黒猫チェルシーがメジャー移籍第一弾作品
『猫 Pack』を発表! 偶発性を活かす形で新たなトライアルに挑戦したオリジナル3曲、彼らの持ち味であるヴォルテージの高い演奏を収めたライヴ音源2曲、そして彼らにとってのルーツともいうべき楽曲を取り上げたカヴァー曲からなる全6曲を収録した今作。バンドとして飛躍的な成長を遂げている黒猫チェルシーの4人を直撃!
――メジャー移籍第一弾アイテム『猫Pack』が完成しました。1曲目の「ベリーゲリーギャング」は、リズムがディスコっぽかったり、ライヴで初めて聴いたときもすごく印象に残りました。
澤竜次(g / 以下、澤) 「これまでは割とギターのリフで最後まで押していくとか、そういう曲が大半だったので、もっとリズムで乗らせる感じの曲をやりたいなと以前から思っていて。だから、あえてギターも控えめにして。この曲は岳ちゃん(宮田)が持ってきたリフをもとに作ったんです」
宮田岳(b / 以下、宮田) 「リフはダンス・ミュージックの無機質っぽいリズムをイメージして作りました。それがバンド・サウンドに転がったらどうなるかなと思ったんです」
岡本啓佑(d / 以下、岡本) 「ちょっとやりすぎたほうが面白いんじゃないかと思って。これまでに叩いたことのないようなリズムだったんで、すごく新鮮な気持ちで演奏できました」
澤 「最初にライヴでやったときも、みんな踊ってくれて。あれには自分たちでもびっくりしましたね。新曲ってどうしても、一歩引いて聴くようなところあるじゃないですか」
――あきらかにバンドとしての新機軸といえる曲ですよね。
澤 「“どれだけ、いかつい音で演奏できるか”とか、そういうのは、もうええんちゃうかなと思っていて。リズムを主体に考えたことで、曲への意識も変わりましたね」
――歌詞に関していえば、“広い砂漠 なにが待ち構えていようが”とか、ある種、メジャー・フィールドで活動するにあたっての決意表明みたいなものを歌っているのかなと思ったんですが。
渡辺大知(vo / 以下、渡辺) 「いえ、特に決意表明みたいなことを歌っているわけじゃないんです。僕らの前向きな気持ちとかじゃなくて、なんて言うんだろう……こう、ひたすら前進しているロックンロール・バンドみたいなイメージで書いた歌詞なんです。みんなの演奏にインスピレーションを受けて衝動的に言葉が出てきた感じです」
澤 「今回のレコーディングって、事前にこういう曲が作りたいとか、こんなアルバムにしようとか、コンセプトみたいなものがいっさいなくて、基本的に全部セッションから曲を作っていったんですね」
渡辺 「スタジオに入る前に
レッチリのPVを観て、“こういうノリいいんちゃう?”とかみんなで盛り上がってからセッションしたり」
――3曲目の「ファンキーガール」とか、まさに、そういう曲ですもんね。
澤 「そうですね(笑)。レッチリっぽい横ノリから始まって、突然、
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいな縦ノリになって」
岡本 「みんなのテンションが高くて、面白いアイディアもポンポン出てきたんですよ」
――2曲目の「オーガニック大陸」では曲間で語りが入っていたり。すごく淡々とした感じで、個人的には、ゆらゆら帝国の「3×3×3」とか「学校へ行ってきます」を連想しました。 渡辺 「あの曲では全体を通して、語りっぽい感じで歌を歌いたかったんです。メロディがあってないような。でも最初から最後まで、それだと単調かなと思ったんで、後半で語りになるのがいいかなと思って。突然、教科書を読まされてるような淡々とした語りが入ってくるっていう。ああいう展開になったらハッとすると思うんですよ。これも最初から狙って語りを入れたわけじゃなくて、偶然思いついたアイディアですね。聴いてくれる人に面白がってもらえればいいなと思って」
――4、5曲目には黒猫チェルシーの真骨頂ともいえるライヴ音源(「嘘とドイツ兵」「廃人のロックンロール」)が収録されています。
澤 「新曲だけで構成されてるよりも、普段、自分らがどういう感じでライヴをやってるのか伝わるような音源を入れたかったんです。そうすることで実際、ライヴを観にきてもらえればいいなと思って」
――そしてラストの6曲目には憂歌団の「嫌んなった」のカヴァーが収録されています。この曲をカヴァーしたのは? 渡辺 「中学生の頃、憂歌団を聴いて衝撃を受けたんです。それまでは、歌って綺麗な声で歌わなきゃいけないものだと思ってたんですけど、
木村(充揮)さんの歌声はしゃがれているんだけど、すごく色気があって。ああ、こういう歌い方があるんだって。今回は憂歌団のなかでも大好きなこの曲を選びました」
――では最後に。新曲、ライヴ音源、カヴァーと内容の濃い作品が仕上がりましたが、それぞれの、このアルバムに対する印象を教えてもらえますか?
澤 「今回は作品としてのこだわりとかそういうことじゃなくて、ただただ理屈抜きに楽しかった雰囲気をパッケージしたような作品になっていると思います」
渡辺 「フェス映えしそうな新曲もできたし、できればこの作品を聴いて、ライヴに足を運んでもらえたらいいですね」
岡本 「今までやったことないタイプの曲に挑戦したり、個人的にも得るものがたくさんあったレコーディングでした。今後に向けた自信にも繋がったかなと思います」
宮田 「『猫 Pack』というタイトルどおり、僕らが今やりたいことがギュッと詰まった作品になってるんで、よりたくさんの人に楽しんでもらえたらいいなと思います」
取材・文/望月哲(2010年4月)