昨年10月のメジャー・デビュー以降、クールかつダンサブルなサウンドを日本の音楽シーンに送り出してきた
MiChi。デビュー1周年を目前に控えた今、4thシングル
「YOU」に続き、待望の1stアルバム
『UP TO YOU』を9月30日にリリースする。自身初のバラードとなる「YOU」に加え、アルバムの中でも、自分の弱さを正直に綴った楽曲や「CDになるのはこれが初めて」という自ら作詞作曲を手掛けた「Oh Oh…」など、今回のリリース作品はこれまで見せてこなかった一面を惜しみなく見せた意欲作。シンガーになるために来日してから今日までの集大成といえる今作について、MiChiに話を訊いた。
――待望の1stアルバム『UP TO YOU』の前に先行リリースされる「YOU」は、MiChiさん初のバラード。支えてくれた人への「ありがとう」という気持ちを込めたこの曲は、実体験だそうですね。
MiChi(以下、同) 「はい。歌詞の内容から、イギリスから日本に来る時のことって思う人もいるかも……まぁ、空港に向かう途中で泣いたっていうのは本当だけど(笑)、それだけじゃないんです。ここまで来る間にツラい時期もあって、そういう時に“大丈夫だよ”とか“MiChiならできるから諦めないで”って言ってくれた人がたくさんいたんですよ。ツラい時期を乗り越えられたのは彼や彼女たちのおかげ。この曲はそういう人たちへの感謝の気持ちであって、誰か一人に向けてという感じじゃないんです」
――ツラい時期っていうのは、日本に来ても思ったように物事が進まなかった時期?
「そうですね。本当、ただ歌を歌うのが好きってだけで、何のコネクションもない状態で来たんで。先も見えないし、家族や友達とも離れてるし。途中、日本に来たことは失敗だったかなって思うこともありました。事務所に所属してレッスンを始めてからも、日本語で歌うことの難しさとか、いろんな壁にぶつかって……。その時期を支えてくれた人たちは本当に大切な存在なんです」
――この曲を今のタイミングでリリースするということにも、何か理由があるんですか?
「一応、リリース・プランとしてアルバムまではすべてアップテンポかつエレクトロ・ダンスっぽい感じでいく予定だったんですよ。でも、
〈PROMiSE〉〈ChaNge the WoRLd〉〈KiSS KiSS xxx〉って出したところで、4枚目はなんか違うタイプの曲を……“あ、〈YOU〉だ!”っていきなり閃いて(笑)。アルバムってやっぱり一つの区切りだし、そこには今までの自分が詰まってるってことですよね。この〈YOU〉は本当、これまでのMiChiを支えてくれてありがとうって曲だから、どうしてもアルバムの前に出したかったんです。それから、1stシングルの〈PROMiSE〉ともちょっと関係してて。辛い時期を乗り越えた後に作ったポジティヴな〈PROMiSE〉に対し、〈YOU〉はその辛い時期に作った曲で、自分の中でこの2曲はすごく繋がってるんですよ。だからこそ“アルバム前”という同じところで出したかったんです」
――アルバムの前に気持ちの整理ができたというか。
「そうですね。で、さらにアルバムでもう一区切り」
――アルバムの完成、楽しみにしていました。MiChiさん自身はどういう作品にしようと思っていましたか?
「まず、リアルな自分を見てもらいたくて……。あと、ヴァリエーションの多いものにしたかった。踊れる曲もあるけど、しっとり聴かせる曲もあるし、すごく感じさせる曲もあるしって、いろんな感情を動かされるようなものにしたいと思いながら作りました」
―― 一番意外だったのが、収録曲の中には今までにない、弱さとかネガティヴさを書いた曲もあること。特に「Why oh Why」は歌詞を読んでちょっとビックリしたのですが、そういう一面を出すことに不安や躊躇はありませんでしたか?
「それが、全然なくて。やっぱり今回のアルバムではリアルな自分を見せたかったし、自分自身も常にリアルでいたいので。人と人との関係も、きっと壁を倒した瞬間、相手も心を開いてくれると思うんです。〈Why oh Why〉は、自分に負けちゃう自分だったり、コンプレックスだったりを正直に書いていて、たしかにちょっと衝撃的かもしれないけど、でもどこかコミカルな部分もあったりして。こういう歌詞を書くのは好きだなって、自分でも新たな発見があった曲なんですよ」
――〈酒でも飲んで忘れたいのよ〉っていうフレーズが印象的でした(笑)。
「私がいつもそうだから(笑)。すごく自分らしい歌詞だなって思います」
――MiChiさんの強さも弱さも出た今回のアルバムは、まるで“小悪魔”みたいな魅力を持っているような気がします。
「小悪魔(笑)! でも、その通りですね。両方あるっていうこと、私にもみんなにも。両方見せてるからこそ、どちらも強調されるのかも……。やっぱり“人間”ってことですよね(笑)」
――そういう意味ではとても“人間臭い”アルバムと言えますね。
「こういうエレクトロな音だけ聴いてると、人間臭くなさそうに思う人、いっぱいいると思うんですよ。ただカッコイイとか、ノリがいいとか。でも本当はそうじゃないんだよってことが、このアルバムを通して伝わったらいいなって思います」
取材・文/片貝久美子(2009年8月)