R&B、ヒップホップ、ロック、スパニッシュ、バラードといった幅広いジャンルを取り入れた楽曲を、“声”だけで表現する。6人組の“ビート&ヴォイス・パフォーマンス”グループ、
SOLZICKには“ア・カペラ”のイメージを気持ちよく覆す、個性的にして豊かな音楽性が備わっている。1stミニ・アルバム
『Solzick』からも伝わってくるこのグループの特性について、Jo(vo/リーダー)、Yoshihiro(vo)、Takashi(ヴォイス・パーカッション)の3人に聞いた。
――まず、これまでのア・カペラのイメージを大きく超える音楽性の広さに驚きました。
Jo「ありがとうございます。ヒップホップ・テイストの曲もあるし、スパニッシュっぽい曲もあるし、ロックもあるし……」
Yoshihiro「もうちょっと統一したほうが良かったかな?(笑)」
Jo「(笑)。好きな音楽もみんなバラバラですからね。僕はもともとJ-POPが好きで、そのあと洋楽を聴き始めて。R&Bにハマッたのは二十歳過ぎてからなんですよ」
Takashi「僕は学生時代、ブラス・バンド部に入ってたんです。ア・カペラ・グループが流行ったころ、見よう見まねでヴォイス・パーカッションをやるようになって」
Yoshihiro「僕は音楽大学の先生についていたことがあるんです。その先生はバロック、ルセッサンス時代が専門だったから、そのあたりの音楽も勉強して。ふだん聴いてたのはR&Bやヒップホップなんですけどね」
――なるほど。最初からオリジナル曲を歌っていたグループなんですか?
Jo「いや、最初はカヴァーが中心でした。オリジナルをやるようになったきっかけは、友達の結婚式のために曲を書いたことなんですよね。そのときはひとりで歌ったんですけど、“これをSOLZICKで歌ったら、どうかな”って思って」
Takashi「その曲は<Everyday,Everynight,いつでも>っていうんですけど、今回のアルバムにも収録されてます(笑)」
Jo「バラードはその1曲だけなんですけどね。ア・カペラっていうと“しっとり聴かせる”っていうイメージがあると思うんですけど、他のグループとは違うことをやっていきたいので。ライヴでもバラードは少ないんですよ」
――「Underdog」みたいな強いグルーヴを打ち出した曲もあって。
Jo「ハモリのパートがほとんどなくて、ラップが中心になってますからね(笑)。これはもう、ホントに自分たちしかやらないんじゃないかなって」
Yoshihiro「お、自分で言った(笑)」
――(笑)。トラックを使わず、声だけで構成するっていうスタイルもこのグループの大きな特徴ですよね。
Yoshihiro「そうですね。ア・カペラでどこまで行けるか、っていうところを追求していきたいんですよ。トラックを使わず、自分たちの声だけで出来ることを突き詰めたい――そういうベクトルなんですよね」
Jo「“トラックを使ってみたら?”っていう声をいただくこともあるんですけど、まあ、それはいつでも出来ますから」
Takashi「“きれいにハモる”っていうア・カペラのイメージをいい意味で裏切りたいっていう気持ちもあるし」
――バラードだけに頼らないってことになると、ヴォイス・パーカッションの役割も重要ですよね。
Takashi「そうですね(笑)。現場(ライヴ)でちょっとノリが悪いときなんかに、Joさんがいきなり“ヴォイス・パーカッション、ソロ!”って言い出したり」
Jo「頼ってます(笑)」
Takashi「Joさんがデモを作ることが多いんですけど、最初から16ビートが入ってたりするんですよね。“息継ぎできないけど、この人、殺す気か?”って思いましたけど(笑)、無理にやってるうちに出来るようになってきて。人間、やればできるんだなって」
Jo「トラックを作ってたら、自然と16も32も入ってくるじゃないですか。それをそのまま聴かせてるだけなんですけど。何て言うか、ア・カペラにこだわってるわけじゃないんですよ。それよりもいろんな曲をやりたいっていう気持ちの方が強いので」
――なるほど。では、声で表現することのおもしろさって、どんなところにあると思いますか?
Yoshihiro「ライヴをやってるとよくわかるんですけど、“ぜんぶ声”って、やっぱりインパクトがあるんですよ。自分たちのライヴなんて肉弾戦みたいな感じですけど(笑)、体ひとつで表現したことに対して、お客さんがダイレクトに反応してくれるのって、すごい快感なんですよ。そこじゃないですか、声だけでやることの面白さって」
取材・文/森 朋之(2010年5月)