傑作の呼び声高い『音楽ぎらい』から実に9年ぶりのアルバム『Whydunit?』をリリースした面影ラッキーホール。“この人はうますぎるほどの物語詩の作り手だ”(吉本隆明)、“すごくイイ曲に、すごくイヤな歌詞”(
宮藤官九郎)と、錚々たる顔ぶれが絶賛をおくる、さらなる磨きがかかった21世紀最初の新作について、ヴォーカルの佐々木“ACKY”あきひ郎、リーダーのSinner-Yangに話を訊いた。
面影ラッキーホールといえば、まず目を引くのが強烈なインパクトを与える曲名。今作でも「あの男(ひと)は量が多かった」「パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた・・・夏」「あたしゆうべHしないで寝ちゃってごめんね」といったタイトル通りの情念の物語がずらりと並ぶ。
「そもそもこのタイトルじゃなかったら誰も目をとめないだろうなっていうのはあるんですよ。一時期『火サス』とか2時間ドラマのタイトルが、やたら長くなった時期があって、ああすると視聴率がガーンと上がったっていうのを思い出して、じゃあ曲のタイトル長くしたら人気出るかなって(笑)」 (Sinner-Yang)
「掴み的な感じでね。どうやったらみんな驚くだろうとか狙ってるだけなので、売れるようになれば、もうちょっと、普通に」 (ACKY)
「万が一、某レコード会社さんからイイ話が来たら、即座に打ち込みのダンスビートにしますから」 (Sinner-Yang)
「まあ、そのときは俺いないかもしれないですけど(笑)」 (ACKY)
もちろん演奏面でも、Sinner-Yang 曰く「今回は音楽的にも技術的にも完全に理想型のミュージシャンが集まった」という総勢12名のメンバーによる、ほぼ一発録りの生音にはシビレる限り。特に70年代ソウル/歌謡曲ファンにはたまらない贅沢さだ。
「大所帯だと、みんな思ってることが違うから面白いんです。例えば3ピースのロック・バンドなんてベーシックに人気あるけど、個人的なことを言うと、あの純度の高さがすごくつまらなく感じちゃう。いまの12人のメンバーの中に歌詞のこと気にしてない人、フツーにいますからね(笑)。人数が増えるほど、それだけ考えてることが違うので、その要素はどうしてもほしいんですよ」 (Sinner-Yang)
最後に、これまで石井隆、ケン月影、上村一夫といった漫画家による女性画が飾ってきたアルバム・ジャケットを一新した件について。
「しばらく活動が少なかった間にネット上で伝説が拡大再生産されて、どうやら我々はオシャレなバンドだということになってるみたいで(笑)」 (Sinner-Yang)
「前の3作はちょっと泥くさい雰囲気もあったから、本当は近い感覚なのに手に取ってなかった人たちにもヒットするよう90年代の渋谷系な雰囲気を出して(笑)」 (ACKY)
「ただ、以前からご存知の方は期待を裏切るのかなとも思って。レアな漫画をジャケットにすることも含めて楽しみにしている方もいらっしゃるだろうから、このジャケットにするのは結構勇気いりましたね」 (Sinner-Yang)
来年は祝・結成15年。1月には心斎橋クアトロと渋谷クアトロでのライヴも決定したので、興味を持たれた方は足を運んでみてはいかがだろう。ちなみに2人からのリクエストは“バブル時代に青春を過ごした奥様たちに来ていただけるのが理想”だそうだ。
「15年か。そろそろ生まれた子供が不良になったりする歳ですよ(笑)」 (ACKY)
「俺ら、いくつまでやるんだろ?」 (Sinner-Yang)
「まあ、いずれは座ってやれるようなバンドにしたいですね(笑)」 (ACKY)
「キング・クリムゾンのように(笑)」 (Sinner-Yang)
取材・文/秦野邦彦(2008年11月)
【面影ラッキーホール CDリリース記念ライヴ!】
■大阪公演
【日程】 2009年1月18日
【会場】 心斎橋クアトロ
【チケット】 ADV\4,000/DOOR未定
【開場/開演】 18:00 / START 19:00
【special guest】 大西ユカリと新世界
※お問合せ先:smash/
http://smash-jpn.com■東京公演
【日程】 2009年1月25日
【会場】 渋谷クアトロ
【チケット】 ADV\4,000/DOOR未定
【開場/開演】 18:00 / START 19:00
※お問合せ先:smash/
http://smash-jpn.com