DIR EN GREY   2008/10/21掲載
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 1997年に結成されたDIR EN GREYは、今や日本のみならず、欧米でも確かな支持を得ているバンドだ。カテゴライズできない彼らのサウンドはいかに変化し、または変わらずにここまでのバンドになっていったのだろうか。彼らの活動の軌跡から、その魅力を読み解いてみよう。


 近年、日本のバンドが海外でライヴを行なうケースが増加しているが、実はワールドワイドな活動が日常的なものとして成立している事例はさほど多くない。そんな中でまさにグローバルな注目を集めている筆頭と言えるのが、その一挙一動が国内のメディアでもさまざまに伝えられているDIR EN GREYである。

 彼らは1997年の結成時点で、すでに高い関心が寄せられる存在だった。それは京(vo)、薫(g)、Die(g)、Toshiya(b)、Shinya(ds)という個々のメンバーが以前から一目置かれていたミュージシャンだったからだが、現実に関西を拠点として各地でライヴを繰り返しながら、瞬く間に頭角を現していった。2年に満たないインディーズ時代でも作品のセールスは好調で、たとえば1998年8月発表のシングル「-I'll-」は並み居る有名アーティストを押しのけてチャート7位を記録。同年11月には初の日本武道館公演も敢行している。彼らが当時からいかに求心力を持っていたのかがよくわかるエピソードだろう。





 1999年にはメジャー進出。その第1弾はシングル3枚の同時発売という異例のスタートとなり、いずれもチャート10位以内にランクインを果たす。もちろん、『GAUZE』(1999年)、『MACABRE』(2000年)、『鬼葬』(2002年)といったアルバムもコンスタントにリリース。元来から特定のジャンルにカテゴライズされない音楽性を提示してきたバンドゆえ、自身の進化を伴いながら生み出された多様なスタイルの楽曲が収められているが、ファンベースを拡大させていく一方で、DIR EN GREYが形作った他にない個性が、後に登場してくる若手に大いに影響を与えた“功績”も特筆すべき点である。


 個人的な見解で言えば、2003年に発表したミニ・アルバム『six Ugly』に封じ込められた重厚感に、往時の彼らの飛躍的前進を印象づけられたことを記憶している。特にアメリカから続々とシーンを席巻していった新世代のヘヴィ・ロック勢と同調するかのようなサウンド・アプローチを持ちつつ、独特の繊細さまで内包したユニークな在り方が、新たなリスナー層を惹き付ける起爆剤になったのは間違いないだろう。続くフル・アルバム『VULGAR』(2003年)が一般的に“自己のスタイルを完全に確立”した作品と言われるが、この時期のDIR EN GREYが、ポップさを増強して大衆に迎合するのではなく、あえて逆の臨み方でエクストリームな方向性を選択したのはとても興味深い。

 ちなみに2002年には初のアジア・ツアー(上海、中国、香港、台湾、韓国)が行なわれている。彼らの噂がいつの間にか国外へも広まっていたことを物語るエピソードだが、私事ながら、2004年頃に偶然にも面白い経験をした。東京のとある場所で、北欧からやってきたロック・ファンの集団と出会った。彼らはDIR EN GREYのライヴを観るためにはるばる渡航してきたのだという。つまり、比較的近隣の地域のみならず、DIR EN GREYの衝撃波は遠くヨーロッパにまで着実に伝播していたわけである。


 言うまでもなく、どの国にもマニアはいる。あのとき話をした若者たちも、そういった類のリスナーだったと考えることもできるだろう。ただ、そう簡単に片付けられない事実も2005年に目にすることになった。何気なくフィンランドのアルバム・チャートを眺めていたとき、5枚目のアルバム『Withering to death.』が31位に記されていたのである。当時、現地で精力的なプロモーションが行なわれたという話もない。メタルが圧倒的な人気を集めるかの国だが、無名なはずのバンドが、気付けばそれほどまでの支持を獲得していたわけだ。


