名古屋の至宝! そんなコトバが嘘のようにハマる奇蹟のハードコア・トリオ、
NICE VIEWが前作から4年半ぶりとなる2ndアルバム
『SOPHISTICATED AND BARBARIAN』をリリースした。ノイズ、フリー、ジャンクなど、あらゆる刺激的な音でおめかししたファスト・コア・サウンドの隙間からこぼれる絶叫は、聴く人の心を揺さぶり続ける。彼らの地元、名古屋でショータ(vo、g)とツカ(b、vo)に話を訊いた。
ショータ 「いくつかはまるっきりやっていない曲もありますね。〈a-ho-he〉、〈コンドームシティ〉〈コンドームシティの崩壊〉、〈真空管baby〉、〈PUZZLE OF LIQUID REPLIES〉かな。〈コンドームシティ〉はフリーで録音した曲です」
──ライヴを観ていたかぎりでは、どんどん(曲の構成が)複雑になってきた印象がありますが、意図的なものですか?
ツカ 「よく言われるんだけど……」
ショータ 「複雑になってんのかな? それはもう僕らの実力が……」
ツカ 「追いついてないんじゃないかと。気持ちだけでいっちゃって、手が追いついてない現実」
──レコーディングの期間は?
ショータ 「録音自体はそんなにかかってないんだけれども」
ツカ 「ミックスとマスタリングの期間がすごくあいちゃったんだよね。間にアメリカ・ツアーもあって、そこで曲を足したってのもあるね」
──当初はアメリカに行く前、2008年末に出るっていう話でしたよね?
ショータ 「今年のアメリカ・ツアーに間に合わせようと思ったんだけど、全然間に合わなかった」
ツカ 「計画性が全くないもんだから。練習でスタジオ予約するにしても、もうちょっと予定立てれば良いんだけど」
──レコーディングは一発録りですか?
ショータ 「ヴォーカル以外は一発録りでガツンと」
──他に参加しているアーティストは?
ショータ 「今回は〈コンドームシティ〉で
ORdERの好女(コースケ)、〈コンドームシティの崩壊〉がPARA、
SUSPIRIAの西さん、〈PUZZLE OF LIQUID REPLIES〉でNOISE CONCRETEのジュリーが参加してくれました」
(C)岡崎桜花
──アートワークがいつも個性的ですが、今回は誰が?ショータ 「このアルバムは俺がやりました。次に出るディスコグラフィー盤はツカちゃん」
ツカ 「当番制とか順番で作るわけではなく、自分たちがそれぞれ勝手に作っているものにタイミングが合うとそれを使っています」
ショータ 「もじもじしながら“出来たんだけど”って見せる感じ」
ツカ 「ディスコグラフィー盤は、リリースに関しては現状未定です。でもとりあえずお金が出来たら自費で出す予定です」
──MySpaceにアップしている「告白」なども含め、今までの曲を全部リマスターしたという話は本当だったんですね。
ショータ 「アルバムを出す前の曲は全部やったね」
──今後その当時の曲をライヴで演奏する予定はありますか?
ツカ 「最近スタジオで昔の曲をやることはあって。気分は良いんだけれども……」
ショータ 「なんか違う」
ツカ 「“これ、なんかいい!”っていう再発見があったらやるかもしれません」
──NICE VIEWの結成について教えてください。
ショータ 「多分、1995年に結成。その頃から3人だけど、(現メンバーの)タロウが入ったのは1年後位かな。名古屋にあるレコード店“ANSWER”のレーベルからEPを1枚出して、その後に入ったはず」
──単独作としては過去にEPを2枚、『LIVE NICE VIEW』(2003年)と前作『THIRTEEN VIEWS WITH NICE VIEW』(2005年)を出して、今作をリリースしたということですね。そもそもどうやって知り合ってはじまったんですか?
