10月7日にセカンド・フル・アルバム
『予感』をリリースする
間々田優。これまでミニ・アルバム
『あたしを誰だと思ってるの』、ファースト・フル・アルバム
『嘘と夢と何か』を発表し、自らの心の内側にある憤りや悔しさをアコースティック・ギターと声で吐き出してきた。しかし今作では、彼女のそんな“吐き出さなきゃいけないもの”をポップなメロディや、音楽そのものが力強く救いだしているような仕上がりだ。フォークも歌謡曲もブルースも……とアイディアに満ちたアレンジと、何より“音楽で人と向き合う素直な気持ち”が間々田優のミュージシャンとしてのポテンシャルを引き出している。今作に至るまでの精神的な変化と、衝撃的なリード曲「アイドル」について語ってくれた。
――今作『予感』は、これまでとは異なる明るく力強いエネルギーに満ちた作品になっていますね。
「まずは、頭で考える前に自由に作ってみようかなと制作をスタートしたアルバムです。今までは日常生活の中で“こういうことを言ったら友達に引かれちゃうんじゃないか”とか、“こういうことは常識的じゃないんじゃないか”みたいなことも歌っていきたいと思っていて、“音楽の中では自由だ”と確認しながら曲を作っていたはずだったんです。でもいつの間にか“これは歌っても平気”とか“これを歌ったら間々田優らしくない”とカテゴライズをしてた自分がいて。もっと正直にいろんなことを歌えたらいいなと思ったんです。楽しいことを楽しいと言ったり、嬉しいことを嬉しいと言ったりする、それも自分。日常に普通にあるような感情も歌えるなと思った時にいろんな曲が出来ていったから、今までのアルバムとは全然違うものになったなと思います」
――リード曲の「アイドル」はミュージック・ビデオでも最初はアイドルのような衣装と歌い方で、かなりインパクトがありました。
「初めは“私の希望の光は音楽だけ、音楽を失ったら私は生きている意味なんてないんだ”という気持ちで歌詞を書いていたんです。でも、書いているうちに“そうじゃないな”と思ったんです。というのも、私はいつも周りのミュージシャンやスタッフにそれぞれの曲のイメージが伝わりやすいように、イメージ画を描くんですけど。この曲の歌詞に描いてたイラストがなぜかいわゆる80年代風アイドルみたいな髪型の女の子だったんです。それで“アイドル”ってどういう意味だろう? と思って辞書で調べてみたら“偶像”という意味の他に“目標とする人”“尊敬する人”と書かれていて。だったら華やかなステージに立ってる女の子だけがアイドルじゃなくて、隣にいる人や家族や恋人や友達みんな私にとってアイドルなんだと。そこからまた歌詞も変わっていったんです」
――そもそも「アイドル」という曲を作る際に“私の希望の光は音楽だけ、音楽を失ったら私は生きている意味がない”とまで思ったのはどうしてだったんですか。
「ファースト・フル・アルバムをリリースしてからいろんな人に聴いてもらっていろんな人に出会う機会が増えて。それと同時に、会ったこともない人の評価や批判も耳に入るようになって、すっごく怖くなったんです。“ああもう表現するのが怖い〜”ってなった。そこで“自分自身の音楽を守らなきゃ”って必死になって“自分には音楽があるから大丈夫だ”って思ったんです。それなのに、今年の2月のワンマン・ライヴをインフルエンザで延期にさせてしまい、自分が唯一すがりついている音楽が手から離れてしまったような感覚になって。その時に、本当に希望を失って、またこうして曲を作って歌を歌い続けられるなんて思えなかったほど落ち込んだんです」
――そこからどうやって立ち直ったんですか。
「ワンマン・ライヴを1ヵ月後にさせていただいて、曲作りやレコーディングがあって、ほんとに自分一人の間々田優じゃないし、自分一人ではもう辿りつけないところに来てるんだなっていうことをあらためて感じたことが大きいですね。そして私は音楽が大切なんじゃなくて、やっぱり人が好きで人に認められたいんだって、“アイドル”という曲を作りながらひとつの答えを見出すことができたんです。この曲はこれから一所懸命伝えて行きたい大事な曲になりました」
――そうした“人が好き”という気持ちはこのアルバム全体にも通じていますよね。これまでだったら間々田さんが抱えている想いを音楽にぶつけて、そこで完結しているところが少なからずあったと思うんですが。
「ほんとにそうですね。でも今は自分の中にある不安だったりとかも全部含めていろんな人と結果的に笑い合えたり、いがみ合ってぶつかりながらも人と触れ合えて行けたらいいなと。そっちの方がよっぽど私は楽しいんだろうなって思ったんです」
