スチャダラパーが約2年半ぶりとなるフル・アルバム
『11』を完成! 閉鎖した現代社会に対する疑問や憤りが、いつにも増してストレートに描かれた今作であるけれど、楽曲そのものの雰囲気はいたってポジティヴだ。根本敬作品にも相通じる“でも、やるんだよ!”イズムに満ちあふれた今作について3人に話を訊いた。
SLY MONGOOSE、
ロボ宙との
THE HELLO WORKSでの活躍も目覚ましかったスチャダラパーが、オリジナル・アルバムとしては約2年半ぶりとなる『11』を完成。新作のテーマは、ズバリ
「昭和、アラフォー、未来」 (BOSE)。10代の頃、未来は明るいものだと思っていたけれど、いざ年齢を重ねてみたら、おかしな決まりごとや暗い話題ばかりの世の中になってしまっている。この先の未来だっていろんな問題が山積みで不安感がつのる一方。というのはアラフォー世代ならずとも、誰もが感じていることだろう。振り返れば、ギラギラ、ゴテゴテ感たっぷりの80年代が、実はみんなが思い描いてた未来だったのかも……なんて思いすら頭によぎってしまうほどだ。
「たしかに80年代が一番未来っぽかったよね。いろんなものがグングン変わってたしさ。ほんと、未来って面白かったらよかったのに、誰のせいでつまらなくなったんだろうって思う。もうちょっとちゃんと都市計画しとけばよかったのにとかさ。気に入らないことや疑問ばっかり。“どうしてくれるんだ? こんな風になりたかったの?”ってことを強く言いたかったんです」 (BOSE)
「普通に暮らしてても、禁止事項みたいなことが異常なくらい増えてるでしょ」 (SHINCO)
「今って、気軽にタバコも吸えないような雰囲気じゃないですか。エコ替えとかも、おかしいでしょ(笑)。しかも、正論的な理由つけることが多いし。そんな風に、テレビ観ながら文句言ってる感じが歌詞に出てます(笑)」 (ANI)
もちろん彼らは、昔は良かったとノスタルジーに浸ってるわけではないし、単にグチや文句をいってるだけじゃない。世相をぶった切るかのような問題提起をしているわけだ。
では、アルバムのサウンドに触れていこう。ニューウェイヴとジャズ・ファンクがミックスしたような「Antenna of the Empire」。ロボ宙をフィーチャーしたエレクトリック・ポップな「Station to Station feat.ロボ宙」。ジャジーで切ないメロディが響く「ライツカメラアクション」。ゆったりとしたトラックで、フィーチャリングの
birdが憂いを帯びた歌声を聴かせる「壊れかけの...feat.bird」。
木村カエラとの共作である痛快なポップ・ナンバー「Hey! Hey! Alright/スチャダラパー+木村カエラ」。そして、ソウル・フレイヴァーとキャッチーさが絶妙に合わさった「Good Old Future(album version)」など、アップ・チューンからディープなものまで、振り幅の広い楽曲を次々と聴かせてくれる。
「(クラブに)遊びに行って、こんな曲がかかってたらいいなって曲を作っていったつもりなんです。あと、サンプリング、打ち込みとか、今まで体現してきたいろんな手法が使えたらなって」 (SHINCO)
さて、話はアルバム全体のテーマに戻る。何かと規制が増えたり、世の中のルールにそぐわなきゃダメといった気風がはびこる現状をシニカルに描いている本作だが、それで終わりじゃなく、これからの希望も込められているのだ。
「そうそう、希望ですよ。だって、みんなもおかしいと思ってるんじゃないかなって。例えばタスポでもさ、未成年者の喫煙防止っていってるけど、実際は機械を売りたいわけでしょ。世の中の人が気づいてないって感じで物事が進むけど、みんなバカじゃないし。でも、従わなきゃいけないルールが先にできちゃってる。そういう中で生きてるから、イライラした歌詞が出てくる(笑)。魂の叫びですよ(笑)」 (BOSE)
ガタガタな現状だけど、未来はいい方向に向かってほしい。まさしく『11』は、スチャダラパー流のポジティヴなメッセージが詰まったアルバムなのである。
「アルバムの中には、ハッと思うような入り口がいっぱいあると思う。なんでこんな世の中になったのか? なんで昔みんなが思っていた未来のようになってないんだろう、とか。そこに気づくと身の回りの扉が開いていくだろうし。そのきっかけに、このアルバムがなればいいなと思ってますね」 (BOSE)
取材・文/土屋恵介(2009年3月)
スチャダラパー LIVE TOUR '09
『Station to Station 2009』情報
●6月6日(土)
●札幌CUBE GARDEN
●open18:30/start19:00
●料金:1F Standing \4,200(ドリンク別) 2F SEAT(自由席)\4,700(ドリンク別)
●問い合わせ:WESS 011-614-9999
●6月10日(水)
●名古屋クラブクアトロ
●open18:30/start19:30
●料金:\4,200(ドリンク別)
●問い合わせ:JAILHOUSE 052-936-6041
●6月11日(木)
●大阪BIGCAT
●open18:30/start19:00
●料金:\4,200(ドリンク別)
●問い合わせ:GREENS 06-6882-1224
●6月13日(土)
●福岡DRUM LOGOS
●open19:00/start20:00
●料金:\4,200(ドリンク別)
●問い合わせ:BINGO BONGO 092-716-2658
●6月14日(日)
●高松オリーブホール
●open17:00/start17:30
●料金:\4,200(ドリンク別)
●問い合わせ:デューク高松 087-822-2520
●6月17日(水)
●赤坂BLITZ
●open18:00/start19:00
●料金:1F Standing/\4,500(ドリンク別) 2F SEAT/\5,000(ドリンク別)
●問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
●6月21日(日)
●沖縄桜坂セントラル
●open18:00/start19:00
●料金:\3,500(ドリンク別)
●問い合わせ:桜坂セントラル 098-861-8505