電気グルーヴの石野卓球とTOKYO No.1 SOUL SETの川辺ヒロシのユニット、InKが再始動した。1年半ぶりのセカンド・アルバム『InK Punk Phunk』をひっさげての登場だ。前作『C-46』の全8曲46分が「短すぎた」(卓球)という反省から、今回は全18曲80分弱の大盤振る舞い。もちろん中身も彼ららしいはちゃめちゃさだ。テクノからロックからダブからラップから、あらゆるエレクトロニック・ミュージックの見本市のような多彩な内容となった。まさに「期待もされない代わりに責任もない」(卓球)、InKの天衣無縫な遊び心が炸裂している。
サーフコースターズの中シゲヲ、
POLYSICSのハヤシヒロユキもゲストで参加した大娯楽作だ。
「前作でやり残したこととかいっぱいあったから、ライヴが終わったあとぐらいからもう次を作りたくて、そわそわしてた(笑)。アルバム出せるかどうかわからないところから2人でスタジオに入って、作業してましたね。最初は何も構想がなくて、白紙の状態。“12インチ1枚作れたら”ぐらいのつもりでやってたら、どんどん曲ができていった」(川辺)
という言葉からも、彼らがいかに旺盛な創作意欲にかき立てられていたかがわかるだろう。川辺が「適当に」レコード棚から選んできたネタ(卓球曰く「お題」)を「思いつきと気分で」(卓球)でいじくりまわしているうちにメロディが生まれ、リズムが決まり、アレンジが固まっていく。作り始めても、どこに着地するか最後までわからない。「収録曲の〈I.P.P.(InK PunK PhunK)〉なんて、きれいな絵が出来上がりかけてたのに、最後の最後に卓球が絵の具をぶちまけて、“えーっ、そんなことになっちゃうんだ!”みたいな(笑)」(川辺)。
「俺はかなりトゥー・マッチなほうだからさ(笑)。やりすぎて台無しにするのだけは避けようと(笑)」(卓球)
いわば、どこに向かうかわからないドライブのようなもの。2人で適当にアクセルとブレーキを踏みながら闇雲に進む。でもこの相手なら心配はない。「見たことのない、面白い場所ならどこでもいい」(卓球)と、ディテールにこだわって時間をかけるより、勢いと熱と衝動とエネルギーに任せて暴走した結果の18曲である。もちろんそこにはただのエゴの発露ではなく、ポップで開かれた商品性の高いものに落とし込むことのできる2人のセンスが光っているのだ。
「スポーツでいえば、前のアルバムはやる種目が決まってたんだけど、今回はまだ誰もやったことのないスポーツを作ってやっているような感じ(笑)。もちろんエンタテインメントであることは大前提。そんなマイナーな競技にするつもりはないからさ」(卓球)」
TOKYO No.1 SOUL SETも電気グルーヴも近々活動を再開する予定だ。だがそれらの“本業”ではなかなかできない、実験や冒険がたっぷり詰まったアルバムが『InK Punk Phunk』なのだった。
取材・文/小野島 大(2007年7月)
■InK LIVE SCHEDULE■“STERNE”
2007年08月03日(金)
WOMBOPEN : 23:00
ADMISSION : \\4,000 / WITH FLYER : \\3,500
WOMB MEMBER : \\3,000
【SPECIAL LIVE】
InK
【DJs】
TEN / DJ TASAKA
【VJ】
DEVICEGIRLS