DIR EN GREY   2008/10/21掲載
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 9月リリースのシングル「GLASS SKIN」に引き続き、11月12日に通算7枚目となるアルバム『UROBOROS』を発表するDIR EN GREY。1年を超える制作期間を経て完成した本作は、緻密に構築されたスピリチュアルな世界観がダイレクトに脳裏を刺激する傑作! 本作についてメンバーの京(vo)、Die(g)の2人に話を訊いた。





「その時々の自分たちに素直なことをしたいんですよ、
ライヴにせよ、曲にせよ」(Die)

――DIR EN GREYを結成するとき、どんなバンド像を思い描いていたんですか?

「そのときなりにやりたいこと、自分らがカッコいいと思うものをやるバンド。単純にそれだけですね」

――京くんの言う“カッコいい”というのは、たとえば何かキーワード的にいうなら、どんなものになるんでしょう?

「年々変わってくるのでわかんないんですけど、僕がいいなと思うものは一般的には受け入れられないことが多いです。まぁ、日本で売れている音楽はほとんど嫌いなので……それだけ言えばわかると思うんですけど(笑)。明るいものは基本的にすべて……前向きとかすごく嫌いです(笑)。キレイ事は好きじゃないし、基本、僕は後ろ向きなんですよね。大丈夫って言われても、“大丈夫かなぁ?”って思うタイプなんで。あとは白っぽいイメージとかも嫌いですね」

――逆にこれが好きと堂々と言えるものもあるんですか?

「実際にあえてされると好きではないんですけど、何か人間っぽい感じ、生々しい感じは好きです。現実っぽい感じですね。たとえばニュースとかで言ったら、パンダの子供が生まれたという話よりも、どこどこで戦争が起こったという話のほうが惹き付けられる。観たときの重さというか、イヤな気分というかね」

――Dieくんは結成した頃にどんなことを考えてました?

Die 「やっぱ単純に音楽性は決めてやってなかったし、何でもやってみようっていうスタイルではありましたね。その時々の自分たちに素直なことをしたいんですよ、ライヴにせよ、曲にせよ。そうやってきて今があるんですよね」

――Dieくんの好きなもの、嫌いなものを挙げるなら?

Die 「俺は基本的にメジャー・キーは嫌いですね。メジャーのコード進行というのは俺の中にないです。暗くて悲しいのが好きかな。でも、そういう音楽をやっている人たちはあんまり売れてないし……そういうものなのかなとは思いますけどね。ただ、メジャー・キーの中で泣いているものなら、好きなものもありますけどね。太陽みたいな明るい色だけというのは、俺の中ではダメというか、まったく共鳴しないです。ああいうコード進行を聴くと、キモすぎて鳥肌が立つんですよ(笑)。自分がギターを弾くときも、メジャー・コードは恥ずかしくて押さえられないというか(笑)。そういう音を俺がもし出すとしたら、相当自分が変わったんやなぁっていう気がしますけどね(笑)」

――もちろん、他のメンバーがもたらす要素もありますが、二人の好みはDIR EN GREYの音楽に面白いように表われている気がしますよね。ただ、今の話を総合すると、メジャー・キーでもなく、明るくもないDIR EN GREYは、売れないはずの音楽になりますよね。しかし、現実は異なる。そう考えると、すごく面白い現象だなとも思うんですよ。

「正直、僕はわからないです。売れるためにバンドをやってるんじゃないんで……何なんですかねぇ。人それぞれ感じ方も違いますからね。たとえば、歌詩をあまり(ブックレットに細かく)載せなかったりすることもありますけど、載せないということに意味があるわけじゃないですか。それがわかる子はわかるし、わからない子もやっぱりいる。そんなことをこちらがいちいち考えてもしょうがないんで、やりたいことをぶつけるだけなんですよね」
Die 「これだっていう理由はわからないですね。だからいいのかなって気もしますけど。そういう言葉じゃないところで、やっぱ何か感じた人間がライヴにも来てくれるんだろうし。それは自然なことやし、素直でいいんじゃないかなって。俺らも素直やし。それだけかな」

――魅力の一つが激しい音なのであれば、すごくわかりやすい面だと思うんですよ。実際にDIR EN GREYのライヴを観てみると、暴れている人もいるし、じっくりと聴いている人もいる。そこまでは説明がつくんですね。だけど、歌っている人もすごく多いじゃないですか。とはいえ、カラオケで楽しく歌うような曲が奏でられているわけではない。そこに何かヒントがあるのではないかとも思うんですね。

