「ノクターン」だ。大切な人との永遠の別れに直面した場面の悲哀を超えた神聖な時の流れに、息をのむほどの世界観が見事に構築された一曲だ。
「もともとショパンの〈ノクターン〉をデモで1年前くらいにレコーディングしてあったんです。それは〈Jupiter〉とか〈シチリアーナ〉みたいにいつか歌いたいと思っていて。そのときに英語の詞も付いていたんです。それで、倉本さんとドラマの話をしたときに、先生の前で歌ってみたら“いい曲だね”って気に入っていただいて。私自身も最初にデモを聴いたときは、こんな曲を歌ってみたいって思いました。自分の歌も想像できたし、ショパンの〈ノクターン〉は好きだったので。もともとシャンソンも好きで、同じようなもの悲しさを〈ノクターン〉にも感じていました。表面的ではない、すごいスピリチュアルな歌に聴こえるときもあるし、前世とか生まれ変わりとか。一言では表わせない感じがしますね」
本作では、歌入れも緻密に行なわれたという。ピアノ主体の美しい旋律にのって、“至上の愛”をじつに流麗に歌っている。愛する人への溢れる想いを心の奥底に押し込めるかのような歌い方が、楽曲の持つ切なさをさらに増幅させている。
「歌は、ピアノを弾くように、音を置いていくメロディを大切にしようと思っていました。あまりにも有名なメロディだし、この曲のファンの人にも気に入ってもらえるように、ピアノを弾いてちゃんと音の運びを感じながら歌いました」
そして、両A面として収録される「カンパニュラの恋」は、ドラマのストーリーと密接な関係のある楽曲で、倉本と相談するなかで時間をかけて制作されていった。
「歌詞に“カンパニュラ”って言葉を使うことは決まっていたので、そこから私が日本語詞を付けました。倉本さんとも何十回かやりとりをして、時間はかかりましたね。カンパニュラって有名な花ではないので、花だということがわかるように言葉を探したり、花言葉を調べたり……実はこの曲はドラマのとても重要な場面で登場するんですよ、お楽しみにしててください」
また、今回のシングルにはスペシャル・トラックとして、
ララ・ファビアンのカヴァー曲「BAMBINA」も収録される。こちらもドラマの中で歌われる曲だ。本作をリリースし、11月には全国4ヵ所を廻るライヴ・ハウス・ツアーが行なわれる。このライヴは「ノクターン」を生で体感できる初めての場となるだろう。その後には、待望のアルバムのリリースも控えている。
取材・文/清水 隆(2008年9月)
【平原綾香 Live House Tour 2008】
●11/5(水)ZEPP NAGOYA(名古屋)18:00/19:00
●11/13(木)ZEPP SENDAI(仙台)18:00/19:00
●11/18(火)赤坂BLITZ(東京)18:00/19:00
●11/19(水)なんばHatch(大阪)18:00/19:00
※チケット料金:全公演5,000円(ドリンク代500円別途)