湯川潮音、メジャー・デビュー後、初のカヴァー・アルバム
『Sweet Children O’ Mine』が完成した。
オアシスの「Don’t Look Back in Anger」に
レディオヘッドの「No Surprises」、さらには
ガンズ・アンド・ローゼズの「Sweet Child O’ Mine」に
エアロスミスの「Angel」など、洋楽ロックの有名曲を中心に収めた今作。60〜70年代のロックやブリティッシュ・トラッドをこよなく愛し、また、デビュー以降、オリジナル楽曲にとことんこだわってきた彼女が、あえて「ほとんど聴いたことがなかった」という、これらの楽曲をカヴァーすることになったいきさつとは? 湯川潮音に話を訊いた。
――カヴァー・アルバムという企画には当初、あまりピンときてなかったみたいですね。 湯川潮音(以下、同) 「そうですね。でも、よくよく考えてみれば、一番、最初に出したアルバム(
『tide & echo』 / 2002年)って全曲カヴァーなんですよ」
――そういえば(笑)。
「そうなんです。自分でもすっかり忘れていたんですけど(笑)。普段、ライヴではカヴァー曲を歌うこともあるんですけど、オリジナル曲を作り始めてからは、自分の作品にカヴァー曲を入れることに、すごく抵抗があって。でも、前作の
『灰色とわたし』でカヴァー(※
ドノヴァン詞曲による
メリー・ホプキンの〈恋は月をめざして〉)を1曲入れたことで変なこだわりがなくなったんです。自分では歌わないようなメロディだったりキーだったり、いろんなことを吸収できる自由さに気付くことができて。あとは
クマ原田さんにプロデュースをお願いした前作のレコーディングを通じて、何かを手放したり、人に任せることで、得るものがたくさんあることも分かったし」
――選曲はどんなふうに進めていったんですか?
「誰もが一度は聴いたことがある曲を中心に、歌い手としてフラットに向き合えるような、私自身、あまり思い入れの強くない曲を選びました。だから選曲に関しては、ほぼ他薦なんですよ。ファンの方にライヴでリクエストを募ったり、周りのスタッフにアイディアを出してもらったり」
――ちなみにガンズとか、ちゃんと聴いたことはあったんですか?
「〈Welcome To The Jungle〉は聴いたことがあったけど、今回カヴァーした〈Sweet Child O’ Mine〉は知らなかったです。あと、オアシスの〈Don’t Look Back in Anger〉も知りませんでした(笑)」
――そういう楽曲を歌うにあたって不安はなかったんですか?
「不安はまったくなかったです(きっぱり)。どちらかといえばワクワクするっていうか」
――むしろ期待のほうが大きかった、と。
「そうですね。せっかくカヴァー・アルバムを作るんだったら、これまで歌ったことのないような曲を歌ったほうがおもしろいと思ったし。それに前作同様、ロンドンで、ほぼ同じチームでのレコーディングだったから絶対、良い作品になるだろうなと思って」
――プロデューサーのクマ原田さんをはじめ、現地のミュージシャンとは前回の流れでコミュニケーションもスムーズに?
「そうですね。でも前回より、少しだけメンバーが増えていて。ポーランド、アイルランド、イギリス、オランダと、みんな違う国から来てるから、それぞれ考え方も違っていて、話していても刺激的でした。今回は、一軒家みたいなところで、全員ひとつ屋根の下で生活しながらレコーディングしたんです」
――真の意味でのホームメイド・レコーディングですね。基本的な1日の流れはどんな感じだったんですか?
「だいたい10時までには全員起きるんですけど、朝ごはんは私が作って。食事後にリヴィングに集まってセッションをはじめて、アレンジが固まりそうだったら、みんなはスタジオに入って、私はそのままリヴィングに残って歌をうたって。夕ご飯を作っている間、私は唄を歌えないから、その間は各自、リヴィングでダビング作業をしたり散歩に出かけたり。で、夕食後に作業を再開して、だいたい9時、10時には終わるんだけど、そのままなんとなく夜中の2時くらいまでスタジオで楽器を鳴らして遊んだり……。基本的には、そんな感じでしたね」
――生活とレコーディングの境目が、いい意味であいまいな感じというか。
「そうですね。日本でレコーディングしていたときは、すごくナーヴァスになって、レコーディングに向かう途中に無理やりスイッチを入れるようなこともあったんです。でもロンドンでのレコーディングは、食事や会話の延長線上にレコーディングがある感じで。録っている場所もいわゆるスタジオではないから、空気の流れが止まったような密閉された感じがなくて、すごくリラックスできるんです」
――今回、いざカヴァー・アルバムに挑戦して何か大きな発見はありましたか?
「今回、歌った全曲に関して思うんですけど、コードも簡単だし、すごくシンプルな構成なのに、これだけグッと聴き手を惹きつけてしまうのは凄いことだなと思いました。あと、私は普段、こうだと決めたら真っ直ぐ突き進んでしまう頑固なところがあって、作品を作るときも、ついつい視野が狭くなりがちなんですけど、思い切ってカヴァー・アルバムに挑戦したことで、音楽的な視野や価値観が一気に広がったような気がします」
――今回の経験は間違いなく今後に繋がっていくでしょうね。
「そう思います。絶対に次のオリジナル・アルバムに影響があると思うし。今回のアルバムを作ったことで、次に向かうステップにようやく辿り着けたなって思います」
取材・文/望月 哲(2009年11月)
〈Shione Yukawa presents Christmas Silent Orchestra〉
●日時:12月24日(木)
●会場:東京・ラフォーレミュージアム原宿
●時間:開場18:30 / 開演19:00
●料金:5,500円(全席指定)
●Christmas Silent Orchestra are:湯川潮音、徳澤青弦、吉野友加、権藤知彦、千住宗臣、山本タカシ、美濃隆章 and more
〈Thanksgiving TOUR 2010〉
●日時:1月24日(日)
●会場:福岡・Gate's7
●時間:開場17:30 / 開演18:00
●料金:前売4,500円(全自由・整理番号つき)
●問い合わせ:BEA [Tel]092-712-4221
●日時:1月27日(水)
●会場:大阪・BIG CAT
●時間:開場18:30 / 開演19:00
●料金:前売 4,500円(自由席)
●問い合わせ:清水音泉 [Tel]06−6357−3666
http://www.shimizuonsen.com●日時:1月29日(金)
●会場:愛知・名古屋Electric Lady Land
●時間:開場18:30 / 開演19:00
●料金:前売4,500円(全自由・整理番号付き)
●問い合わせ:JAILHOUSE [Tel]052−936-6041
http://jailhouse.jp●日時:1月31日(日)
●会場:東京・九段会館
●時間:開場16:45 / 開演17:30
●料金:前売 4,500円(全席指定)
●問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION [Tel]03-5720-9999
http://www.red-hot.ne.jp