2007年秋に結成され、昨年10月のデビューEP
『アンディとロックとベンガルトラとウィスキー』で一気に注目度が高まった
andymori。この3ピース・バンドは、スリリングなロック・ダイナミズムに、ナイーヴなエモーションや柔軟なサウンド・アプローチが見え隠れする音世界を披露。ヴィヴィッドな切迫感と、飄々とした佇まいの交錯する楽曲は、心のいちばん感じやすい部分に響き、改めて根源的な“ロック”のリアリティを思い出させてくれる。
「もともと小山田(壮平/vo、g)とは、別のバンドをやっていたんです。人が言うには、レッチリで尾崎豊が歌っているみたいなバンドを(笑)。andymoriの結成は、タイ飲み屋で 後藤(大樹/ds) を買収して。しかも1万円で(笑)」
(藤原ヒロシ/b) 「実は(後藤加入)以前にもパンクっぽいことをやろうとしてたんですけど、うまくいかなくて。そういった意味では、パンクは人を選ぶんだなって。えっ? どうしてパンクっぽい方向に行ったのかって。それはゴルバチョフ(日本のインディーズ・バンド)や、
リバティーンズが好きだったし、その前には
ブルーハーツの影響もあるんで」
(小山田) そんなバンドの勢いや可能性をダイレクトに刻み付けたのが、2月4日リリースの1stアルバム『andymori』だ。「(サウンド的には)勝手にいろいろなものがミックスされていくんで、それを無意識に出している感じなんです」
と後藤。確かに、内外を問わずスタイルの取捨選択の“策”に溺れるアーティストが多い中、意識よりも衝動に忠実な全12曲には、ストレート勝負の説得力が息づき、前述の“根源的”云々といった思いを新たにさせる。 「逆に演奏の面で巧く見せようと思えば、いくらでもできたと思うんですよ。だけど、ジャズとかにある音と音の会話が重要だって思うし、CDではそういった面を出していきたかったんです。だから、何かが間違っていても、それはそれでOKにした部分も。そもそも曲自体も、ライヴごとに骨格部分を残して形が変わったりしてますからね」 (後藤)
さらには、「根底には
吉田拓郎をはじめとするフォークからの影響がある」
と語る小山田の手による歌詞も、andymoriを語るうえでは見逃せないポイントだ。世の中を斜めに見たり、言葉遊びのようなフレーズを用いたりしながら、文学的な言葉で自問自答を繰り返すとともに、聴き手にはさまざまなイメージを喚起させる。小山田は、熱っぽく次のように語る。 「どうして俺自身の自問自答を歌にするのかと言えば、届く人に届いたとしたら、何かが変わるんじゃないかって思うからなんです。自分も大層なことを書いているわけじゃないけど、もっと普通の人がそれぞれの生活を送りながら、心の深いところから湧き上がるものを表現したらいいのにって思うんですよ。とにかく詞なんか書けないし、歌なんか歌えないみたいな“形式”にこだわったあきらめ方をしないでほしい。それこそ柄じゃないからと思っても、愛してるって思ったら、絶対に言葉にしたほうがいいに決まってるし。俺の言う“何かが変わる”とは、そういうパーソナルなことなんです」
メンバー全員がインドにハマっているという彼ら。ビートルズをはじめ、バンドがインドに興味を抱くと空中分解する危険性があるといった話を向けると、「だったら先の短いバンドなんで、早くライヴを観に来てください(笑)」と、後藤はうそぶいてみせたが、その前にシーンがandymoriを放っておくはずがない。彼らが今後、台風の目となることは必至だ。
取材・文/兒玉常利(2009年2月)
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