弾けるポップさと突き抜けるメロディ! カジヒデキの会心のニュー・アルバム『STRAWBERRIES AND CREAM』

カジヒデキ   2009/10/27掲載
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 自らの愛するギター・ポップ道をひたすら貫き続けるカジヒデキは、日本の音楽シーンでもかなり特異な存在じゃないだろうか。90年代から活躍し続け、近年、映画『デトロイト・メタル・シティ』(以下、DMC)で再び注目を集め、そして夏フェスに出演し、爆発しまくるライヴで新たなファンを獲得しているカジくんの不滅のフレッシュさは、まったくもって恐るべしである。そんな彼が作り上げた通算12枚目のアルバム『STRAWBERRIES AND CREAM』は、弾けるポップさと突き抜けるメロディ、そしてネオアコ、UKインディといったキーワードが随所に散りばめられたみずみずしさ溢れる作品だ。彼の今の勢いを存分に感じ取れる新作について話を訊いていこう!



――新作『STRAWBERRIES AND CREAM』は、かなりフレッシュでポップなアルバムですが、元々どんな作品を目指してたんですか。
カジヒデキ(以下、同) 「前作『LOLLIPOP』の続編的なものを作りたかったのね。というのも『LOLLIPOP』は、自分の鳴らすポップ・ミュージックはこうだって提示できた新しいスタートって感じのアルバムだったし、それをもっと突き詰めたかったので」
――勢いみなぎる楽曲が多いですね。
 「それは、3年くらい前からフェスに出始めたことが影響してると思う。特に去年の『COUNTDOWN JAPAN』は、僕目当てじゃないお客さんがたくさん観てくれたのにすごく反応があって、その力が大きかった。それで、ライヴで盛りあがって楽しんでもらえるような曲を作りたいと思ったんです。90年代のダンス・ロック的なものを意識して書いた〈パッション・フルーツ〉、最近のUKインディ的な〈秘密のウィキッド〉とか、アルバム制作の前半に作った曲はリズムの強いものが多くて。で、メロディ重視の〈波打ち際ダッフル・コート〉〈スカ・ヴィ・フィーカ?〉とかは後半に作ったんです」
――弾けるような1曲目の「ミニスカート」は、1stアルバム『ミニスカート』のタイトルの楽曲を、10数年ごしに作ったことになりますね。
 「元々、ディレクターの櫻木さん(felicity / ex.trattoria)から、ずっと“〈ミニスカート〉って曲を作ればいいのに”といわれてたけど、なかなかそういう曲ができなくて。でも、“この曲は!”と思ったんだよね。それは、『DMC』の〈甘い恋人〉の作業を通して、もう1度自分のルーツ、特にソロの最初の頃を冷静に見られるようになって、それを自然と出せるようになったからだと思うな」
――あと、アルバムを通じてアレンジの切れ味がいいし、楽器の音色も面白い選択をしてるなと。
 「アレンジは、橋本竜樹(作曲家/アレンジャー)くんがかなりがんばってくれたんです。去年くらいから竜樹くんとは密に仕事することも多くて、彼のおかげで、より自分の出したい音を明確に出せるようになって。あとは80'S初期の音楽の影響はあるかも。この5年くらい、80年代のニューウェイヴを再発見したり、リアルタイムでは知らなかったものもいっぱい聴いたし。その頃のものって、あまり古臭く感じないんだよね。それと〈ラブ・イズ・オール〉はE.L.O.みたいなハッピーでポップなディスコって感じだけど、それも今回のアルバムの色として出したかったんです」


――歌詞の面では、前向き感のあるものが多いし、カジ節全開のラヴリーなワードもたくさん出てきます。
 「たぶん、曲を作っていて30代後半から一番悩むのが歌詞だと思う。年齢を重ねるにつれ、歌詞と、どう向き合うのがいいのか、何を歌うのがいいのかって。でも『DMC』の作者の若杉公徳さんが書いた〈甘い恋人〉の歌詞を歌ってみて思ったことがあるのね。人によっては“こういう歌詞を40代が歌うのは説得力が無い”とか、“40代が歌う恋愛の歌にしては幼すぎる”とか思うのかもしれないけど、でもポップ・ソングにあまりそこは関係ないなって。恋したときの気持ちや感覚は、いくつになろうと10代のときとあんまり変わらないかなと思うんです」
――細かい違いはあれど、基本は同じでしょう。それに、例えば10代の成長を描いた映画でも、作るのは大人だし。
 「そうそう。だったら自分の世界観をより築き上げていくことが大事かなって。まあ、自分の歌詞はそこまで甘くないぞと、〈甘い恋人〉には思ったけど(笑)。でも、そこも自分の要素のひとつだと思うし、その中でポジティヴな歌詞を書く、より甘い言葉を使うっていうのを今回は意識したところはある。〈ラブ・イズ・オール〉はそれが顕著に出てるし」
――“♪シエスタでドリーミング”とか“♪ハート・シェイプの明日へ”ってフレーズは、カジくんじゃなきゃ成立しないでしょ(笑)。まさに新作は、カジヒデキがカジヒデキに向き合って生まれたアルバムともいえますね。
 「(笑)。でもほんと、自分本来の持ち味が迷いなく出せたアルバムと思うし、昔から聴いてくれてる人はもちろん、『DMC』から聴いてくれた人にも、ぜひ楽しんでもらえたらと思います(笑)」


取材・文 / 土屋恵介(2009年10月)
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