充実期ぶりを窺わせたアルバム『Alpha』から約1年、
アリス九號.の待望の3作目
『VANDALIZE』が1月14日にリリースされる。“精神的・概念的破壊”をテーマにした本作は、バンド自身の新たな一面を見せている意欲作となった。高いモチベーションの中で制作された本作について、メンバーのヒロトとNaoに話を訊いた。
一般的に3枚目のアルバムは、アーティストの真価が問われる作品だと言われるが、2004年の結成時から飛躍的に勢力図を広げてきたアリス九號.が完成させた新作『VANDALIZE』は興味深い。“精神的・概念的破壊”を意味するタイトルにも込められている通り、彼らは積極的に新たな一歩を記す決意で制作に臨んでいたようだ。
「振り返ってみると、1枚目の
『絶景色』は“こういうバンドになっていきたい”といった期待感や、その当時のフレッシュさ、勢いがすごく詰まっていたんですね。前回の
『Alpha』はJ-POP畑のプロデューサーさんと一緒に作ったアルバムでしたけど、いろんな吸収をしつつ、だからこそ、自分たちがどの方向に進みたいのか、バンド内でもよくわかったんじゃないかなと思ってて。ちょうど『VANDALIZE』につながる種みたいなもの、音楽的にもっと深まろうとしている気持ちが見えるんですよ」
(ヒロト) 極めて簡潔に言い換えれば、目指すべきはポップスではなくロック。そんな明確な意思が、今回のレコーディングへと突入していくタイミングで改めて固まった。
「新境地に足を踏み入れたい気持ちはあったし、自分たちらしさは『Alpha』にも表われていたとは思うんですよ。でも今回は、もっと男らしいカッコよさみたいなところを突き詰めつつ、バンドのパワーが出せる1枚にしたいなぁとは思ってましたね」 (Nao)
もちろん、音楽的な幅を狭めるわけではない。自身の核たる部分をより強靱に押し出したい気持ちが自然と芽生えていた。
「僕的には、まず(シングル曲の)〈RAINBOWS〉を作ったことがデカくて。大袈裟に聞こえるかもしれないけど、人生観みたいなものをやっとこのバンドで表現できるようになってきたのかなと思えたんですね。そんなとき、さらに沙我くんが、アルバムの1曲目にもなった〈the beautiful name〉を持ってきたんですよ。そこで“絶対によくなるだろうな”って感覚を持てたんですよね」 (ヒロト)
「ただ、自分たちが見ているスケール感をきちんと形にできるかどうか。そこは怖くもあったんですよ。当たり前のことですけど、恥ずかしいプレイはしたくないですからね。それぐらい、集まってきた曲がどう仕上がるのか、すごく楽しみでした」 (Nao)
若手らしい瑞々しさと華やかさは維持しつつ、「Kiss twice, Kiss me deadly」「www.」といったオーセンティックなロックンロールにも堂々と挑んでいる。特異な手法は選択せずとも、アリス九號.の個性を形にできる無意識的な自信もそこにはあったはずだ。
「今まで単にやらなかっただけなのかもしれないけど、やろうと思えるようになったのは成長なのかもしれないですね。ライヴでもそうなんですけど、余分なモノをなくしていこうみたいな流れもありつつ、それぞれのアレンジ力も以前より上がってきたのを感じるんですよ。やっぱり、10年後に聴いてもワクワクするような音楽を作っていきたいですからね」 (ヒロト)
この2月から4月にかけては、ライヴ・ハウスを中心に全国20数ヵ所を転戦するツアー“UNTITLED VANDAL(ism)”をスタートさせる。彼らにとっては過去最大規模のものになる予定だ。
「アルバムの楽曲をちゃんと消化するには、最低でもこれぐらいの数は必要だし、『VANDALIZE』のようなものを作ったからこそ、“今やらずにいつやるんだ?”という気持ちにもなりますし。結局、何をするにしても、バンドの根底はライヴですからね」 (ヒロト)
取材・文/土屋京輔(2008年12月)