ジャンルを問わず、ピアノ好きなら誰もが魅了される兄弟ピアノ連弾デュオ、
レ・フレール(Les Freres)。1台のピアノに2人で向き合い、ダイナミックに操る独自のプレイ・スタイルは“キャトルマン・スタイル”(“キャトルマン”はフランス語で“4本の手”の意味)と名づけられ、ピアノという楽器の新たな可能性とイメージを広げてきた。
10月21日にリリースされたニュー・アルバム
『ノエル・ド・キャトルマン』は、古今のクリスマス・ソングを集めたカヴァー集。得意のブギ・ウギ、ノスタルジックなバラード、ジャジィ・テイストなど、あらゆる要素が詰め込まれた宝箱のようなアルバムに仕上がっている。
――なぜ今年、クリスマス・アルバムを作ろうと思い立ったのですか? 何かきっかけがあったのでしょうか。
斎藤圭土(弟/以下、圭土) 「今年、レ・フレールは結成7周年を迎えました。そこで初心に返ること、原点を見つめ直すことを一年のテーマにしているのですが、僕たちにとって、クリスマスというのは原点のひとつなんですね。というのも、小さい頃に家族でクリスマス・パーティを開いて、そこで発表会をした思い出がとても大きいので」
――ご家族でクリスマス・パーティですか。それは素敵な思い出ですね。
圭土 「毎年やってましたね。僕らは兄弟姉妹が7人いるので、子どもたちだけでちょっとした劇団ができてしまうんです(笑)。発表会では劇と歌、ピアノやクラシック・ギターといった楽器演奏を披露していました」
斎藤守也(兄/以下、守也) 「といっても、その頃はまだピアノがあまり弾けなかったので、歌っている方が多かったかな。〈ジングル・ベル〉とか〈きよしこの夜〉とか、定番のクリスマス・ソングはほとんど覚えましたね」
――その発表会に向けて一所懸命練習してたのですか?
圭土 「けっこう本格的にやってましたよ!」
守也 「親に聞かせる、見せるための発表会だったので、練習はだいたい親がいない時間に内緒でやってました。5時に起きて朝練とか。冬の一番寒い時期に……」
(C)UNIVERSAL MUSIC
――前作のオリジナル・アルバム
『ピアノ・ピトレスク』をはじめ、レ・フレールのアルバムにはいつも、一枚トータルを通して描かれるイメージ、語られるストーリーがあると感じます。今回のカヴァー集についても、ただ名曲を並べただけではなく、やはり“レ・フレールがイメージするクリスマスの情景”が描かれているわけですよね。それが家族パーティの思い出だったと。
守也 「そうですね。昔の思い出のイメージは強いです。今でも思い出すと楽しい気分になりますから」
圭土 「やはり“家族”というのが僕らの原点なのでしょうね。クリスマスというと、恋人よりも、何より家族で過ごすというイメージがあります。親兄弟が全員集合して、家でパーティをした時の思い出が詰まってますね、このアルバムには」
守也 「家族というと、僕らが留学していたルクセンブルクもそう。ヨーロッパのクリスマスは、みんな家族で過ごしますよね。そういうイメージもけっこう入ってます」
――今作の聴きどころは、なんと言ってもメドレーの「ノエル・ド・キャトルマン」ですよね。14曲ものクリスマス・ソングの美味しいとこ取り!
守也 「このメドレーは、レ・フレールの結成当初から、クリスマス・ライヴをやるたびに演奏していたもの。今回はいつもとは違う、新しいアレンジで録音しました。〈ブギー・クリスマス〉も、ずっとライヴでやっている曲です。これはブギ・ウギの即興にクリスマス・ソングのメロディを乗せるという感じなので、演奏するたびにガラっと変わります」
圭土 「ずっとライヴでやり続けてきたという意味でも、今作は初心に返るという要素が大きいと思います。CDという形にできて嬉しいですね」
――ジャジィなマイナー・コードが大人っぽい「ジングル・ベル」、ボサ・ノヴァのリズムが心地よい「ホワイト・クリスマス」、切なくほの暗い「きよしこの夜」など、全20曲どれもバラエティに富んだ絶妙なアレンジで、まったく飽きさせません。アレンジはすべて2人が手がけたとのことですが、“この曲はこうしよう”というのは、どうやって 決めるのですか?
圭土 「はじめの段階で、まず話し合いをします。アイディアをお互いに出しながら構想を練る。この曲はこういうふうにできる、こんなこともできるといった感じで、最初は一つの曲にもいろいろなアレンジが存在するわけです。その中から、一番しっくりくるものを選ぶという」
守也 「はたで聞いてたら、たぶん話し合いには聞こえないと思うんですけど(笑)」
――そこは、さすが兄弟。言葉は少なくても分かり合えるわけですね。
守也 「でも大抵、話し合いだけではどうにもならなくなって、とりあえず弾いてみようということになる。2人でピアノに向かって、無言でひたすら弾きまくるうちに、徐々にできあがってくるというか」
圭土 「最終的には実際に弾いてみて、連弾としてもっともいい形でアレンジできるものを、試行錯誤しながら作っています」
(C)UNIVERSAL MUSIC
――どんなに仲がいいと言っても、話し合いの時点からレコーディング、そしてライヴ本番まで、ずーっと兄弟で一緒にいて、息が詰まったりすることはないんですか?
圭土 「プライヴェートではほとんど会わないですから、大丈夫です(笑)」
守也 「やはりそれぞれ個人で練る時間も必要なので。アルバム制作に入るときも、最初に意見をばっと出し合って、各々が一度持ち帰って考えて、その結果をまた出し合ってというように、要所要所で合わせたら、あとは個人の作業になります。練習に関しても同じ。2人で合わせる時間はそれほど多くないんです」
――今回はカヴァー集でしたが、作曲の方は日頃からしているわけですよね。もう次作の構想はあるのでしょうか?
守也 「もちろん! じつはもう『ピアノ・ピトレスク』を作っている最中から、早くも次のオリジナル・アルバムのイメージがありましたから」
圭土 「作り出すと止まらなくなっちゃうんですよね、イメージがふくらみすぎて。来年にはオリジナル・アルバムの制作を本格的にスタートする予定です」
取材・文/原 典子(2009年10月)
■レ・フレール コンサート・スケジュール
スペシャル・アルバム発売記念ライヴ
KIRIN presents Les Freres Noel de Quatre-Mains
12月11日(金)18:30 北海道・札幌市民ホール 大ホール
問:ユアソング[Tel]011-242-2200
12月15日(火)19:00 東京・Bunkamuraオーチャードホール
問:ホットスタッフ・プロモーション[Tel]03-5720-9999
12月19日(土)18:30 栃木・宇都宮市文化会館 大ホール
問:宇都宮市文化会館[Tel]028-636-2125
12月23日(水・祝)18:30 神奈川・横須賀芸術劇場 大ホール
問:横須賀芸術劇場 電話予約センター[Tel]046-823-9999)