3月4日にリリースされたau Smart Sports CMソング
「Morning Sun」で話題になっている19歳のシンガー・ソングライター、
清 竜人。3月25日には
デビュー・アルバムもリリースされる。タイトルは“PHILOSOPHY(=哲学)”。清々しいサウンドと歌の中に潜む“哲学”をじっくりと楽しめる本作について話を訊いた。
数年に一度しか登場しない、恐ろしいほどのスケール感を持ったニューカマーであると言い切ってしまいたい。シングル「Morning Sun」(3月4日リリース/au Smart Sports CMソング)とアルバム『PHILOSOPHY』(3月25日リリース)でメジャー・デビューを果たす19歳のシンガー・ソングライター、清 竜人。まずは「Morning Sun」に触れてみてほしい。イノセントな響きをたたえたファルセット・ヴォイス、フォーキーにしてクラシカルな音像――初期の
ジョニ・ミッチェルを想起させるような――そして、何気ない日常に潜む、深遠な真実を鮮やかに捉えたリリック。清々しい気分と人生の奥深さがしっかりと描きこまれたこの曲を聴けば、その確かな才能を実感してもらえるはず。この曲を作ったのは、彼がまだ高校に通っていた頃。その瞬間について彼は、こんなふうに語る。
「“An old woman waters the flower/I play the guitar and sing”という歌詞があるんですけど、それって目の前にあった風景なんですよ。祖母が花に水をやっていて、それを見ながら僕はギターを弾いてて。そういう毎日の繰り返しがじつは――(大切である)という歌ですね」
そして彼は自らのソングライティングについて、「これは僕の個人的な考えですけど」と前置きしながら、さらに言葉を重ねる。
「メロディが出来たときに考えていたこと、感じていたことをそのまま歌詞にするのが一番自然だし、曲にもマッチすると思うんです。〈Morning Sun〉も、そう。まさに晴れた土曜日の朝に書いた曲なので(笑)」
軽やかにシンコペーションしていくピアノのフレーズを軸にしたアップ・チューン「ジョン・L・フライの嘘」、アコースティック・ギターの生々しいグルーヴが心地いい「Selfish」、憂いを帯びたメロディのなかに“システム(体制)”によって歪められる現代を映し出す「悲システム」(かなシステム)、爽やかなギター・ポップのなかで“なんてことない日常が 優劣でいっぱいさ”という真実を射抜く「素晴らしい」。アルバム『PHILOSOPHY』に収録された楽曲も、どこにも不自然なところはなく、まるでずっと以前から存在していたかのように、普遍的と呼ぶにふさわしい魅力を放つ。
チャカ・カーン、
シカゴといったビッグネームの作品を手掛けてきたプロデューサー、
トム・キーンによるオーガニックで立体的なサウンドメイクも充実している。
「レコーディングはロサンゼルスだったんですけど、楽しかったですね、修学旅行みたいで(笑)。メロディにも歌詞にもサウンドにも“これが自分の哲学(PHILOSOPHY)”というものを込められたと思います。まだ19歳なので(音楽的な哲学が)完全に固まっているわけではないんですけど、いま、自分ができる表現はこういうものかなって」
15歳のとき、親戚の叔母さんがゴミ捨て場で拾ってきたギターを貰い、オリジナル曲を作り始めたという清 竜人。それからわずか4年足らずで、彼はこんなにも強く、美しい音楽を奏でるに至った。「音楽を仕事と捉えるようになったら、アウトだと思うんですよね」と言う彼に、理想の音楽像について訊いてみると――。
「難しいですね。たとえば“孫の歌が一番”っていうおばあさんもいるだろうし、好きなものは人それぞれなので。ただ、自分の音楽を聴いてくれた人の日常に、1%でも2%でもいいから“いい色”が加わってくれたら嬉しいですね。それくらいですね、いま思ってるのは」
取材・文/森 朋之(2009年2月)