Die 「でも、たとえば激しいだけ、歌うような曲だけだったら、自分たちも面白くないんですよね。自分たちにも刺激があるライヴなり曲なりをやってるだけなんですよ。そこはすごく追い求めているし、それがなくなったら、やっぱりこのバンドは終わりだと思うし」
「何で歌うんですかね(笑)。でも、単純に嬉しいですよ。頭から最後まで歌ってくれててもいいし、頭を振ってくれててもいい。ただ何か共鳴してくれている部分があれば、それだけでいいんですよ。変な深読みとかもされたくないし、自然なままでいてくれたらいいなって。でも、アンコールの最後の曲とかって、特に盛り上がったりするわけじゃないですか。それってすっごい腹立つんですよ」

――なぜそれまでの間にそこまで盛り上がらないのかと?(笑)

「というより、力を取っておいてるんですよね。こっちは1曲目から100%でやってるのに、最後の曲だけ明らかに違う。どうせ帰るときにはグチャグチャになるんやったら、始めからそれでええやんって(笑)。こっちは死ぬ気でやってるのに、何をじっくり……まぁ、じっくり観てくれるのはいいんですけど、だんだんっていうのがイヤなんです、僕は(笑)」
Die 「むしろ、ヘタったほうが普通じゃないですか(笑)。最後の最後はみんなくたびれてたほうが、こっちも見てて面白いですよね(笑)」

――火事場の馬鹿力と昔から言いますが、最後に思いがけず、そういうパワーが出ることもあるんじゃないですか?

「そういうのだったらいいんですけどね。でも、明らかにそうじゃないんで(笑)」




「聴き終わった後に何か重いものだけ残っている、
そんなニュアンスのものが書けたらいいなぁと思ってて」(京)


――ははは(笑)。ただ、常に手加減しない臨み方は、メンバーも自負しているDIR EN GREYの個性であり、あるべき姿なんでしょうね。ところで、最新作『UROBOROS』が完成しましたが、新しさも踏まえつつ、その時々でやりたいことをやってきたDIR EN GREYのすべての要素がわかるようなアルバムに思えるんですよ。

Die 「俺らからするとすべてとは言えないし、わからないところですけど、そう感じるならそうなのかなと。DIR EN GREYのイメージとしてね。でも、それを意識してやったわけではないですけどね。アルバムの全体像が浮かんできたのは7月ぐらいかなぁ。単純に曲が出揃ったときに、俺ららしいなぁとは思いましたけどね」

――その“俺ららしい”ものを他の言葉で説明するとしたら?

Die 「それは難しいなぁ。すごく曖昧なものなんで……。多分、そう思えるものが、自分たちの中では正解なんだと思うんですよ。毎回そうですけどね。そうじゃなかったら、自信を持って出せないですし」

――歌詩に関しては、このアルバムを貫くものが、自分の中で見えてきたりもしますか?

「1曲ずつもあるんですけど、それが完成ではなくて、アルバムを全部聴き終わった後に、何が自分の中に残っているか。そこが本当の意味です。だから、“この歌詩はこうだから、こういう意味で、こういう歌だよね?”と言われると、すごく困る。あえて答を書いてない歌詩ばっかりなんですよ。ただ、どこか一色で、聴き終わった後に何か重いものだけ残っている、そんなニュアンスのものが書けたらいいなぁと思ってて。それは今までのアルバムにもあるんですけど、より一層ですね」

――先ほど前向きが嫌いという話も出ましたけど、絶望感って希望があるからこそ生まれるものじゃないですか。

「うん。僕はわかりやすい前向きな感じがいやなんですよ。みんなで頑張ってどうたら、とかね。個人個人が絶望を目の前にしたときにどう思うのか。そこで自分の中で沸き上がってくる前向きさ、闘争心というものは好きです。それを感じるところはあると思います」

――ええ、その類のメッセージがすごく強い印象だったんですね。

「だとすれば狙い通りです(笑)。イヤなことに目を向けず、上辺だけで生きる感じがするものが嫌いなんですよ。もっと底辺を見て、ちょっとずつでもいいから、ボロボロになりながらでもいいけど、進んでいくという人間が僕は好きなんで……それは歌詩にも出ているかもしれない。バンド・コンセプト的には痛みというところだったり……誰も見ないところを、あえて出していきたいんですよ。そこに俺らの意味があるというか」

――サウンド面で言えば、今回はクリーン・サウンドが占める割合が確実に増している。それも“自然な流れ”かもしれませんが、全体の音の聞こえ方には、どのような意図があるんでしょう?

