中島美嘉のニュー・シングル
「ALWAYS」は映画『サヨナライツカ』の主題歌。鍵盤とストリングスが奏でる繊細なイントロとともに、祈るような歌声で始まるこの曲は、まさに中島美嘉の真骨頂ともいうべき極上のラヴ・バラード。彼女がこの曲に出会った時からすんなりと世界に入り込めたというのにも納得だ。一方、カップリングにはエレクトロなサウンドに広がる歌声の美しさを堪能させてくれる「SPIRAL」と、今だからこそ書けたという想いを自身の歌詞でリアルに歌う「BABY BABY BABY」を収録。インタビューでは今回の制作に関してはもちろん、変わらない歌との向き合い方についてもじっくり語ってくれた。
――「ALWAYS」に関してはどんな制作でしたか?
中島美嘉(以下、同) 「私は切ない曲がすごく好きなので、この曲はもう第一印象で“歌いたい!”って思いました。それだけ思い入れも強いですし、大事に歌っています。曲自体は前のアルバム制作の時にはあったものなのですが、映画『サヨナライツカ』のために温めておいたという感じです」
――かなり曲の内容と映画がリンクしてますね。
「そうなんですよ! もともとデモに付いていた歌詞から少し変えた部分もあるんですけど、ほとんど変わってなくて。だから映画を観てびっくりしました。こういうことは正直、めったにないことだと思います」
――特にどのメロディや言葉に気持ちを乗せましたか?
「出だしの部分が一番好きなので、聴いてすぐ引き込まれるような声色を意識しました。それと最後の大サビは、上手く歌おうとか考えずに感情にまかせて歌っています」
――中島さんは特にバラードを歌われる時、誰かに歌いかけるというよりも、歌と一対一になって交信しているような感じがあって。そこに聴き手も引き込まれていくような感じがするんですよね。ご自身としてはどういう意識で、いつも歌と向き合ってるんですか。
「一番の理想は“無”なんです。何にも考えないことが私の一番の理想ですね。でもそれはすごく難しいです。だからディレクターさんには申し訳ないですけど、何も考えないで何もしないで歌に集中するために、レコーディング中はカーテンをして真っ暗にするんです。そこで私は返事もしなければ物音も立てないので、一体何が行なわれてるのか、話を聞いてるのかもわからないと思います。できるだけ歌以外のことは考えたくないんです」
――歌入れをする時に、何が一番邪魔ですか。
「人。まずはカーテンを閉めないと見えてしまうので、人が話をして笑っていたりすると自分の歌を笑われてる気になるんです。そうすると気が散るし、“笑ってる場合じゃないでしょ、歌ってるんだから”って思っちゃう。でも楽しくやってることはいいことだから、“じゃあ見なければいい”と思って、見ないようにしています」
――では、テレビに出演される時はどうしてるんですか?
「だからテレビの時はいっぱいカメラがあったりするので、まったく無になれないですね。でも一番いいのは目を閉じることですね、メイクさんには申し訳ないですけど(笑)。デビューから9年目で、これまでに、いろいろと学んで変えてきた部分もあるんですけど、ここは変わらないから性格的なところも大きいんでしょうね。真っ直ぐなのか、不器用なのか、もっと成長しなくてはいけないところかもしれません」
――今でも慣れない部分があると。
「そうですね。むしろ歌うということに対する緊張は増してます。スタッフがどれだけ大変な想いをして動いてるかとかも含めて、いろんなことがわかってきたから」
――なるほど。ちなみにカップリングの「BABY BABY BABY」はご自身の歌詞で、アーティストとしてのこれまでの苦悩もリアルに綴られているようにも感じました。
「これはもう、そのまんまの歌詞ですね(笑)。私、スターの定義って孤独に勝てるかだと思っているんです。自分がスターかどうかは別としても、ある程度影響力があってみんなが知ってくれてる人という意味では、孤独に勝てないとここまで来れなかったので」
――<本当の私知ってるのは誰?><疑いもしたけど / 信じようと決めた>と書かれていますが、その葛藤は長かったんですか。
「長かったと思います。デビュー当時は“何で知らない人に自分のことを話さないといけないんだろう? この人は嘘つきかもしれないし、みんなに同じこと言ってるかもしれない”って心を閉ざしてあまり喋らないようにしてました。でも周りの人が一生懸命やってくれたから徐々に信じられるようになっていったんです。だから<BABY BABY BABY>に関しては、ずっとこのテーマで書きたいなと思っていた曲です。ずっと満たされない気持ちがあって、やっと満たされたからこそ書けました」
――では、そんな今の中島さんが、2010年にやりたいことは何かありますか?
「筋トレやボイトレをみっちりやって、シンガーとしての自分に磨きをかけたいですね。精神的にも、もっと強くなりたいです」
――孤独に打ち勝つというところも含めて?
「そう、スターですから(笑)」
取材・文/上野三樹(2009年12月)