 翌年にはアメリカでも正式にリリースされた本作を契機に、DIR EN GREYの本格的な世界転戦が始まったといっても過言ではない。実際に2005年にはドイツ・ベルリンやフランス・パリでの単独公演の他、ヨーロッパ最大級の野外フェスティヴァルとして知られるドイツの“ROCK AM RING”にも出演したが、2006年に入るとアメリカでのショーケース・ギグ、欧州ツアー、さらには2度目となる“ROCK AM RING”ではメイン・ステージへ登場という未曾有の展開に。それだけでも話題性は充分にあるが、夏にはKORNが主宰する“THE FAMILY VALUES TOUR”への参加を呼びかけられ、DEFTONESSTONE SOURらの強豪と2ヵ月に渡って北米を廻った。年末にはMTVのプログラム『HEADBANGERS BALL』にて、「朔-saku-」のビデオ・クリップがグランプリに輝くというニュースまでもたらされた。





 2007年になると、その動きは一層、精力的なものとなっていく。アルバム『THE MARROW OF A BONE』は世界11ヵ国で同時期にリリースされ、国内外で121本ものライヴを行なった実績からも、その断片程度は垣間見えるだろう。初めて公演が実現したイギリスでは、現地の老舗ロック雑誌『KERRANG!』が幾度もDIR EN GREYの凄まじいパフォーマンスを採り上げたほど。文字通りに“世界が求めるバンド”としての認知もより明白になった1年だった。


 とはいえ、周囲の喧騒をよそに、メンバーは“日本も海外も関係ない”と切り捨てる。世の中の流行やマーケットの浮き沈みとは関係なく、“常に自分たちがやりたいことだけをやってきた”という自負が、そこにはあるからだ。現状に満足しない姿勢は創作面にも如実かつ強靱に表われている。『VULGAR』辺りを起点にDIR EN GREYらしいヘヴィ・ロックを突き詰めてきた過程がここ数年だったとすれば、11月12日リリースの新作『UROBOROS』は、また次のステップへと足を踏み入れた印象だ。近作と同種のアグレッシヴな轟音も踏襲されてはいるものの、その色合いの全体像は過去のアルバムとはまったく違う。

 それが驚愕なのか予想の範疇なのかは聴き手次第だが、「今までに聴いたことのないアルバム」「“最狂”の作品」といったバンド側のコメントには誰しも頷けるはずだ。全貌を理解するのは簡単ではないかもしれない。ただ、自分と共鳴する糸口をふと見つけた瞬間から、この『UROBOROS』はリスナーの内部へと急速に浸透していく性格を持っている。タイトルに冠された耳慣れない言葉は、“不老不死”もしくは“再生”などを意味する古代の象徴なのだという。ここに完成した13曲の濃密なマテリアルが、5人の精神性とともにどんな未来を切り拓いていくのか。痛みも悲しみも浄化させてしまう現在進行形の音塊は、かつてない力強さを有した魅惑的な広がりを見せていきそうだ。



文/土屋京輔



【DIR EN GREY Album Discography】


MISSA
(FWR-029/1997年)


GAUZE
(FWR-030/1999年)


MACABRE
(SFCD-0001/2000年)


改−KAI−
(SFCD-0006/2001年)


six Ugly
(SFCD-0015/2002年)


鬼葬
(SFCD-0012/2002年)


VULGAR
(SFCD-0021/2003年)


Withering to death.
(SFCD-0035/2005年)


THE MARROW OF A BONE
(SFCD-0050/2007年)


DECADE 1998-2002
(SFCD-0053〜4/限定/2007年)


DECADE 2003-2007
(SFCD-0055/限定/2007年)








【New Single】「GLASS SKIN」
初回生産限定盤】SFCD-0056
通常盤】SFCD-0057
01.GLASS SKIN 
02.undecided
03.AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS -UNPLUGGED-
04.凌辱の雨 [LIVE]
※Live take at YOKOHAMA BLITZ on May 23, 2008
※凌辱の雨[LIVE]は初回生産限定盤のみに収録

【New Album】『UROBOROS』
※2008年11月12日RELEASE
初回生産限定盤】SFCD-0063〜64
通常盤】SFCD-0065[収録曲]
01.SA BIR
02.VINUSHKA
03.RED SOIL
04.慟哭と去りぬ
05.蜷局
06.GLASS SKIN
07.STUCK MAN
08.冷血なりせば
09.我、闇とて・・・
10.BUGABOO
11.凱歌、沈黙が眠る頃
12.DOZING GREEN 
13.INCONVENIENT IDEAL



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