【THE ZOOT16 interview】“自分はどう生きたいのか? どう生きて死んでいくのか?”──“独り”であることと徹底的に向き合ったニュー・アルバム『ヒズミカル』が完成!

渡辺俊美   2010/01/21掲載
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  TOKYO No.1 SOUL SET渡辺俊美によるソロ・プロジェクト、THE ZOOT16がメジャー初となる4thアルバム『ヒズミカル』を発表。パンク、レゲエ、ロック、クンビアなど、さまざまなレベル・ミュージックが混ざり合い、さらに混血の度合いを高めた感のある独自のミクスチャー・サウンドに乗せて、渡辺俊美は自らのアイデンティティをどこまでも真っ直ぐなまなざしで情熱的に模索する。“自分はどう生きたいのか? どう生きて死んでいくのか?”という大きなテーマに向き合った今作について話を訊いた。



――『ヒズミカル』、聴かせていただきました。3年半ぶりのアルバムですけど、狂おしいまでに情熱的でロマンティックで、やっぱり俊美さんは変わらないなあと思いました。
渡辺俊美(以下、同)「変わらないですね(笑)。変わろうと、ちょっとは思うんですけどね。でも、今回は歌詞の内容が、ちょっとね、前よりは変わってるかな。前のアルバムまでは、気に食わないことに対して、自分が思っていることを直接的に言うような感じだったんですけど、今回は“俺って何なのかな?”みたいな感じで意識が自分の内側に向かっていて」
――全編通じて、そこはかとなく“孤独”を感じさせる歌詞だなと思いました。
 「うん。そういう感じはあるかもしれないですね。TOKYO No.1 SOUL SETも3人でやってるんですけど、でも、結局は独りなんですよね。あのバンドは個別で作業することが多いから。今回も独りでデモを作りながら、“最終的に死ぬ時は独りだな”とか、いろんなことを思ったんです。僕は会社を経営したりしていたから分かるんですけど、やっぱりね、最後は独りなんですよ。このアルバムを作っていた2009年はそれを実感した年でもありますね」
――最近のライヴでは自分でバスドラを踏みながら、アコギ1本で弾き語りをするっていう演奏スタイル(=THE ZOOT16 G・B Version)が多くなっていますが。それも、そういうマインドの変化に伴って?
 「そうですね。ここ最近は、独りで何ができるのかということをずっと考えていて。いわゆる個性の部分ですよね。単にギターを持って歌うことはできるんだけど、それ以上の表現が自分にできるのかって。それでバスドラ+ギター弾き語りというスタイルで演奏しはじめたんです。最初は自信がなかったけど、やっていくたびに、慣れということではなく、確実な自信に繋がってきました」
――俊美さんは出自がパンクだから、D.I.Y.精神が自然と身についているところもあるんじゃないですか?
 「いい意味ではD.I.Y.精神、悪い意味では“人の言うことを聞かないヤツ”みたいなね(笑)。でも、いろんなことに疑問を持って生きていくっていうのは、すごく大切なことだと思うんです。僕は右向け右になっちゃうよりも、何かに疑問を感じたら、絶対に“このままでいいのかな?”とか考えるべきだと思うんです」
――その“疑問を持つ”ということ自体、年齢を重ねるにつれ、おろそかになっていきがちですよね。
 「うん。でもね、僕はそれを自分で言わない限りダメなんじゃないかと思うんです。生きていく上での疑問は大人になろうが子供になろうが絶対に生じるものだと思うんですね。一方で、40歳を過ぎると、それまで疑問に思っていたことのなかで、“明らかに自分が間違っていたな”っていうのも分かるんですよ(笑)。選択した人とか場所とか。でも、それを人のせいにはしたくはないんです。全部、自分が選んだことなんで。それを踏まえた上で……」
――“でも言う!”みたいな。
 「そう! 自分の考えていることや感じていることを言葉にしないと僕は歌えないし、そもそも歌う意味がないと思うから。僕がなぜ歌を歌うのかといえば、決して歌が好きなわけではなく、歌いたいことが明確にあるからなんですよ」





――今、俊美さんが歌を通して明確に伝えたいのは、どういうことなんですか?
 「特に若いコに言いたいんですけど、“みんないつかは確実に死ぬ”ということです。それが分かっていれば、みんなすごく丁寧な生活を送るようになるんじゃないかと思うんですね。食べ物に関しても、明日死ぬかもしれないと思ったら、ファーストフードのハンバーガーばかり食べないだろうし、ちゃんとお母さんの手料理を食べたりするようになると思うんですね」


――そういう意識が高まってきたのはいつぐらいからなんですか?
 「前のアルバム(『完全逆様の世界』 / 2006年)ぐらいからです。大きなきっかけは池波正太郎の作品を本格的に読み始めたことかな。再発ラッシュがあった時期に、池波正太郎の作品を全部まとめて読んだんですけど、そのときに、“ああ、男の作法ってこういうことか”ってすごく気づかされたんです。毎日を丁寧に生きることの大切さとか。俺は今まで何で、そこに気づかなかったんだろうって。あとは日本人であることの誇りみたいなものも考えるようになりました。それはバルセロナ周辺のアーティストに興味を持ってから、徐々に強まってきましたね。たとえばフェルミン・ムグルサはバスクの文化や音楽を広めるために、あえてバスク語で歌ったりMCしていたり、ラ・トロバ・クンフーというバンドもカタルーニャ語で歌っていたりするし。みんな自分が生まれ育った土地の文化に誇りを持っているんです」
――たとえば今後、THE ZOOT16を続けていくにあたって、日本人としてのアイデンティティを音楽に直接的に反映させていくようなことは考えていますか?
 「もちろん考えてます。今回のアルバムでも、ビクターの人に“演歌を歌いたいんだ”って言ったら、“さすがに、ちょっと……”って却下されちゃったんですけど(笑)。でも、それは冗談じゃなくて本気なんです。やっぱり、演歌でも民謡でも、いい歌って日本語がパーンと心に入ってくるんですよね。今のJ-POPにはそういう歌がほとんどないと思うんです。だからサビを連呼するしかない。別にそれが悪いことではないんだけど、やっぱり僕は日本語のノリが美しい音楽をやりたいなと思うから。それが民謡になるのか演歌になるのか分からないですけど、ゆくゆくは自分の中に流れている血を色濃く感じさせるような音楽を作りたいですね」


取材・文/望月哲(2009年12月)



<THE ZOOT16 アルバム『ヒズミカル』リリース・パーティー>
●日時:1月28日(木)
●会場:東京・下北沢 CLUB QUE
●時間:開場 18:30 / 開演 19:00
料金:前売り 3,000円 / 当日 3,500円(共にドリンク代別)
【LIVE】
THE ZOOT16 G・B VERSION
THE ZOOT16 “ヒズミカル” SPECIAL DJ・SET
-Musicians-
Saxophone:Yoshitaka Toya
Trumpet:Yuji Matsumura
Percussion:Tadashi Tomimura(SLY MONGOOSE)
DJ:Kaz Sudo(Caribbean Dandy/ZOOT-SS)
【DJ】
SHOJI(LONDON NITE)
Ryoh a.k.a pachucabras
※問い合わせ:Hot Stuff Promotion [Tel]03-5720-9999
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