8年ぶりとなるアルバム
『AQUA NOME』を7月8日にリリースする
EPO。「納得するまで出したくなかった」という本作には、じっくりと時間をかけて作り込まれた本格志向のワールド・ミュージックや感動的なポップスが収録されている。本作について彼女に話を訊いた。
2000年からのライヴでじっくりと丁寧に熟成させた、壮大にして、深遠な楽曲の世界観。EPOが満を持して8年ぶりに放つアルバム『AQUA NOME』は、神秘的なワールド・ミュージックと、彼女のメッセージが心にダイレクトに響くポップスが同時に味わえる一枚。その作品が持つ世界観は、とても強い引力を持っているというのが第一印象だ。そもそもこれだけの作品を作ろうとした背景には、まずは20代の頃の葛藤があったという。
「20代の頃は大半がポップな音楽をやっていたんですけど、“自分の声が一番生きる音楽ってなんだろう”ってずっと考えていたんですね。ポップスを歌う自分というのも紛れもない本物の自分だし、そうでない自分もいるような気がいつもあって。もうちょっと自分が成熟したらありとあらゆる可能性にチャレンジしていきたいなとその頃から思ってたんですね。いつか時期がきたら理想のことができる環境を作ろうと思ってたんです」
理想を実現する“時”とは、彼女が日本を離れ、ヴァージンUKと契約して作った『FIRE & SNOW』(1991年)の頃にまで遡る。
「ロンドンに行ったら、そのアーティストが純粋にやりたいこととか、コアなエッセンスをそのまま作品にすることで商業ベースに乗っているっていう、アーティストにとっては健康的なミュージック・ビジネスが、その頃のヨーロッパにはあったんです。ちょうどヴァージンUKと契約したときに、“君らしいものを作ってくれたら僕たちは契約するよ”って言ってくれたんですね。その一言がきっかけだったんですね。その後に日本に戻ってきてからは92年に
『WICA』っていうアルバムを出したんですけど、これも精神的なアルバムで、ワールド・ミュージック的な匂いはないんだけど、どこかプリミティヴな自分の肉体と声がうまくマッチした作品がたくさん入っていて。その『WICA』っていうアルバムが、今の音楽性に繋がってますね」
『AQUA NOME』に収録された楽曲は、一曲一曲、異なる個性を持ちながらも、それぞれのベクトルの中で完成度が高い。その要因は、気心の知れた演奏者たちとの共同作業でじっくりと作りこまれたことも影響している。
「『AQUA NOME』に収録されている曲は、あっという間にギターで出来てしまったんです。どのミュージシャンと一緒にやろうかなと見渡したら、馬頭琴の嵯峨治彦さんとか、ギターとウードを弾いてくれている秋元カヲルさんとか、笹子重治(
ショーロクラブ)さんとか、渡辺亮さんもとか、ぴったりの人が周りに居て。最初にライヴでやったのは2000年の青山マンダラだったと思います。前置きも何もしてなかったので、イメージとのギャップにファンの皆さんはすごいびっくりなさってました(笑)。昔あったかもしれないどこかの国のトラディショナル・ミュージックのようなところもあるので、ミュージシャンの細胞レベルまで音楽が入ってくるまで時間をかけたいというのがありましたね。収録されている〈M〉とか〈Noah〉とか〈AQUA NOME〉とかは必ず、歌いながら想像しているビジョンというのがあって。海があって、島があって、その上空を飛んでいるような。なんていい国なんだろうって。これはファンタジーなんですけど、そういう感じがしますね」
また、本作には、ライヴで聴いて感動したというファンからの要望もあり、「たったひとつの」という曲も収録されている。この曲は彼女の精神的なルーツの一つでもある大切な作品だ。
「〈たったひとつの〉は最初、自分のために作った曲なんですね。両親に感謝しておきたくて。ライヴで共感していただいた方が多かったんですけど、ようやくCDに入れることができました」
7月7日と8日には東京・青山円形劇場で発売を記念したライヴも行なわれる。『AQUA NOME』の圧倒的なファンタジーの世界は、ぜひ生でも体感してもらいたい。
取材・文/清水 隆(2009年6月)
〈『AQUA NOME』発売記念コンサート〉
●7/7(火)、7/8(水)
●東京 青山円形劇場
●OPEN/START: 18:30/19:00
●TICKET:税込\6,000
●問:楽インターナショナル[Tel]03-3481-3571