面白いものができなくなったからスパッとやめる。自分の中ではポジティヴな引退
――DJ OZMAという存在がすっかり浸透した今、あえてこのタイミングで引退することを決めた裏側には一体どういう理由があったんですか? 引退記者会見では、“芸能界に馴染めなかったこと”を引退の理由に挙げていましたが……。
DJ OZMA 「それもあるんですが(笑)、いちばんの理由は、クリエイティヴな作業をする時間がまったく取れなくなってしまったこと。やっぱり食べるものを食べないと、出すものも出せなくなりますから。“一旦、活動休止すれば?”っていう意見もあったんですけど、それも潔くないなって。自分が面白いなと思えるものを生み出すことができなくなったからスパッとやめる。自分の中では、すごくシンプルな理由なんですよ。別にネガティヴな方向の話ではないですし、むしろ自分の中では完全にポジティヴな引退なんです」
――じゃあ、完全にDJ OZMAとしての活動に悔いはない?
DJ OZMA 「自分の思い描いていたことが、全部、叶ったかというと、決してそんなことはないんですけど(笑)、このまま続けていっても、失速する一方だなと思ったんで、輝いているうちに終わろうって」
――もちろん、そこには生粋のパンクスであるOZMAさんの美学も反映されているわけですよね。
DJ OZMA 「そうですね。
セックス・ピストルズだって実質2年強しか活動していないにも関わらず、あれだけのインパクトを残しているわけですから。いずれにせよ、自分の中では、3年以上続けるべきではないなと思っていました」
――12月31日には、短いながらも充実した、これまでの活動を締めくくる、最後のアルバム
『I PARTY PEOPLE3』がリリースされます。
DJ OZMA 「今回のアルバムは非常にメロディアスな楽曲が揃っています。イメージとしてはパーティが終わりに向かう早朝の4時から5時。歌詞も含めて全体的に、どこか切ない雰囲気も漂っていて、まさに『I
PARTY PEOPLE』3部作を締めくくるに相応しい作品に仕上がっていると思います。1、2、3と続けて聴けば、DJ OZMAのなんたるかが分かるんじゃないかと思います」
――そして初代の引退を受けて、来年の1月1日からは2代目がDJ OZMAとしての活動を引き継ぐことになったわけですが。改めて2代目を紹介してもらってもいいですか。
DJ OZMA 「はい。本名は槇 精吾(まき・せいご)といいます。フリーの役者をやりながら、夜はKING(夜王“KING”純一)が経営してる六本木のバーでバーテンダーとして働いています」
――最初の出会いは彼が働いていた杉並区のレンタル・ビデオ店だったんですよね?
DJ OZMA 「ええ。僕が資料用に、あるビデオを探していたとき、すごく丁寧に対応してくれたのが槇だったんですよ。それでピンとくるものがありまして」
――とはいえ、それだけの理由で2代目に選んだわけではないですよね?
DJ OZMA 「もちろんです。いちばんの理由は、あいつの目ですね」
――目ですか?
DJ OZMA 「ええ。あいつは魚が死んだような目をしているでしょう? おまけに表情もうつろだし、華もなければ存在感もない」
――それってエンタテイナーとしては致命的というか、絶望的ですよね(笑)。
DJ OZMA 「でも、奴が全身から放っているネガティヴなオーラにこそ、不況にあえぐ現代日本を救う大きなヒントが隠されているんじゃないかって。もしかしたら現代日本に対する史上最強の反面教師になる可能性もありますから」
――そんな狙いがあったわけですね(笑)。
DJ OZMA 「ええ。僕はポジティヴ・シンキングのみで時代に立ち向かっていったわけですが、やはり、それだけだと、どうしてもままならない部分がある。そんな現状を打破しようと考えていたときに、偶然、巡り逢ったのが槇 精吾という男だったんです。さしずめ僕が
Tommy february6だとしたら、2代目は
Tommy heavenly6といったイメージでしょうか。もしくはネガチョフとポジコフといった感じです」
――なるほど(笑)。そうなるとOZMA FAMILYのカラーも今後ガラっと変わっていくわけですね。
DJ OZMA 「もちろん、そうなっていくと思います。まだ、これからの話ですけど、初代ファミリーのメンバーが、何人、奴に付いていくのか……。そのあたりもお手並み拝見といった感じですね」
今現在、すでに5個ほど、動かしたいなと思っているプロジェクトがあります
――ところで2代目は今後のヴィジョンをどのように考えているんですか?