――間々田さんは自分の中に“幸せのタンク”と“不幸せのタンク”があるとすれば、どちらかというと“不幸せのタンク”から曲を生み出しているタイプだと思っていたんです。今作『予感』からは誰かに歌をプレゼントするような喜びや、人と楽しさを分かち合うような曲も聴こえてきて、ちょっと安心しました(笑)。
「そうですね(笑)。私は家族も友達も大好きだし、“幸せのタンク”にも結構タプタプと入ってるのに、自分が今幸せだと思うことがいけないことだと思ってたんです。幸せになっちゃうと後は不幸になるしかなくて、逆に不幸になったり落ち込んだりすると後は上がって行くしかないと思ってたから、たとえ幸せの中にいても“ここに不幸の芽がある!だから私は不幸なんだ”って言い聞かせてきた。でも自分はちゃんと幸せなところにいるんだよ、それを感じていいんだよって、アーティストとしての間々田優だけじゃなくて個人の間々田優もちゃんと自信を持って感じられるようになりました。だからこそ不幸せな曲だけじゃなくて幸せな曲も書いていいんだって、今は思えるんです」
取材・文/上野三樹(2009年9月)
【Live Report】
2009年11月23日(月・祝)
間々田優ワンマン・ライヴ「事が起こるその前に」
東京・原宿 アストロホール
2ndフル・アルバム『予感』に関するインタビューで間々田優は、「やっぱり私は人が好きなんだって思えた」「もっとたくさんの人に伝えたい、つながってみたい」と繰り返し発言していた。そこから生まれた彼女の新しいモチベーション、音楽に対するポジティヴな姿勢は、この日のワンマン・ライヴにも強く出ていたと思う。
まずはグラビア・アイドル“ままゆう”(作画:間々田優)による前説(?)から始まり、いきなりの「アイドル」――アイドル風ポップとグランジ系のロックがひとつになった、異色にして刺激的なナンバー――をぶちかます。この時点ですでに“表現者・間々田優”の凄まじさ、おもしろさ、そして、拭い去ることができない哀切なムードが濃密に伝わってくる。最初のピークは「予感」のなかでも突出してポップな「クリーム」。モータウン・テイストのリズムを擁したこの曲の高揚感は、これまでの彼女に新しい要素を加えることになったようだ。
しかし、マイクを使わない(!)弾き語りによる「ダリ」あたりから、ライヴの空気が大きく変わる。さらに「3つ」「真夜中」という情念系の楽曲を続け、心のなかの暗部、陰鬱な精神モードをこれでもかとさらけ出そうとする間々田。恨みと悲しみがまぜこぜになりながら、生々しく、切実な歌を描き出していく彼女の姿に、すべてのオーディエンスの視線と意識が集まっていく。どうしても自分のダークサイドを表現せざるを得ない業の深さもまた、言うまでもなく彼女の魅力だ。
アンコールでは今回のワンマン・ライヴのために書き下ろされたという「二人のビッグショー」を披露。派手なギターリフと爽快に突き抜けていくメロディを持つこのポップ・チューンは、間々田優の新たなアンセムとなっていくはず。「まさか私がこんな歌を歌うなんて! 人は変われるぞ! みんなもどんどん変わっていこう!」というステージからの叫び、彼女の音楽がさらに大きなフィールドへ広がっていくための、壮絶な決意表明だったのだと思う。
取材・文/森 朋之
【Information】
「アイドル」PV間違い探しに挑戦!! オフィシャル・サイト内の特設サイト(
http://mamadayu.com/idol/)で試聴できるPVが正しいものですが、本サイトを含めた、BARKS、ナタリー、hotexpress、goo音楽、myspace、GyaO!、エキサイト、オリコンスタイルと各サイトで見ることができるPVにはぞれぞれの映像に間違いがあります。公式サイトとどこが違うのか、挑戦してみてください!
■「アイドル」スペシャル・サイト:
http://mamadayu.com/idol/ 間々田優 2ndフル・アルバム『予感』2009年10月7日発売
AKMY-10003 2,300円(税込)
間々田優本人直筆絵本付き!!
[収録曲]
01.ハサミ
02.髪の毛
03.ロスタイム
04.クリーム
05.めんどい
06.アイドル
07.鐘
08.小さなお姫さまの歌
09.花の恵
10.ニュース
11.HOME SWEET HOME
12.カコ
〈ライヴ・スケジュール〉間々田優ワンマンライブ「事が起こるその前に」
●2009年11月21日(土)大阪公演・梅田Shangri-La
●2009年11月23日(月・祝)東京公演・原宿ASTRO HALL
■オフィシャルHP“間々田組”:
http://mamadayu.com/■オフィシャルマイスペース“間々田組マイスペ支店”:
http://www.myspace.com/mamadayu