ショータ 「大学が一緒で」
ツカ 「音楽の趣味が合ったとか、全くそういうのではなくて。新しくバンドをはじめよう、となった時にギターがショータで。そのバンドからヴォーカルが突然辞めて、残った3人でNICE VIEWをはじめました」
──影響を受けたアーティストで、3人共通なのは岡村靖幸だ、と聞きましたが、本当ですか? ショータ 「俺はほかの2人ほど好きではないよ(笑)」
ツカ 「多分俺が一番好きです」
(C)岡崎桜花
──曲作りはどんな風に進むんでしょうか?ショータ 「アイディアを持っていくと、他のメンバーが後付けしていく感じ」
──他の2人はかなり好き勝手やってるように受け取れますが。
ショータ 「譲れないところはちゃんと言うけど、好きにやってます。具体的に言っても、はねつけられるのがオチだろうし」
ツカ 「ギターがドラムの役目をやったり、ドラムがギターの役目をやったり……。そういうことをやれるポテンシャルはそれぞれにあるからできる、ということもあるんで。……そこを支えるのが俺の役目」
──前作をリリースした当時、音楽性は引継ぎつつも、いわゆる普通のハードコア・バンドが、とても個性的なバンドに変わっていった印象があります。具体的なきっかけや経緯はありましたか?
ツカ 「具体的な話し合いをしたことはないんだけど、それぞれが勝手にあのアルバムの時に変わったのは事実かな。今思えば気持ちのメモリが、パチンと変わったと思う」
──それまでは〈フールの誕生〉(『THIRTEEN VIEWS WITH NICE VIEW』収録曲)のような曲を作るバンドではなかったと思います。
ショータ 「〈フール〜〉は練習の時にあのリフを思いついて」
ツカ 「続けたら面白かった。スタジオの集まりが悪くて、全然進まなくてああいうことばっかりやっていて。たいていのことはピンとこないんだけど、あれは凄く良くて」
ショータ 「あれはほんとにそうだね、こうしよう!っていう話はなかったね」
──ずっと同じリフを演奏しているにも関わらず、集中して聴いていると途中で誰かがお休みしていたり、助け船を出していたり。
ショータ 「そこが良い」
ツカ 「あれは良いでしょ。ドラマ性があるというか、逆接的にエモーショナルでしょ」
(C)岡崎桜花
──NICE VIEWは活動がマイペースというか……やんちゃと言っても良いというか……言葉は悪いですが、受身だったり、計画性がない印象もあります。ツカ 「プランは確かに考えてないと思う。ライヴも誘われないと出ないし、スタジオでもライヴでも自分たちが楽しい……パチーン!とした感じ? それが本当に欲しいからやってる」
ショータ 「それが逆に良かったんだと思うけど、昔は人付き合いもよくなかったし。ハードコアのシーンにどっぷりはまっちゃうと、その中からしか世界が見えなくなるし、それを一歩引いて見ていられたことが、やっぱり音楽性にも結びついたと思ってる」
ツカ 「ハードコア以外の友達もたくさんおるからね。全くプランなしで、情熱だけでここまできましたよ、本当に。もうちょっと計算高くいろいろやったら、もっと別の展開もあったと思うけど、そこまで気がまわらんし」
ショータ 「売れると面白くなくなるっていうパターンを散々見てるから、俺たちはこうならないよっていうのはある。ひねくれてるんで、基本的に」
──3人でそういう話はしない?
ショータ 「しないね」
ツカ 「なんとなく、あぁホンキだなとか、こんなこと考えてんだろうなとかは感じることはあるけどね。そういう空気感でこいつちょっとこいつナメはじめてんな、と思ったりとかしたら、辞めてたんだと思うんだけど、そうはならなかった。話し合ってないのにそうならなかったというのが、長続きの秘訣じゃないかな。面白くなかったら即、辞めるもんね」
ショータ 「なるほどね。われわれは基本的に雰囲気で、具体性がまるでない」
ツカ 「あぁ。良いこと言ったね。具体性ないね」
ショータ 「うん。コンセプトや具体性はない」
取材・文/服部真由子(2009年10月)