DJ OZMA 「昨日、話したときには、役者の道に進みたいと言っていました(笑)。今はドラマに興味があるようです」
――本業が役者だけに、当たり前っちゃ、当たり前ですよね(笑)。
DJ OZMA 「まあ、何の説明もなく“明日の2時に六本木ミッドタウンに来い”って、突然、記者会見に呼びつけたわけだから、本人もまだ混乱しているようですが(笑)。今後、徐々にDJ OZMAとしての自覚を持ってくれるんじゃないかと思っていますので、みなさんも2代目を温かい目で見守ってください。うちの事務所は、あいつのマネージメント業務に関しては完全にノータッチですけど(笑)」
――えっ!! そうなんですか。
DJ OZMA 「はい。あいつは完全なフリーなんですよ」
――ていうことは無自覚のまま、裸一貫からのスタートになるわけですか(笑)。
DJ OZMA 「そうです(笑)。でも、あいつが大手芸能プロダクションと今後、契約する可能性もあるわけですから」
──まさに、こうしている今も、水面下で激しい争奪戦が繰り広げられていたり……。
DJ OZMA 「大いにありえるでしょうね。今頃、槇 精吾という名前が業界内を駆け巡っているんじゃないかな。あいつがコインランドリーなどに向かう姿が写真週刊誌にキャッチされる日も遠くないと思いますよ。そこも含めて注目してもらいたいですね」
――了解です(笑)。そして初代の動向にも、今後、大きな注目が寄せられてくることになると思いますが。さしあたり、芸能界引退後はどのように過ごされるんですか?
DJ OZMA 「とりあえずHISかなんか行って、世界周遊のチケットを1枚買って、旅にでも出ようかと思っています。オーストラリアとかハワイ、グアム、ドイツとかいろんな国の友達から遊びに来るようにと誘われてますんで」
――本名の尾妻野純直(おずまの・すみただ)に戻って、束の間の休日を楽しむ、と。
DJ OZMA 「そうですね。国内外問わず、気の向くまま風の吹くまま放浪してみようかなって。とはいえ、まったく自分探しなどをするつもりはないですけどね。DJ OZMAの活動を通じて、自分というものが、よ〜く分かったんで。結局、“オラは人間だから”っていう(笑)」
――引退記者会見でも引用していた、『キン肉マン』の登場人物、ジェロニモの名ゼリフですね(笑)。
DJ OZMA 「ええ。結局、僕は、超人揃いの芸能界で活動していくには、あまりにも凡人すぎたんですけど、この旅を通じて、自分を鍛えなおしてみようかなと。ジェロニモが人間から超人になるために、スーパーマン・ロードをクリアしたように(笑)」
――期待しています(笑)。今後、クリエイティヴな部分で具体的なヴィジョンは見えているんですか?
DJ OZMA 「はい。今現在、すでに5個ほど、動かしたいなと思っているプロジェクトがあります。将来的にはDJ OZMAチルドレンたちが、日本のチャートアクションを揺るがすような状況になるといいですね。しかもお互いに親が同じであることを知らないまま戦ったりしたら面白いんじゃないかな」
――それは、どういうことですか?
DJ OZMA 「どちらも僕が関わっているのに、当の本人たちは、そのことをまったく知らないっていう状況ですね。“アイツらムカつくんだけど、面白いんだよな”と、お互いが思っているような。だから僕は決してハロプロ的なことがやりたいわけではないんです」
――じゃあ、“PRODUCED by DJ OZMA”みたいな冠は……。
DJ OZMA 「まったく必要ないと思っています(きっぱり)」
――つまり完全に裏方に回るということですね。
DJ OZMA 「ええ。表には一切、顔を出さないのが理想ですね。“用務員さんだと思っていたら、実は学園の理事長だった!”みたいな(笑)。そんな『GTO』的な展開になるかもしれません」
――ところで先頃、話題に挙がった5つのプロジェクトには、当然、初代OZMAさん自身が参加するプロジェクトも含まれているわけですか?
DJ OZMA 「もちろんです。当初、『I
PARTY PEOPLE3』でやろうと思っていたアイディアを新プロジェクトに発展させようと思っているんですよ」
――明かせる範囲で結構ですので、新プロジェクトのヒントを教えてもらえますか?
DJ OZMA 「みんなをストンプさせてきた、あの名曲たちが日本語で聴こえてきたとしたら、そのときには、僕の天然パーマを思い出してもらえれば──といった感じですかね。今、明かせるヒントはここまでです。僕のロックンロール・スウィンドルは、まだまだ続いていくので、引き続き今後の展開も楽しみにしていてほしいですね」
取材・文/望月哲(2008年11月)