KOOP はスウェーデンをベースとする、とっても洒脱なジャジィ・ポップのユニット。ジャズの知識が活きた多彩なサンプル音をモザイクのように重ねたクールなサウンドに、しっとりしていたり儚気だったりするゲスト・シンガーを曲種にあわせて乗せる……。そんなふうに説明できそうな表現とともに95年にデビューして以降、
ジャイルス・ピーターソン らとも親交を持ちながら、インターナショナルな活動を展開してきている。その構成員は、DJのマグナス・ジングマークと楽理にも強いピアニストのオスカー・シモンソン。彼らは15年にもわたるキャリアを括ったベスト盤
『best of KOOP“Coup de grace 1997-2007”』 を組んだばかり。シモンソンにKOOP表現の秘密についていろいろと聞いてみた。
――マグナスとあなたは、どんなきっかけで知り合ったのでしょう?
オスカー・シモンソン(以下、同) 「僕はジャズにすごく興味を持っていたんだ。そして、18歳になると学生パブに行けるようになってね、毎週水曜日にすごくいい音楽をやっていたんだけど、そこのDJの一人がマグナスだったんだよ。当時、僕は16歳の時に結成したジャズ・バンドをやっていたんだけど、彼と知り合ってから間もなくして一緒に音楽を作ることにしたんだ」
――あなた方の音楽は、サンプリングを駆使しているにもかかわらず、いかにも生演奏に聴こえるところがすごいですよね。
「そこがポイントだったんだ。ほかのみんながサンプリングを使った、ループを基にした反復性を持つ音楽をやっていたのに対して、僕たちはサンプリングを1種類じゃなくて50種類も使って、いろんなブリッジやサビを入れて曲に仕上げた。サンプリングを使ってポップ・ソングを作ったんだよ」
――ベスト盤『best of KOOP“Coup de grace 1997-2007”』を出しましたが、この時期になぜ組もうと思ったのですか? どういう基準で選曲をしたのでしょう?
「僕たちの何たるかを一枚のアルバムで説明する必要があると思ったんだ。最近は、1曲単位でしか聴かない人もいれば、アルバムを丸々聴く人もいれば、4曲だけダウンロードする人もいるから、僕たちがどういったことをやっているかをちゃんと説明したかったんだよ。そのために、僕たちにとって最も重要な曲を選んだんだ」
――あなたたちは、いろんなシンガーに歌ってもらっていますが、シンガーを起用する際の着眼点はどんなものでしょう?
「まず曲を書いてから、それを歌うのに一番ふさわしい人を選ぶ。KOOPらしさというものがあって、それを歌にもあてはめるんだ。スウェーデンっぽい感じに歌ってほしいんだよね。基本的に声には4種類あってね、男性のダークな声、男性のブライトな声、女性のダークな声、そして女性のブライトな声。曲に必要なのは、この4種類なんだよ」
――テクノロジーの進歩とともに機材も変わってきていますが、それがあなた方の曲作りやレコーディングに影響を及ぼしていますか?
「もちろん。そしてそれは、僕たちのアルバムを聴けばよく分かる。1stアルバム
『サンズ・オブ・クープ』 には13年前のテクノロジーが詰まっていて、今のテクノロジーとは違うことが分かるはずさ。今なら、もっと複雑な曲を作ることができる。自由度が増したんで、もっとピュアな曲作りができるようになったんだ。僕たちの曲作りは、エレクトロニックではなく、どんどんオーガニックになってきているんだ」
――一方では、KOOPの核にあるものとして、まったく変わらないものもあると思います。それはどういうものでしょう?
「僕たちにはルールがいくつかあって、それは決して変わらない。まず、ギターはなし。これが一番のルールだね。あと、エレクトリック・ベースもなし。それから、ヴォーカルには不必要なこぶしを入れない。歌うからには、メロディをちゃんと歌わないといけないんだ」
「もちろん、彼らとは同じような音楽からインスピレーションを得ているんだろうけど、僕らの音楽は彼らの音楽とは違うと思う。今、君が挙げたアーティストはどれも、ハウス・ミュージックの人たちだ。KOOPはもっとポップ寄り。僕たちが作っているのは、3分間のポップ・ソングだもの」
――お二人は、KOOP以外にサイド・プロジェクトをしているんでしょうか?
「これまで一度もなかったし、これからも決してないだろうね。19歳からずっとKOOP一筋さ」
――KOOPのサウンドを、あなたはなんと表現しますか?
「Technologic pop music dressed in jazz!(ジャズの衣を着る、テクノロジーを経たポップ・ミュージック!)」
取材・文/佐藤英輔(2010年2月)
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