デビュー20周年を迎えた
高野寛が
『確かな光』以来、約5年ぶりとなるソロ・アルバム
『Rainbow Magic』を発表した。プレイヤー/プロデューサー的なスタンスで音楽の現場に携わってきたここ数年の活動から、ある種、職人的なイメージで語られる機会が多くなった彼ではあるけれど、今作で聴くことができるキラキラと力強い生命力に満ち溢れた歌の数々はどうだろう! 真直ぐで力強い歌声からはシンガーとしての彼の姿が明確な輪郭をともなってクリアに伝わってくる。初期の代表曲「虹の都へ」の新ヴァージョンを収録するなど、原点回帰と同時に新たな“始まり”をも予感させる今作について高野寛に話を訊いた。
――アルバム取材用の紙資料に掲載されていた高野さんのコメントに“第二のデビュー盤”という言葉が使われていて。久々のアルバムを夏にリリースした矢沢永吉さんも、ほぼ同じことを言ってたんでビックリしました(笑)。 高野寛(以下、同) 「そうそう。矢沢さんも、おっしゃってましたね。でも真似したわけじゃないですよ(笑)」
――そもそもデビュー20周年目にして、“第二のデビュー”みたいなモードに突入したのには何かキッカケがあったんですか?
「いろんな要因が重なり合った感じですね。ここまで準備期間に恵まれたのもデビュー以来だし、ここ数年、バンドやセッションを通じて身に付けてきたものが自分の中に貯まってきていて、それを自分なりに表現したいという気持ちが高まっていたり。でも一番大きかったのは歌に対する意識の変化。歌をちゃんと伝えようと思って作ったアルバムは今回が初めてなんです。ここから始まるという意味でも、“第二のデビュー盤”という表現が近いのかなと思って」
――たしかに今作は全編を通じて、高野さんの歌が常に真ん中にあるような印象を受けました。
「(先行シングルの)
〈Black & White〉を作るにあたって、プロデュースをお願いした
亀田誠治さんに、できあがった曲を4ヵ月くらい聴いてもらう時期があったんですけど、そのときに、自分がいつの間にか手先で歌詞を書くようになってしまったということに気がついたんですよ。コンピュータに向き合いながら歌詞を書き続けていると、だんだん心の動きが弱まって、単なる言葉選びみたいな感じになっていくんです。今回は、まずそれをやめて、実際に歌いながら、メロディにフィットする言葉を探していこうと思って。歌詞に関しては今回、
(忌野)清志郎さんの影響も大きかったですね。偶然なんですけど、亡くなる2ヵ月ほど前から、清志郎さんの歌をよく聴いていたんです。うちの2歳の息子も清志郎さんの曲を流すと機嫌が良くなったりして。清志郎さんの歌詞は、シンプルだからこそ子供の耳にも、すっと飛び込んでくるし、すぐに口ずさむことができる。やっぱり歌と言葉の強さこそが大事なんだなって。そのシンプルな強さをできるだけ自分の音楽にも活かしたいなと思ったんです」
――それが歌にもおのずと影響したわけですね。
「そうです。歌はメロディをなぞるための道具じゃなくて、自分の中にある思いを相手に伝えるものなんだって。それを改めて清志郎さんから教えてもらった気がします」
――全体の雰囲気はポップでカラフルなんですけど、随所に高野さんの生々しい“体温”みたいなものが感じられて。それが今作のキモになっているような気がします。
「それはタカシ(永積崇/
ハナレグミ)と歌ってる〈明日の空〉と、
原田郁子ちゃん(
クラムボン)と歌ってる〈CHANGE〉で特に顕著ですね。あの2曲は最初から最後までノー編集なんですよ。2人で同じブースに入って、せーので歌って」
――そういう歌入れのスタイルは今回が初めてですか。
「20年目にして初です。スタジオで歌を歌うことって、たまに、すごく不自然に思えることがあるんですよ。だってガラスとか壁に向かって歌ってるわけだから(笑)。どうしてもライヴのときと同じようにして歌うのって難しいんですよね。でも、今回、タカシや郁子ちゃんが来てくれたおかげで歌のセッションができたんです。それによって歌にライヴ感も生まれて。今回のレコーディングのなかでも、それは大きな収穫でした」
――緻密さとラフさだったり、今作にはアンビバレンツな要素がすごく自然な形で同居していますよね。歌詞の話に戻れば、「Black & White」で歌われている“闇と光”を顕著に、ほぼすべての曲でネガとポジが同時に描かれていて。だからこそ、耳触りがいいだけでは終わらない、リアリティのあるポップ・アルバムになっているんじゃないかと思うんです。
「40過ぎの男がファンタジーだけを描いてるのも不自然ですから(笑)。特に今は、すごくヤバい事件が身近なところで、いつ起こってもおかしくないような世の中になってしまったし。自分の中から出てくる表現も、自然とそういうものになるんでしょうね。実は『Rainbow Magic』というタイトルも、同じような意味合いで付けたところがあって。虹は綺麗なものだけど、雨が降らないと見えないものだし、魔法という言葉にも、たとえば呪術的だったり、ドロドロした感じもあるし」
――つまり、“虹”も“魔法”も単にポップなメタファーとして使っているわけではない、と。
「そうです。最初は、それこそ僕のやっていることを分かりやすく表現するために“ポップ”という言葉をタイトルに入れようと思ったんですけど、単に甘いだけの作品だと思われちゃうのも違うなと思って。もちろん今回のアルバムはポップ・ミュージックとして楽しんでもらえるようなものになっていると思うんですけど、その根底には今を生きる自分の気分のようなものが、これまで以上に色濃く流れているように思うんですよね」
取材・文/望月哲(2009年9月)
〈高野寛LIVE 2009 Back to pop 〜20th Anniversary〜〉
デビュー20周年を迎え、5年ぶりとなるバンド・ソロ・ライヴ決定!
●11月13日(金)
●東京・SHIBUYA-AX
●開場18:30/開演19:00
●チケット:全席指定 税込 5,500円(入場時に別途ドリンク代500円必要)
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:326-042)
ローソンチケット 0570-08-4003(Lコード:70478)
e+(イープラス) HYPERLINK "http://eplus.jp" \\t "_blank" http://eplus.jp(PC・携帯共通)
※3歳以上チケットが必要
●問い合せ:ディスクガレージ 03-5436-9600(平日12:00〜19:00)
●11月19日(木)
●大阪・umeda AKASO(旧バナナホール)
●開場18:30/開演19:00
●チケット:自由空間 税込5,000円(別途ドリンク代500円・整理番号付き)
●一般発売日 2009年10月10日(土)
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:331-842)
ローソンチケット 0570-084-005 (Lコード:51655)
CNプレイガイド 0570-08-9999
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●問い合せ:ソーゴー大阪 06-6344-3326