“フィーチャリング”“コラボレーション”というスタイルが定着して久しいが、“これって単なる話題集めでは?”と思ってしまうような例も残念ながら存在する。そんな状況において、BENNIE Kの『THE “BESTEST” BENNIE K SHOW』――これまで発表してきたコラボ作品をまとめたベスト・アルバム――は、共演者との豊かなケミストリー、その楽曲が生まれた必然性がしっかりと感じられるという意味で、きわめて貴重だ。しかし彼女たちは結成当初、「他のアーティストと一緒にやる意義をそれほど感じていなかったんです」 (CICO) と言う。
「BENNIE Kのなかにラッパー(CICO)とシンガー(YUKI)が存在しているので、誰かをフィーチャリングする考え方がなかったんですよ。その考え方が変わったきっかけは、2BACKKAのHAMMERと一緒に作った〈MUSIC feat. HAMMER(2BACKKA)〉。最初はトラックだけを作ってもらうつもりだったのが、ノリで“ラップもやってよ”って言ったら、想像以上の広がりがあって。そこからですね、コラボレーションの楽しさがわかったのは」 (CICO)
それ以来2人は、精力的にコラボ作品を生み出してきた。男女の恋愛観が交錯するアップ・チューン「a love story / with SEAMO」、心地良いドライブ感に満ちたトラックが印象的な「Happy Drive〜Taste Your Stuff〜 / with m-flo」、オーガニックな手触りのサウンドを持つ「Music Traveler / with SOFFet」、ノスタルジックな空気とポジティヴな意思が溶け合う「Better Days feat. Def Tech」。そこから伝わってくるリアリティは、双方のリスペクトと真摯なコミュニケーションによって裏打ちされているという。
「世間話から、“いま、どこに気持ちが向かっているか”まで。一緒に曲を作るときは、まず、しっかり話をするんです。そうしないとお互いのテンションが確かめられないし、真実味のある曲にならないから」 (CICO)
また、彼女たちの音楽を支えてきたDJ HI-KICKとの新曲「HI-EXPLOSION / with DJ HI-KICK」(高速のディスコ・ビートを軸にしたハイパー・ダンス・チューン)も強烈なクオリティを放っている。
「DJ HI-KICKはずっとライヴをサポートしてくれている、第3のメンバーともいえる存在。でも、ゲストとして迎えたことはいままで一度もなかったんですよ。だからこの機会に、やりたいことを思いきりやってもらおうと思って。
ドナ・サマーの〈ホット・スタッフ〉のサンプリングもこのビート感も、ぜんぶDJ HI-KICKのセンスです」
(YUKI) 4月にリリースされた初の『BEST OF THE BESTEST』、そして本作。この2枚のベストは、BENNIE Kの濃密なキャリアを鮮やかに示すことになるだろう。
「この夏、ベスト・アルバムのツアーをやったんですよ。その最終日に初めて、“いろんな人に支えてもらってきたんだな”ってことが実感できました」 (YUKI)
「次のことは、まだ考えられないかも。というより、その瞬間瞬間を積み重ねることしかできないんですよ、私たちには」 (CICO)
取材・文/森 朋之(2008年10月)