SAKEROCKのトロンボーン奏者、“ハマケン”こと
浜野謙太率いる7人組ファンク・バンド、
在日ファンクが1stアルバム
『在日ファンク』を発表!
ジェイムス・ブラウン直系のディープなファンク・サウンドに乗せて届けられるハマケンの歌とシャウトは見事に汗まみれで、このバンドに賭ける熱い意気込みが(まさしく“ファンク”の語源とされる強烈な臭気をともなって!)ダイレクトに伝わってくる。「ダンボール肉まん」のようなインパクト抜群のシャウト・ナンバーから、「のこってしまった」のようなセンチメンタルな歌ものまで、デタラメすれすれのダイナミックな振り幅からも彼独自のファンク感が垣間見えてくる。なお今回のアルバムにはCDJournal.comで過去に行なわれた
チャットモンチー&ハマケン対談で原型が披露された「罪悪感」もバッチリ収録されているので、興味のあるかたはコチラもご一聴のほどを。
――浜野くんはもともとヴォーカリスト志望だったんですよね。
浜野謙太(以下同) 「そうなんですよ。SAKEROCKを結成する時に、
(星野)源くんから電話もらって、“トロンボーン吹かない?”って誘われたんですけど、その頃、トロンボーンを挫折してる時期だったんで、“俺は歌をうたいたいんだ”って一回、断っちゃったんです。その後、ヴォーカリストとしても普通に挫折しちゃったんですけど(笑)」
――じゃあ、在日ファンクで念願叶った感じですか。
「そうですね。でも、在日ファンクでは、ヴォーカリストというよりも、ビッグ・バンドの指揮者みたいな感じでやってるんですよ」
――歌というよりも、むしろ“存在感”担当みたいな。
「JB(ジェイムス・ブラウン)と
JB’sみたいな関係性というか。ああいう感じが格好いいなと思って。もともとJBが大好きなんです」
――最初にJBにハマったキッカケは?
「高校を卒業してプー太郎をやってた頃、高校時代に一緒にバンドをやってた友達にいろいろブラック・ミュージックを教えてもらって、そこでJBを知ったんですけど、最初はあんまりピンとこなかったんですよ。でも、その後、70年代のすごくアヴァンギャルドな時代のJBの音源を聴いて一気にハマっちゃったんです。それ以来、全盛期のJBみたいなアヴァンギャルドなものに惹かれるようになって」
――ちなみに浜野くんがいうところの“アヴァンギャルド”っていうのは、いわゆる“ファンキー”の同義語?
「ああ、近いかもしれないですね。なんて言ったらいいんだろう。たとえばJBの〈SEX MACHINE〉とか、ハッピーなのか暗い気持ちなのか、どっちかよく分からないじゃないですか。メジャーとマイナーのどちらでもないっていうか。……それがアヴァンギャルドなんです」
――う〜ん(笑)。
「よく分かんないですよね(笑)。じゃあ最近の話に飛ぶんですけど、
ZAZEN BOYSのライヴを観たときにも同じことを感じて。すごくオリジナリティのあるサウンドに乗せて、〈本能寺で待ってる〉とか、難解な歌詞を
向井(秀徳)さんがひたすら叫んでて。その時、JBに共通するものを感じたんですよ。真剣にやってるのか、はたまた壮大なギャグなのか、どこまでも割り切れない感じというか。それが僕にとってのアヴァンギャルドなんです」
――完全に突き抜けちゃってる感じというか。
「そうです! 在日ファンクでは、そこに行きたいなっていうのがあるんですよ」
――SAKEROCKで活動を始めてからも、ディープ・ファンクのバンドをやりたい気持ちはあった?
「そういう気持ちもあったんですけど、今の時代にファンクとか、ちょっと流行んないかなと思っていて。自分の中では、ファンク・バンドって、どこかおじさんがやるような印象があったんですよ。それは在日ファンクをはじめてからも、しばらく思ってたんですけど。でも、ある時、
スチャダラパーの
BOSEさんから“在日ファンクからはヒップホップの匂いがぷんぷんする”って言われたことがあって。それを聞いて自然とそういう感覚が身に付いてるんだなと思ったんです。だったら今の時代を生きてる自分たちなりの感性でファンクをやればいいのかなって。僕は優等生タイプなんで、ついついイメージに縛られて迷ってしまうところがあるんですよね」
――“本物のファンクとは!?”みたいな。
「そうそう。いつもそういうことを真面目に考えちゃうんです。でもBOSEさんやSAKEROCKの源くんは、なによりも“面白さ”優先なんですよね。ジャンルとかそういうことは関係なく、“自分たちが何をやりたいか”ということを追求していて。だから僕も今回のアルバムでは、これまでのファンクのイメージに捉われず、あえて『ロッキンオン・ジャパン』のイベントとか行くような女の子にも分かってもらえるようなものを作ろうと思ったんです。それで、あえてファンクっぽくない感じを目指したというか」
――70年代のJB’sの雰囲気を再現するとか、そういうことではなくて。
「サウンドやスタイルを真似るんじゃなくて、あの時代のJBが出していたアヴァンギャルド感を自分なりの解釈で表現したいなと思って。僕らには
オーサカ=モノレールみたいな本格的なファンクもできないし、
グループ魂みたいな面白いこともできないんだけど、その中間には何もないわけじゃなくて、むしろそういうところにワンダー・ゾーンが広がってるんじゃないかと思って」
――ワンダー・ゾーン(笑)。 「そこに未知の可能性みたいなものがあるのかなって(笑)。BOSEさんからも“自分ができることをやっていかなきゃダメだよ”ってアドヴァイスされているし。今までは“自分ができること”を甘く見てたところがあったんですよね。これからは迷わずに自分の中にあるものをどんどん出していこうと思うんです」
――それがアヴァンギャルドな表現に繋がっていくと。
「そうですね。ファンクっていうのは迷わずに自分を出し切ることだと思うんです。……違うな。“出してみないと分からないもの”。……それだとパンチに欠けますよね。えーと、なんだろう……。“できることしかできない”とか? こういう場合、見出しになるのってどういう言葉なんですか? 何かいいフレーズ考えてください」
――おもいっきり迷ってるじゃないですか(笑)。
取材・文/望月哲(2009年12月)
在日ファンク1stアルバム発売記念
〜在日ファンク VS サイプレス上野とロベルト吉野
●日時:2010年1月7日(木)
●会場:東京・渋谷O-nest
●時間:開場18:30 / 開演19:00
●料金:前売3,000円 / 当日3,500円(ともにドリンク代別)
●ライヴ:在日ファンク、サイプレス上野とロベルト吉野
●DJ&司会:サイトウ“JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)
●オープニングアクト:大名行列
※問い合わせ:Easel
http://www.easelmusic.jp