コンセプトは“地獄”! LOUDNESS『KING OF PAIN 因果応報』を高崎晃が語る

LOUDNESS   2010/05/21掲載
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 稀代の名ドラマーである樋口宗孝の後任として正式に鈴木政行(元NEGAROBO〜SABER TIGER)を迎えたLOUDNESSが、新ラインナップでの第一弾作品となるアルバム『KING OF PAIN 因果応報』をリリースした。キーワードは、“地獄”“レギュラー・チューニング”“ギター・リフ”。独自の進化を遂げてきた彼らのヘヴィ・メタルは、今回も唯一無二の多彩な響きに結実した。世界が待ち望んだ新たな音である。バンドを率いる高崎晃に話を聞いた。



――メンバー自身も意識していたとは思いますが、まず何が注目かと言えば、新体制での第一弾と言えるアルバムということですね。
高崎晃(以下、同) 「そうだね。そんなこともあって、新しいメンバー(鈴木政行)を紹介するためにも、今回はドラムをできるだけフィーチュアしたかったというのはあるんだよね。樋口さんと彼の違いは、やっぱりキックの数なんで、それを活かした曲をどんどん持っていきたいなとは思ってて。特にオープニングには絶対にツーバスの名曲になるようなものを入れたいなと思って、<THE KING OF PAIN>を書いたんですけど。このアルバムのコンセプトは“地獄”なんですよ。ヘヴィ・メタルの世界ではありふれてるかもしれないけど、LOUDNESSも29年やってくる中で、地獄をテーマにして作ったことはなかったからね」
――なぜ地獄にテーマ設定したんですか?
 「やっぱり……樋口さんが地獄に行ったと言ってるんじゃないよ(笑)。そこは間違わないでほしいんですけど、樋口さんが亡くなって、死後の世界であったり、いろんなものを真剣に考えるようになったのは大きいね。最近はアルバムを作るときに、まずコンセプトを立てるようにしてるんですよ。そうでないと、みんなキャリアもあるし、器用で引き出しも多いから、いろんなものが作れてしまうんで悩むんですよ。そのうえでサウンド的に言ったら、さっきのドラムの話とチューニング。今回はレギュラー・チューニングの曲がアルバムの4分の3ぐらいを占めててね。これはかなり久しぶりなんですよ」
――90年代以降のLOUDNESSはダウン・チューニングが基本になっていましたもんね。
 「そう。たとえば『TERROR』(2004年)も、チューニングで言ったら2音ぐらい下げてるしね。だから、ホント久しぶりにレギュラーのテンション感とアタック感のあるギターの音で1枚作ったなぁみたいな感じなんですよ。去年は“CLASSIC LOUDNESS”のツアー(5作目までの楽曲のみで基本セット・リストを構成。さる4月14日にはライヴDVD『CLASSIC LOUDNESS LIVE 2009 JAPAN TOUR/THE BIRTHDAY EVE – THUNDER IN THE EAST』も発売済み)をやってて、レギュラー・チューニングで弾く機会が多かったんですけど、前にハジける音とか、そのときにあらためていろいろ感じた、いい部分が反映されてると思う」






――チューニングをレギュラーに戻せば、浮かんでくるアイディアも変わってくると思いますが、テーマが地獄だとすれば、むしろ逆により低い音にシフトさせたとしても不思議はないですよね?(笑)
 「普通だったら、そう感じるかもしれないね(笑)。でも、チューニングを下げれば下げるほど、低音がもっと豊かに出てくるかというと、そうでもないんだよ。まぁ、今はレギュラーでもすごく低音が生まれるようなテクニックや弾き方も身に付いてきてるから、そう言えるんだと思うんだけど(笑)。実際に俺らがレギュラーで弾いていたとしても、絶対音感がない人に聴かせると、“これはダウン・チューニングしてるよね?”って言ったりするんですよ」
――確かにそう感じさせるヘヴィさは出ていますしね。それに関連する話をするなら、今回はリフにもこだわりが見えてきます。
 「うん。今回の売りのひとつに、ギター・ソロを取っ払ったというのがあって。リフに命かけましたからね(笑)。まぁ、その辺も“CLASSIC LOUDNESS”ツアーの反動はあるのかもしれないね(笑)。LOUDNESSの曲の95%ぐらいにはソロがあって。しかも、間奏だけじゃなくてエンディングにも入ってたりして、どのバンドよりも圧倒的にギターの占める割合が多いからね。ドラムを際立たせたい考えもあったけど、1枚ぐらいはギター・ソロが全然ないアルバムがあってもいいんじゃないかなって」
――ギター・ソロがないのは衝撃的な要素ではありますが、実はアルバムを聴き終わるまで、それに気付かないぐらいの濃密さで、多彩なリフが詰まっているんですよね。
 「それを言ってくれた人がこの間も一人だけいて(笑)。作り手としては嬉しい言葉だね。(聴きどころは)ギター・ソロだけじゃないんだぞというのも、わかってほしいし(笑)。ソロがいっぱい入り過ぎてると、どうしてもそっちに耳がいきがちになるじゃない? でも、もうちょっとリズム隊のいい部分も聴いてほしいなと。ファンがどういうふうに受け取るかは気になるところだけど、ロック・バンドとして、前に向いて動き出したことは確か。懐かしがっててもしょうがないしね。ただ、LOUDNESSという看板を出している以上、やっぱりそこからは外れないようにしてるんだけどね」
――いろんな観点から新たなLOUDNESS像を感じ取れる作品でしょうね。
 「どこを切ってもLOUDNESSでしょう? 約1時間ぐらいの作品だけど、聴いているうちに、あっという間に時間が経ってしまう感じがしますね。すごくライヴ向きなグルーヴの曲が多いと思うし、今回のアルバムはできるだけラウドに聴いてほしいと思いますよ」
――さて、6月末からはヨーロッパ公演を挟みつつの国内ツアーも決定していますが、今夏以降の活動予定に関しては?
 「最近は年に1枚ペースでアルバムを作ってるから、そう考えると、結成30周年記念特別アルバムの制作に入ってるかな。だから来年はアメリカも含めて、どんどんまた世界に向けて、いろんな活動ができればなと思います。11月25日(LOUDNESSが1981年にデビュー・アルバム『THE BIRTHDAY EVE〜誕生前夜〜』をリリースした日)にはどこかで大きなライヴをやりたい気持ちもあるしね。個人的には50周年に入るので、その記念ソロ・アルバムは絶対に作りたい。ここのところはずっとすべてのパートを自分でやってきたから、ちょっと豪華にゲストを迎えるのもいいかなぁと思ってますよ」
取材・文/土屋京輔(2010年5月)
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