お笑い芸人のみならず、DJとしても精力的に活動している
エレキコミックの
やついいちろうが“DJやついいちろう”として、邦楽ロックを中心に選曲したミックスCD第2弾
『ATARASHII YATSU!』をリリース! ライヴ会場で頻繁に目撃されるなど、へヴィなロック愛好家として知られている彼に、DJをスタートするまでの経緯と、「あくまでもファン目線で選曲した」という今回のミックスCDについて話を訊いた。
――やついさんは、そもそもへヴィな洋楽リスナーだったんですよね。
――今回のミックスCDに入ってるような日本のロックを聴きはじめたのは?
「
サニーデイ・サービスの
『若者たち』を聴いたのがきっかけですね。それと同じ頃に、
かせきさいだあ≡の<じゃっ夏なんで>という曲を聴いて“日本の音楽も面白いんだな”と思って、
はっぴいえんどとか
五つの赤い風船までさかのぼって日本のロックを聴くようになったんです。あと、大学で上京して、ライヴを頻繁に観られるようになったのも大きいですね。洋楽アーティストに比べて邦楽アーティストのライヴって安く観れるじゃないですか。そういう理由もあって日本のロックにも興味を持つようになったんです。それ以来、しょっちゅうライヴを観にいくようになって」
――やついさんはミュージシャンとの交友関係も広いですよね。 「いちばん大きかったのは
曽我部恵一さんと知り合えたことです。曽我部さんを通じて、徐々に交友関係が広がっていった感じで」
――曽我部さんと出会ったきっかけは?
「渋谷のエッグマンでやった
ホフディランのデビュー・ライヴを観に行ったとき、帰り道の坂を降りてたら曽我部さんがいて、ファンなんです”ってフツーに話しかけたんですよ。そうしたら、すごく優しく対応してくれて。その後、渋谷のHMVで偶然お会いしたときに、“実はお笑いやってるんです”って話したら、ちょっと興味をもってくれたみたいで。それで家の電話番号を教えてくれたんですよ。その後、僕ら<うんこちんこライヴ>っていう最低な名前のライヴをやることになったんですけど、その題字を曽我部さんに書いてもらおうと思って、教えてもらった番号にFAXを送ったんです」
――<うんこちんこライヴ>の題字依頼を(笑)。
「ええ(笑)。そうしたら全然返事がないんですよ。で、完全に終わったなと(笑)。でも、ファンなんで、その後もライヴは行ってたんですね。そうこうしてる間に、『ザッピィ』という雑誌で対談企画をやれることになって、曽我部さんとの対談をセッティングしてもらったんです。そのとき<うんこちんこライヴ>のことを話したら、曽我部さんが覚えていてくれたんですよ(笑)。どうやら海外に旅行に行ってたみたいで、FAXを見たタイミングが遅かったらしく。それで“今、この場で書くよ”って書いてくれたんですけど、曽我部さんが間違って<ち●こま●こライヴ>って書いちゃって(笑)。そんなこともありつつ、それから仲良くしてもらうようになって」
――DJも曽我部さんに勧められて始めたんですよね。
「はい。『splash!』という雑誌のイベントに出ることになって、編集長さんから“DJやってくださいよ”って言われたんですけど、そんなのやったことないし最初は断ってたんですね。そのことを曽我部さんに話したら“難しいことを考えずに好きな音楽をかければいいんだよ”って言ってくれて。それが最初のDJでした」
――DJのときに、いつも心掛けているのは?
「やっぱり、みんなに楽しんでもらうことです。僕はプロのDJやミュージシャンじゃないので、変な話、“こういうことをしちゃいけない”っていうルールに縛られないぶん自由にできると思うんです。僕みたいなのが変にDJうまくなったりしたら最悪だと思うんですよ。テクニックとかに走って、楽しむ気持ちを忘れないためにも、音楽を好きな気持ちのまま、あえて下手クソのままでいたいなと思っていて。純粋にいいなと思う曲をかけて、お客さんと一緒に盛り上がりたいんです」
――今回のミックスCDの選曲に関しても……。
「自分が好きな曲しか入ってません(笑)。もちろん全体の流れというか、ストーリーのようなものは考えましたけど。たとえば
スカパラの次に
郷ひろみの曲が入ってるのは、単純にスカパラのステージに郷ひろみが出てきたら違和感なく盛り上がるんじゃないかとか思ったからだし、そういう音楽ファンの妄想みたいなものも曲順に反映されています(笑)」
「この流れ、僕も気に入ってるんですよ。すごく泣けますよね」
――そしてラストには、やついさんが作詞・作曲した「きみはキョンシー」のRAM RIDERによるリミックスも収録されています。 「
ラーメンズの片桐くんと一緒に“エレ片”というユニットで僕らコント・ライヴをやっていて。そのなかで、シトラスラベンダーっていうブスな女子高生バンドが大宮の駅前でライヴをやるっていう設定のコントがあって、この曲はそこで歌うために作ったものなんですけど、いざコントで歌ったら、観にきてくれたミュージシャンの人たちから、めちゃめちゃ絶賛されたんですよ。それで“いいんだ、この曲!”とか思って(笑)、どうせ入れるんだったら、ダンスっぽいのがいいなと思って、RAM RIDERさんにリミックスをお願いしたんです。そしたら、ものすごく格好いい曲に生まれ変わって」
――できあがったミックスCDを自分で聴いてみてどうですか?
「いわゆるメガヒットのノンストップ・ミックスみたいな作品って、いっぱいあると思うんですけど、この手の邦楽ロックを集めたノンストップ・ミックスCDって、ありそうでなかったりすると思うので、けっこう面白いんじゃないかと思います。“今、流行ってる曲”ではなく、あくまでもロック・ファンの視点でいいなと思う曲を集めたつもりなので、いろんな人に楽しんでもらえたらいいなと思っています」
取材・文/望月哲(2010年6月)