――この『MY WORD IS BOND!』にて本格的なソロ活動をスタートさせるとのことですが、DOGGさんにとって“ソロ”という活動形態は、どのような表現の場になると考えていますか。MIC JACK PRODUCTIONでの活動との違いも含めて教えてください。
「MIC JACK PRODUCTIONでのビートメイクの場合は、コンセプトがしっかりしていて。ヴァースのサイズや、曲のはじまり方、タイトルなどがRAP MUSICという前提です。ソロの場合は、総合という形態を意識できるような気がします(RAPPERに提供する可能性も含め)」
――お名前の“DOGG”と“PERRO”、どちらも“犬”ですよね。どのように使い分けているのでしょう。また、その由来はありますか。
「DOGGというと、国によっていろいろなニュアンスで使われていると思います。B.I.G JOEが僕のことを“DOGG”と呼び、LA MANO FRIAは僕のことを“PERRO”と呼ぶんです。それだけです。使い分けるという意味では、まだリリースはしていませんが、別の名義を用意しています」
――『MY WORD IS BOND!』は、純然たる新作というよりも、これまでのDOGGさんの活動を総括する、いわばヒストリーを綴った作品としての意味合いが強く感じられるのですが、制作へ動き出すきっかけは何でしたか。
「ここ数年DJをするときは、自分のビートをクラブでミックスするということが増え、毎回少しずつビートを変化させていました。その流れで、DJセットを一度形にしようと思いました」
――なぜインスト・アルバムではなく、MIX CDとしての体裁でリリースしたのでしょうか。
「回答の続きになりますが、福岡で、OIL WORKSと飲んでいたときに、自分が欲しいものを作れよ、って話になって……。札幌に帰ってから無意識にミックスをはじめていました。もともとはインスト・アルバムを作ろうとしていたんですが……」
――今作では、ターンテーブルではなく、MPC2000で制作されていますが、MPCを使った理由について教えてください。また、機材へのこだわりはありますか。
「二台目(MPC2000)が手に入ってから、作り方が若干変わりました。僕はもともとがDJなので、真ん中にMIXERがあると……。ミックスしてしまうはずです……(笑)。機材のこだわりはたくさんあります。ひとつ挙げるならKORGさんのKAOSSの機能ですね。KAOSS MIXERは新旧どちらも使っていますし、さらにKAOSS PAD3も通しているので、いろいろな面で助かっています」
――MIC JACK PRODUCTIONで使用しているものなど、既発のトラックも、シーケンスなどだいぶ変更されていると思います。それはやはりインストであるということを意識してでしょうか。
「MCとやるときもインストを作るときも意識はしていません。毎回同じです。サイズは気にしますが。今回の作品も誰かにラップを乗っけて送ってきてもらいたいとも思っています。だから、少なからずいつもRAPPERを意識しているんだと思います」
――サンプルをアブストラクトに用いながらも、背骨となるキックとスネア、ハイハットの輪郭が埋もれることはありませんね。このあたりはこだわりなのでしょうか。
「こだわりというよりも、これしか出来なかったんだと思います(笑)」
――どことなくハウスからの影響が窺える気がするのですが、いかがでしょう。
「それは意外ですね。ただ、以前に僕のトラックがトランスだと言われたことがありますし、皆さんそれぞれいろいろな受け止め方をしてくれていると感じています。そもそも今回はTRIP HOPとしてリリースしましたし」
――track10「PERRO OIL」は、OLIVE OILさんとの共作でしょうか? とても仲が良いと思うのですが、彼との出会い、間柄について聞かせてください。
「これは僕のビーツですが、ここではまだ言えません(笑)。OIL WORKS。彼らは僕にとっては特別な存在です。OLIVE OILからは人間的なヴァイブスを受け、POPY OILからは、音楽的なヴァイブスを受けています」
――トラック制作にあたり、影響を受けたアーティストなどいれば教えてください。
「OIL WORKS。そして、昭和53年組」
――“Word Is Bond”は、“武士の一言”や“かっこいい”など、さまざまな意味のあるスラングですよね。このタイトルに込められた意味はなんでしょうか。
「スラングはだいたい当てはまっていると思います。ただ、タイトルに込めた意味については、実際は直訳が一番近いです」
――プロデューサー/トラックメイカーとして活動されてきた以上、大抵の場合、誰かと相対する形でDOGGさんのトラックは発表されてきたと思うのですが、こうしてアルバム一枚をご自身の音源だけで網羅した作品をリリースしたことでの達成感はありますか。またアルバムを作ったことで生まれた、先への展望などありましたら教えてください。
「NEXT LEVELな手法を取り入れる前に今までやっていたことをまとめてしまおうと思いました。達成感はまだありません。ストレスのほうが多いです(笑)」
――今後共演したいアーティスト、もしくはプロデュースを手掛けたいアーティストはいらっしゃいますか?
「ここでは言えません(笑)。。。」
取材・文/星隆行(2008年10月)