Die 「自分たちが思う、聴いたことのないサウンド。普通に感じるものって、いくらやっても自分たちに刺激がないんですよね。だから、クリーン・サウンドと言っても、単純にエレキでいう“ド”クリーンの音とか、そういうところじゃないんですよ。もっともっと深いものなんですよね。自分の理想、求めている音を作り出すのには、やっぱりすごく時間がかかったし。それは作るたびにありますね」

――機械的には成立し得ない感情を込めるということ?

Die 「うーん……昔はここを優しく弾くとか、そういうメンタル的なものを意識してたときもあったんですけど、逆に今はそういうことをあまり考えなくなりましたね。もっと自然に任せて曲と向き合うというか。むしろ意識するのも違うなぁみたいな」

――特に高音域が著しいですが、歌に関しては随分と声域が広がっていますよね。そこに何か理由も見出せますか?

「どうなんですかね? 自然な流れなので、僕の中では。まぁ、曲が呼んでたと(笑)。ただ、出したくなるところもあるんですけど、今回、それでもかなり抑えたんですよ、ハイのところは。90%ぐらいは自然な流れで曲に呼ばれたと思うんですけど、誰にも歌えないオリジナリティのあるもの、俺しか歌えない、絶対的なものじゃないと意味がないと思うんですよ。それが残りの10%ですね。僕は自分の声を音としか見てないんですよ。だから、ギターの音色が変わるかのように、ここの場面はこのほうがいいと考えるんですね」


「(最新作『UROBOROS』は)
俺らからすると聴きやすいんですけどね」(Die)


――シングルで先行リリースされた「GLASS SKIN」と「DOZING GREEN」は、アルバム収録に際して歌詩が英語になりましたよね。

「シングルの曲だけ英語にしたら、何か変なふうにとられそうでホントはイヤだったんですけど、実際ちょっとやってみたら、すごく新鮮で、単純に面白いなって部分が大きかったんですよ。新たな挑戦でもありましたしね。〈GLASS SKIN〉のほうは歌詩も違ってるんですね。元の歌詩とテーマは一緒なんですけど、角度が全然違うんで、よりわかりやすいです、その核の部分が。〈DOZING GREEN〉はただ英語にしただけなんですけど、日本語特有の空気感、雰囲気を英語で表わすのは難しいんですよね。その意味では〈DOZING GREEN〉も、もうちょっとわかりやすくはなってる。歌詩を両方とも見てもらえると、すごく楽しめるかなぁと」

――楽しめるうえに、より本質に近づけるヒントにもなり得ると。今回のリリースに際して、“今まで以上にいろんな人に聴いてもらいたい気持ちが強い”という言葉も出てきていますよね。

「うん。売れたいという気持ちは全然ないですけど、アンダーグラウンド過ぎるのも、ちょっと違う気がするし。でも、何かすごく(表に)出たいという気持ちもない。ちょっと難しいんですよね、言葉ではなかなか言えないバランス感覚っていうか」

――DIR EN GREYに初めて触れる人にも、『UROBOROS』は最適なアルバムと言えそうですか?(笑)

「どうやろう? 〈GLASS SKIN〉を気に入ってアルバムを買ってもらったら、多分、“え!?”って思う部分が結構あると思うんですよ(笑)。すごく壁が厚くて、入りにくい感じがすると思うんですよ。でも、それを越えてしまうとすごくわかりやすいし、ハマりやすいんですね。すごくキャッチーです。だから、多分、一回聴いただけでは、このアルバムはわからないと思います(笑)」
Die 「こんなアルバムは聴いたことないだろうなと思いますね。でも、意図として難しくしようというものはまったくないんで……。俺らからすると聴きやすいんですけどね(笑)」

――しかも聴く度に発見がありそうですしね。さて、11月からの北米ツアーを経て、国内では12月29日に“UROBOROS -breathing-”と題された大阪城ホール公演が決定しています。こういった作品を携えてのライヴだけに、どんな内容になるのか楽しみですね。

「『UROBOROS』を初めて100%出せる場所なので、すごく自分らも楽しみですね。『UROBOROS』の世界はライヴのほうがもっと深いと思うので、もっとドップリと浸りたい人は来てもらえたら嬉しいです」



取材・文/土屋京輔(2008年9月)



【DIR EN GREY ライヴ/UROBOROS -breathing-】
12月29日(月) 大阪城ホール
OPEN 18:00/START 19:00
チケット料金:\6,000
アリーナスタンディング(ブロック指定)/スタンド指定席
チケット発売日:10/25(土) 一斉発売
※問合せ:サウンドクリエーター/06-6357-4400
※総合問合せ:フリップサイド/03-3466-1100



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